たまには本業として、メガネの記事でも書くか。2022年、眼鏡・サングラスの素材と現状、僕からの主観とおすすめで。(長文につき暇な時に読むの推奨)
ども。
最近スタッフの毎日のブログが、なんと数千ビューに増え、嬉しい限りの僕ですが、そういや俺が書いてねえわ、と思いました。
そんな折、スタッフ岡田くん(OKDくん)から色々と聞かれてるうちに、この記事をまとめてしまおうと思ったわけです。
(岡田くんやスタッフのブログはこちら)
メガネの枠の素材って気になりますよね。まあ肌につけるものですし。
この記事は、久々に僕の主観しかない観点から、書いていきますので暇な方は読んでください。
(うまくOKDがまとめたものは後日、METRONOME-TOKYOのブログで読んでください)
ではいきましょうか。結構長いんでマジで暇な時で結構です。
大きく、昔はプラフレームと言われれば主にこれ。
材料原価2022年現在、原油価格、また噂レベルではレバノンでの爆発に際し、かなり高騰しています。
可燃性の高さにより、削りには水をかけながらとか、結構気を使う商品で、METRONOMEや当社の企画では海外に出荷(韓国、台湾などはまだ大丈夫ですが、EU圏、アメリカではダメ)に規制がかかるため、海外出荷がメインのブランドとなると、ほぼ99.9%使用していない、というか使用できない素材。
テンプルに芯材が不要で(これがデザイン的に1番のメリットでしょうか)、一時期日本限定で作成するフレームにと僕も考えたが、クリアーの生地にゴミが多数入っていたりと、日本にあった素材が安定していないためボツに。
(このゴミってのが結構ひどかったのだ)
生地さえいいものが入れば少数限定生産でやりたいのだが・・・
セルロイドといえば、光沢感と透明感である。その透明感がゴミで台無しなセルロイドに用はない。
むしろ、そこ(綺麗な生地目)を安定的に受給してる工場は、少なからずともまだ先はあるのかな、とは思います。
いいものではあります、なので僕も本当は作成したいのですが、如何せん主戦場が海外となると難しいのです。
管理、品質保持が難しいセルロイドの欠点を改めた、植物繊維由来の合成樹脂がアセテート。
僕の得意な素材でもあります。
一番扱い、加工しやすく、糸鋸とやすりさえあれば、器用な人ならある程度はできるのもこの素材。
うちの会社での「プラ枠」と言うものは全てこれです。(「うちの会社で」の下りは後述します)
色々で豊富な生地目が特徴、原材料価格もピンキリ。
有名なメーカーだと「マツケリ」、「ダイセル」等があり、中国メーカーの生地ブランドも多々あり。
で、僕は大体「ダイセル」or「金余(ジンユー)」で、青みの(寒色目、青とか緑)生地目だけ「マツケリ」という謎のルールを持っています。
値段で言うと
マツケリ>ダイセル>ジンユー
と言う感じですが、どうやら日本で頼むとどのメーカーもほぼ中国で生産したものが回ってくるので(マツケリだけ、難しい生地目デザインや、寒色で生地から企画すると、たま〜にイタリア本社からくる)、あまりここにこだわることはしなくても良いと思っている。(ただどのメーカーも、寒色に関してはマツケリほどの表現がない、と主観で思います)
少し重いと言われますが、圧縮アセテートとかもあり、一概に言えない。
マツケリ押しをするメーカーもあり、それはそれでもちろんいいですが、基本マツケリって乾燥してないんすよ。
まじで。
ぐにゃぐにゃで来たりすんのよね。なのに高い。「反ってる生地は大体マツケリ」とプラ枠屋さんならうなづいてくれるはずでしょう。
なので僕は一概に「マツケリサイコー!」とはならないのです。だってそれが製品化されてるっておかしいでしょう。恐怖以外何者でもないわ。
で、こう言うのの原因は、まず板状の際に、水分がまだ含まれていて、それが原因で反る、と言うのがおおおまかな原因で。
対処法としては
が大半かもしれませんが、さすがに僕はできないので、
と言う感じで、上記二つ。
蔵に寝てるいい生地が出てくると嬉しいものです。
もしくはここ少しポイントですが、上述した寝かせたクリアー系の生地(別にクリアーじゃなくても用は寝かせた硬い生地)と、生地目の沿ってる方向とは逆に圧着で重ねてしまう、と言う手もあります。
いわゆるギターのネックと同じ論理で、木を何枚も重ねて「3ピース」「7ピース」などと呼ばれるように、基本重ねれば重ねるほどこのアセテートも強度が増す理論は通用します。そこに反り防止、反った際の手法として「芯(芯貼り(方法の一つ)、シューティングとか)」、ギターだと「トラスロッド」を埋め込む、という論理は全く一緒なのです。
少しそれたが、大体はこんな感じでアセテートはいいぞ!と言うものです。
で、あと一つ。
最近マット加工を別注でやり始めましたが、なぜ内側だけしないかわかりますか?
