見出し画像

テレワーク中の会社でキャリア面談をおこなうと…?【その2 マネジャー編】

こんにちは。キャリアコンサルタントの東公成です。

さて前回から、都内にある仮想の組織=メザメ・エンジニアリング株式会社を舞台に、テレワーク実施で起こりがちな状況と、メンバー1人ひとりにキャリア面談が実施された顛末についてお伝えしています。

今回はその2回目。
キャリアコンサルタントの多聞さんが開発第一課のメンバーにオンライン個別面談を実施したところ、ほぼ全員から

「テレワークが始まってからチームの雰囲気がギスギスし、仕事からくるストレスを強く感じている」

という話が聞こえてきました。

メンバーがとくに苦痛を感じているのが、毎朝オンラインで行われる、全員参加が必須の課長主催の進捗確認会議。これから多聞さんは、その落合課長とのオンラインで面談に臨みます……。

キャリコン面談? もしかして、クビ切られるの!?

「落合課長、初めまして。キャリアコンサルタントの多聞と申します。 今テレワークでお仕事をしている皆様にお気持ちを伺っております。どんなことでも結構ですのでお話しなさいませんか?」

「………………」

電話の向こうの落合課長は無言です。
キャリアコンサルタントの多聞さんは待ちます。

長い、長い沈黙。

画像4

「私をリストラするための情報を集めているんですよね? 私のマネージメント能力を否定してクビにしたいのなら、社外の人を使って情報収集するなんて卑怯ですよ。直接言えばいいじゃないですか!」

多聞さんは少し間をとって、

「落合課長、まずはこの面談の意図を説明させていただきますね」

と応じました。

社内では話しにくいことも気兼ねなく口にして

「この面談の目的は、リストラを行うための情報収集ではありません。少なくとも私は御社からそのようなオーダーを受けておりません。緊急事態宣言下でのご自宅でのテレワークという、これまで誰も経験したことがない環境におかれた社員のみなさまが、どのようなお気持ちで仕事をされているかヒアリングすること、それが今回の個別面談の目的です。

面談終了後、私は御社に報告書を提出しますが、『誰が何を言ったか?』など、個人を特定する情報を発言したご本人の許可なく会社に伝えることはありません

画像3

ここまで静かな口調で伝えると、多聞さんは少し砕けた雰囲気になって、次のような言葉も付け加えました。

「まぁ、これが今回の主な意図なんですけど、やはりお立場上、社内の人にはなかなか話しづらいことってあるじゃないですか。ですから落合課長、どんなことでも結構なので、お気持ちをお話してみませんか? 私には守秘義務がありますから秘密は守ります、約束いたします」

……再び長い沈黙。そして、落合課長はぽつりぽつりと話を始めました。

《キャリアコンサルタントがうかがった落合課長の話》

製品開発プロジェクトも、テレワークが始まってから遅れが目立ち始めた。はじめの頃はテレワークという新しい環境に慣れないせいかと思ったけれど、なかなか挽回してこない。

毎朝の進捗会議で遅れの原因を追求するが、照森係長をはじめ、部下の報告がどうも要領を得ない。進捗会議ではみな「挽回します!」というが全体を見ると挽回している状況とはとても言えない。課長として喝を入れようと、少し厳し目のメールを送ったけれども反応も薄い。

オンライン会議では、部長からも「開発第一課担当のプロジェクト進捗が他の課の進捗に比べて目に見えて悪い。2週間前の部会でもこの指摘をしたが改善が見えない。報告書を出すように」と名指しで叱責され胃が痛い。

画像1

テレワークが始まってから、部下が本当に仕事をしているのかとても疑わしい。毎日の作業報告の提出率も下がってきた。

テレワークが始まる前は士気も高く、助け合う雰囲気があったのに今はそれも感じられない。
オンライン飲み会を部下に提案したのに、誰からも返事がなかった。

新卒で入社し、社歴は今年で15年。課長になったのは同期でいちばん早かった。宇都宮から新幹線通勤をしているため、これまでは毎朝6時に家を出て、帰宅するのは毎晩23時という生活。
そのせいもあってなのか、妻や中学生の娘さんとはここ数年会話がないことが気になっている。テレワーク生活が始まっても、家での食事は家族とは別に、自室でとっている。

画像3

これまで、課としてチームとして本当にうまくやってきたのに、テレワーク程度のストレスで生産性が落ちる部下のことを考えると本当に情けない。家族も犠牲にして頑張ってきたのにそんな情けない部下たちのせいで、部長への昇進が遅れるかもしれない思うと腹立たしい……。

45分の予定を20分オーバーして終了した面談でしたが、最後に落合課長は

「今まで誰にもこんな話ができませんでした。ありがとうございました」

と、少しほっとした声でお礼を言ってくれました。

開発第一課のメンバー、マネジャー全員のキャリア面談を終えたキャリアコンサルタント多聞さん。これからメザメ・エンジニアリングに提出する報告書のまとめに入ります。

果たして、キャリアコンサルタントから企業へはどのような形で報告が成されるのでしょう?それを元にした会社サイドの対応とは?

次回に続きます!

文/東 公成(あずま・きみなり)
国家資格キャリアコンサルタント、アンガーマネジメントトレーナー、プレゼンテーショントレーナー


さんぎょうい株式会社が提供する、はたらく女性の健康とキャリアプログラム「mezame(めざめ)」では、組織で働く従業員のみなさんが長くイキイキとキャリアを重ねるためのサポートをしています。
女性従業員のモチベーションアップ、定着、ライフイベントと仕事の両立支援等に課題を感じている企業さまからのご相談をお待ちしています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?