三十路男一人旅、仕事をサボりイタリアをぶらつく。⑤
水の都、ヴェネチア
地図で確認したことはないけど、きっと、長靴ブーツのローマより北のどこかに、運河が流れている土地があって、そこに街がある。みたいな感じだろう。
ぐらいに思いながら、Trenitaliaの一番ランクの低いスタンダードの座席で気持ちよく眠っていた。
目を覚まして、ふと窓の外の景色を眺めると、目の前に広がっていたのは海だった。
「あぁ…船に乗ったんだったっけ…」
いや、船には乗っていない。ずっと国鉄のTrenitaliaに乗りっぱなしだったはずだ。
「海の上を走ってる…」
顔は平然を装っていたが、気持ちが高揚していた。
いつも同じようなことの繰り返し、どこに行っても、何をしていても、真新しいことはなく、平凡な景色。行ったことのない場所に行ってみても、感じる既視感。
ここ、あそこと似てるな。日本でもこんな感じの建物あるな。なんて思ったりして、勝手にがっかりしている。普段の自分はあれだけ冷めていたのに、車窓からの景色だけでこんなにいいとは…。
恐るべし、ヴェネチア。
電車が止まり、ホームに降り立って線路を覗き込む。
ここは陸地なのか…。
と、子供みたいなことをしている自分が可笑しかった。
駅から一歩外に出ると、太陽の光が水面に反射して眩しかった。
とりあえず、ホテルにチェックインしようと、歩き出す。
今回のホテルは、3つ星のホテルなのに1万円以下で予約することができた。平日だというだけで、1万円弱安く泊まることができるとは思わなかった。
早速チェックインして、ホテルマンが荷物を部屋まで運んでくれた。
「ごゆっくり」
そう言われるがままに部屋に入った瞬間、驚いた。
本当に1万円未満なのか?と思わせる室内だ。おいおいNYCのthe pearlを思わせる内装…
昼食は駅の構内にあるパン屋で簡単に済ませたので、少し散策してみることにした。
ヴェネチアは、街中に水路があり、ゴンドラがそこかしこにぷかぷか浮いている。
ビニールシートがかかっているゴンドラは、きっと個人宅のものだろう。
ゴンドラや水上バスでしか移動できないのかと思っていたが、案外そんなことはなく、水路に掛かった小さい橋があったりするため、向こう岸に渡れずに困ることはなかった。
それにしても、道が迷路のように入り組んでいて、地図を見ていても迷いそうになる。
細い道がいくつもあったり、枝分かれしていたり。
だが、その路地裏の細い道が、怪しくも魅力的だった。
知らぬ間に日が落ちてきて、小腹も空いてきた。
夕食はどこで食べようか。
いつも、僕が飲食店を探すときに気にしていることは、「地元民の常連がいるような美味しい店」だ。
でも、そんなのは口コミを見ただけではわからないことが多い。
実際に、店に入ってみなければ分からないのだ。
とりあえず、Googleマップで現在地情報を元に、美味しそうな店をピックアップしてみる。僕のやり方は、トリップアドバイザーで地元民の口コミ。
最悪、と言うか一番手っ取り早いのは、ホテルの受付、もしくはドアマンに「いつもどこ行ってる?」と聞く。これはハズレはない。
現在地から徒歩10分県内で1件、ホテルから徒歩10〜15分圏内で1件、めぼしい
店が見つかった。
まず、現在地から近い方へ。
”Osteria antico Dolo”
店内をのぞいてみると、中は満席だった。
「8時ぐらいまで待ってくれれば空くと思うよ」と、店員に言われたが、席が空く保証もない。
諦めて、次の候補に行ってみることにした。
Googleマップで経路を調べてみると、ここから店までは約15分かかるらしい。
なんとかしてようやく辿り着いた頃には、辺りは真っ暗になっていた。
”Osteria al Vecio Pozzo”
ホッとするような灯りだ。
中に入ると、ほぼ満席だった。またかよ。
すぐに店員が来て、人数を聞きに来た。
一人だと答えて、「Vuolio mangiare Fuori」(外で食べたい)と言うと。
意表を突かれたような顔をしていた。
イタリア人は、みんな外の開放的な席に座りたがるものなのだが、ヴェネチアは違うのだろうか。単純に遅い時間だからかもしれない。
ヴェネチアといえばシーフードだが、何故かシーフードを食べる気にはなれなかった。
結局、なんの変哲もないフンギのピッツァと、スープパスタを頼んでしまった。
まぁ、でもなかなか美味しかった。
ピッツァは、ローマ風でもナポリ風でもなく、中間ぐらいのものだった。
ローマピッツァは、全体的に薄くて耳がパリパリな生地で、ナポリは分厚くてモチモチの
ピッツァなのだが、ヴェネチアはそのどちらでもない。この店だけかもしれないが…
このスープパスタは、不思議な味がした気がするが、料理が来た頃には既に酔っ払っていたので、あまり記憶にない。
ワインを飲み過ぎたか…
イタリアのワインは安いし美味すぎてつい飲みすぎてしまう。
気を付けなければ…
会計を済ませて、ホテルまで歩いた。
部屋に戻って一息吐いてからシャワーを浴びて、その日は死んだように寝た。
翌朝、溜まった洗濯物をコインランドリーで洗濯・乾燥してからホテルを出ようと思い、6時にホテルを出て、コインランドリーに向かった。
コインランドリーまでは、歩いて約25分ぐらいだった。
昨日無駄に歩き回ったおかげで、迷わずにコインランドリーまで行くことが出来た。
コインランドリーは8kgまでが6ユーロ、12kgまでが7ユーロ。
乾燥は、30分では乾ききらず、1時間乾燥させた。
ホテルに帰って、洗濯物を片付けてから、フロントに荷物を預けてチェックアウトした。
そういえば、まだ水上バスに乗ってないな。
せっかくだし、一度は乗ってみたい。
近くに水上バスの乗車券を売っている窓口があったので、そこで1回券を買った。
ちなみに、値段は
・1回券 7.5ユーロ
・24時間券 20ユーロ
・48時間券 30ユーロ
・72時間券 40ユーロ
・1週間券 60ユーロ
となっている。
中はこんな感じ。
何も予定がなくてのんびり出来る時だったら、1周してもいいかもなと思う。
日産の車の由縁のムラーノ島にも行ってみたかったけど、そこまで時間の余裕がなかった。
次に来るときは、もっとゆったりしたいな…
ただ、ヴェネチア基本、イタリアのくせに何もかもが高えよ。
と思いながらサンタ・ルチア駅に戻ってきた。
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