日ようびのこと。
いつもより遅めに目を覚まし、寝惚け眼をこすりつつ布団から抜け出す。電気ケトルでお湯を沸かし、起きぬけの一杯をゆっくりと楽しむ。
朝一の一杯はブラックに限る。重厚感のある苦みが喉元を撫でていくのと同時に、コーヒーの香りが鼻腔を通り抜ける。
今日は特にこれといった予定はない。買ったのはいいものの、まったく手をつけられてない小説を読むことにした。テーブルの上には、数十冊ほどの小説が山積している。
小説は基本的にジャケ買いだ。表紙のイラスト・タイトル・あらすじをざっと見て、面白そうだったら購入する。だから、著者にそれほどこだわりはない。
山積みになった小説のなかから、本多孝好さんが執筆した「Good old boys」を手に取る。未だかつて点数をとったことがない、市内屈指の弱さを誇る小学校のサッカーチームが市大会に挑む物語だ。
中学時代にサッカー部だった僕としては、共感する部分が多く、ダレることなく最後まで読み進められた。
午後からは、愛犬の散歩に出かける。大型犬なもんだから、相当な運動量を必要とする。1日に約2時間ほど歩かなければならない。三十路過ぎのおじさんの体には結構こたえるんだな、これが。
今日もここの限界集落には異常なし。熊の痕跡はひとつとして見つからず。せめて少しくらいは熊の存在を感じてみたいものだ。
日が沈む午後4時過ぎに散歩を終え、再びゆっくりと過ごす。夕暮れ時にぴったりなチルいBGMを流しながら、小説を再び手にとる。
物語は佳境にさしかかったところだった。1点もあげられなかった弱小チームが、最後の最後で点数をもぎとった。お世辞にも格好いいとはいいがたい、不器用な点の取り方だったけれど、1点は1点だ。
不覚にもそのシーンで思わず泣いてしまった。
ゆっくりと本を閉じ、そっと本棚にしまう。小説で偉大だ。実際に体験していないことを共有し、喜怒哀楽を感じられるんだからさ。
溜まりに溜まったうちの一冊をやっと消化できた、そんな日ようびのこと。