アセテートもセルも、基本なぜか使用してるとだんだんマット加工したみたいに部分的に白っぽくなってくるんすよ。
で、磨けば(バフですね)治るんですが、磨くと艶が出るんすよね。
で、そうなると再度マット加工しなきゃで、その度に印字が消えるので入れ直す、と言うわけです。
なので内側までマット加工してあるフレームは大事にしてください。
(裏を返すと、非常に修理に手間と費用がかかるのです、あと印字はマジでブランドとかなくなったらアウトですからね)
1stコレクションの際に竹を部分的に使用したモデルがいくつかありましたが、ちょっと僕的には全部木材系でやる勇気はないかな〜。
原因は
「調子が取りずらい、眼鏡屋さんがフィッティングしにくい」
と言う、もはやこれにつきるものです。
しかしながら僕は実は好きで、中国やイタリアのメーカーと展示会のたんびにコレクション見せていただいたりしてます。
コルクのやつとかいいよね。
ただまま、あくまで僕的にこれもなんとなくのフェイクウッドみたいなもんがアセテートでできちゃうんすよね。。。
(生地目が水流し的な生地を選定し、融点寸前まで温めて、筆やブラシで加工する”ブラッシング”と言う技法を使用するとかなり近い木目”調”が出ます。1stコレクションのメタライズとかそうです。)
となると、「まあアセテートでよくない?」となります。
ただまあ、家の素材で最近流行りの「玄関本木レッドシダー貼り!」か、「窯業系サイディングの木目調!」くらいの雰囲気の差が出ます。
どちらも一長一短です。そんなもんです。
びにょーんと伸びてビュン、て戻る、形状記憶のプラスチックフレーム見たことありますかね。
主にあれっすね。あんなじゃないウルテムもありますが。
あれです。
基本、作成にはインジェクション、と言われる作り方でできるものです。
(インジェクションはWikiってください)
で、メイン生産国は韓国および台湾、一部中国。
日本では知らないだけかもですが、製造してないんじゃないかな。
で、これ、ドメスメーカーやブランドで見ないのはなぜか?なぜ大手チェーンが販売してるばかりなのか?
