なんて名前をつけたんだろうか。
高校時代に付き合っていた彼女と、子供につける名前について話したことがある。
お互いの高校のちょうど中間地点にある、市役所に隣接している大きな公園で落ち合う。近くのベンチに並んで腰かけ、学校で起きた面白い出来事やテストの話など、なんてことはない話に興じた。
「自分の子供にどんな名前をつけたい?」
彼女から唐突に質問された。
「うーん、難しいなあ。空とか海とかって名前にしたいかな。遥佳は?」
「私は今のところ、特にこだわりはないかなあ。空とか海っていう名前も、自然を感じられていいね。子供ものびのびと育ちそう」
そう言って、彼女は僕に向かって優しく微笑む。恥ずかしくなった僕は、彼女の視線から思わず目を逸らす。狐目で切れ長の、彼女の透き通った黒い瞳に、僕の心は吸い込まれそうになった。
「う、うん。いいよね」
恥ずかしさを胸に押し込めて顔を上げ、やや上目遣いで彼女の表情をうかがう。
彼女はまだ、優しい面差しで微笑んでいた。
あれから16年がたち、彼女は僕の知らない人と結婚し、子宝に恵まれたようだ。
彼女は結局、子供たちになんて名前をつけたんだろうか。
今となっては、それを知る由もない。
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