答えは簡単、「ミニマムロット(最小発注数)」がでかいから。
型数多く作りたいブランドだと、1型のミニマムロットが大きいと作るのも捌くのも至難の業です。
あとはミニマムロットがないありものに、名前を入れただけの「ODM」が多いのもこれ。
しかしながらこれ一概に悪いともいえないんすよね・・・・
いや、だって形戻るんすよ?形状記憶ってよく壊す人には最高だと思いませんかね。
デメリットはフィッティングしにくいんじゃないかな・・・
(そもそもその概念上で作られてない気はするが)
ちなみに3Dプリンターブランドの原料はこれか、最近は積層チタン。
僕は好きですけどね、やったことないんですけど。
(仕入れて売ったことはあります。企画したことはない)
スターウォーズに出てきそうな名前ですなあ、プラスチックの一種です。
わざと「アセテート」と書かずに、「プラスチック」と書いてるやつはこれが多いんじゃないかな。(アセテートならアセテートって書くんすよね、なぜか眼鏡屋って)
うちの会社では前述した「プラ」と言うと「アセテート」になりますが、大手だと今これを「プラ」と呼ぶとこも多いのではないでしょうか。
主に「インジェクション」という作成方法で使用される素材です。
ドメスメーカーやブランドで見ないのはなぜか?これも同じく答えは簡単、「ミニマムロット」がでかいから。
さて、うちはというか僕が、「インジェクションで成形モノ」を企画しないんですよね。
見た感じに「安い」んすよ・・・
いわゆる、店頭にくるくる回るやつで置いてるサングラスコーナーとかのやつはほぼこれですね。
わかりやすく言うと「手にとったらわかる、異常なまでに軽いプラフレーム」です。
たまーに、仕入れたODMものでとにかく安い物を希望するアパレルさんにしか、提案する程度でしか触りません、
あと、たまに「アセテート」&「TR-90」という表記がありますが、これは大体
「フロントはアセテートで、テンプルはTR-90」
と言うものです。
この組み合わせの原理は、
という、「フロントの合口とテンプルの合口をしっかり合わせたデザインさえしてしまえば、テンプルの5型分の型台が浮くぜ!」
相当なコストカットだぜ!
ってやつです。
いや、物としてや作成方法は至って合理的な考えなので、嫌いではないですが、僕は企画することはないかな・・・
今更感もありますが、案外いいのはこれ。特にクリアー生地目。
圧倒的な透明感。YOSHIKIのピアノみりゃわかりますかね。
そして強度。
セルロイドと同じく芯要らず。
デメリットは、弾性がないため加工がめっちゃしずらい、やたら重い。
とにかく重い。
逆にこれらデメリットをクリアしていけば、かなり将来明るい素材かとも思うんすよね・・・
なんでやらないんだろう?
単純に、「アセテートでよくない?」で終わっちゃうんすよね・・・
ベトナムの露店で売ってるツノでできたやつとかです。
独特の風合いがあります。
アセテートと同じ要領ででできますが、デメリットはくそ硬い&作成時の臭いが半端ない。
アセテートでよくない?という人もちらほら・・・
でも木と同じで、やはり本物の風合いには敵わないのです。
(すいません。知識ないんすここあんまり)
たけえ。とにかく高い。
あと、骨とかツノと一緒で元は生き物のものなので、僕は抵抗あるんすよね・・・
いわゆる「DEMI=デミ」と言うのはこれの柄です。
黄鼈甲、白鼈甲的なものが価値あり。(聞いた話は黄色ければ黄色いほど価値あるとのこと)
保護条約でもう取れないんで、そこらへんに価値を求める人が購入するべきかと。
あとまあ、実物は確かに綺麗。
さてさてメタル素材です。
とにかく安い!早い!加工が楽!と、牛丼のような素材です。
全然悪くないっすよ。と言うか、値段はピンキリなのでこれも一概にいえません。
ただ、アレルギーが出る人は多い(僕は出ます)。
後述しますが、メタルは「表面処理と磨きが全てなんじゃねえ?」と思うので。
ほぼ世界のメガネのメタル素材の主流です。
最近ではサスティナ系の、アレルギーフリーのステンレスまで。
土に埋めたら土に還るものまであるとかないとか・・・
とにかくまず、誤解がないように言うと世界のメガネの主流はステンレスです。チタンじゃないです。
強度があり、0.8mm程の(というか以上の厚さの)板を”抜き”で(レーザーとか切削機械で、業界用語で”板抜き”)、ミニマムフリーで作成できるという、製造側やブランドの立場的に、文句なしの最強素材です。
ドイツのあのブランドは板抜きで有名、海外の展示会でいつも挨拶するあの日本の有名ドメスブランドの製造方法もこれ。(あそこはチタンか)
後述しますが、日本は上に書いてある通り作りません(というか作れません、できるんでしょうが頑なにしません)。
昔は日本が一位でした。
今はもう製造してるのは、3社くらいでしょうか・・・?
おじさんがこの金無垢を唯一いじれる会社でしたので、金庫には常に金の延べ棒が何本もありました。
中国では人気あり。
あと、困った時眼鏡屋でもなく、なんか街中にある「金、買取ります!」的なとこにグラムで売れるので、投機目的でも多少は買う人がいる。
メッキの必要なし。だって金だから。
「懐かしーなオイ!いいねえ!買わないけど!」
て眼鏡屋さんに言われて、企画したのに誰も買ってくれなかったことがあります。
ただなんか独特の色味があります。あと重さもまあまあ程よく好きですね。
マニアが好きな感じですね。
僕もそう言うのが好きですが、ここは企画したけどあまりにも見向きもされずに(懐かしむ人は大勢いたが)、販売は会社が許しませんでしたね。
くっそー。
いわゆる「形状記憶合金」です。業界用語で「NT」
会社によって混合比率が異なるため、調べてください。
昔は日本が1位でしたが、中韓に抜かれました・・・
「NTの2ポイントといえば日本だ!」と言うイメージでしたがね・・・
METRONOMEだと「Siesta」「Strobolight」とかがそうですね。
基本分類的に、主素材のチタンに属します。
海外展示会でチタンだと言うと、「日本か?中国か?韓国か?」と聞かれるくらい。この3カ国でくらいしか作成してません(台湾あるかも)
ていうかむしろ、日本で工場さんに「メタルフレーム」と言うと、それすなわち「βチタン」と思われます。
むしろ、「ステンレスでしてほしい」と言っても、「めんどくせえからチタンでよくね?」と言われ一蹴されます。
それくらい、日本では海外から見ると異常なくらいの「チタン信仰」がすごいです。
さて。
このようにまとめてみましたがどうでしょうか。
ステンレスの話、すこしはよかったでしょうか。
例えば「メタルフレームで、中国製でも別によくない?て言うか気に入ってればなんでもよくない?」と言うことを言いたいだけです。
正直、日本製には出来は敵いません。それはそうです。本当です。
それは高いだけのことはあるんです。
ただ、会社的にや、商流の都合上、EU、US相手に僕らがチタンで作成すると、上述の通りになかなか世界で売れなかったりするんです。逆にアジアで売ろうとするなら圧倒的にチタンが売れます。
(特に中国は圧倒的に Made in Japan のチタンフレームが売れます)
去年から今年の後ろまでの流行は、透明系で寒色のプラフレームなので、来年以降からコレクションでメタル系をどう仕込んでいこうかが眼鏡屋の課題かとも思っていますが、そこは本文の仕事ですからね。
ひろゆき氏が言っていましたが、ものづくりで正直
「社会保障すらない国が数の力で作る物に、日本が品質と価格で敵うわけないでしょ」
って言う通り、同じものをミニマムロットが日本が例えば300作るのに対し、中国や台湾は1000~3000なのですよ、それだとこなす手数が圧倒的に違うわけで、そりゃ技術だって嫌でも上がりますよね。
僕は思うのですが、いかに得意な素材や、他の手をつけていない素材で今後どのように伸ばしていくかを考えたほうがいい気がするんですよね。
まあ、言うのは簡単なんすけど・・・
上述した通り、なぜ僕がこの素材を使用し、この素材を使用しないか、なぜMETRONOMEやTradはチタンで、Resonanceはステンレスなのか、お分かりいただけたら幸いです。
また、素材の差別をしてるわけではないです、あくまで僕の主観で、ラーメン屋で食うか、その店のカップラーメンかくらいの感覚で咀嚼してくださると幸いです。
ではでは、オンラインの方も、代理店様も引き続きご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。
Bisei
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