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ストーリーテーリングを豊かにするレンズ表現の基礎を知ろう!

さて残るはレンズ使いです。

これは正直に言うと、詳しくやり始めるとドツボにはまります。
というのは、何度も言うように、これはカメラマンの領域。
詳しくやり出したらそれはもう映画監督では無くカメラマンです。
彼らは様々なレンズを使用して映像を作り上げていきます。
映像を撮影するのは言ってみれば物理学。どんなに撮りたい映像があっても物理的に無理な映像は撮影する方法が無いのです。私たちが何気なく映画で見ている映像の多くは特殊なレンズを使った映像が少なくありません。そして基本レンズは高価です。また、物理を基礎とした詳しい技術的理論は私もお手上げです。到底、全てを理解する事は出来ませんし、する必要もありません。

しかし、最低限知っておいた方が良い基礎もあります。
ですから、ある程度の事を理解する為にも撮影編【初級】道具で述べたように、あれば一眼レフを使用する事をお勧めしました。一眼レフのカメラを使用していると、物理的に『どうすれば、どういう画像が撮れるか』感覚的に理解できるようになってきます。

まあ、それは置いておいて、コンテを練るのに必要な最低限の基礎をここで述べていきます。

レンズを使った表現は主に以下の2つに分類されます。

①ズーム表現
②フォーカス表現

①【ズーム/zoom】

こちらはカメラムーブメントの回にも触れましたが、撮影中にズームレンズを動かす事によって、カメラ自体は静止した状態で被写体の大きさ(フレーミング)を変化させる事を言います。

被写体をだんだん大きく見せていく事を
【ズーム・アップ/Zoom up/Z-up】
被写体をだんだん小さく見せていくのを
【ズーム・アウト/Zoom put/Z-out】

と言いましたね。

ズームを使った表現は70年代に頻繁に使われてきましたが現在では撮影中に頻繁にレンズを交換できないドキュメンタリーで使う以外はかなり廃れてきています。というのも、同じように被写体に近づいたり離れたりするならば【トラッキング・ショット】を使った方が画面に動きが出る分、変化が大きく、観客を飽きさせる事が無いからです。


画面の動きと単純に言われても分かり辛いかもしれませんが、ズームは写真の引き延ばしと同じだと考えて下さい。被写体を大きく写すだけで、それ以外の変化はありません。
しかし、トラッキング・ショットの場合はカメラが動くので常に背景が変化するのです。

大抵はこの様に、登場人物のPOVの効果として使われています。
もちろん、上手に使えば素晴らしい効果を与える事が出来ます。

大事なのはズームとトラッキング・ショットの違いを知った上でどのように活用していくかです。

②フォーカス

【フォーカス】は別名ピントとも言いますね。

みなさん、お手持ちのカメラで試してみて下さい。
被写体を一つ選んで、少し離れた状態で立って下さい。
カメラの位置を動かさずにそれをレンズが1番ズーム・アウトした状態で1枚。
そして、1番ズーム・アップした状態で1枚撮影して下さい。

すると、前者の背景はくっきり写り、後者の背景はボケて写っているはずです。

前者の映像全体がはっきり写っている事を【ディープ・フォーカス/deep focus】深い
後者の被写体以外がぼやけて写る事を【シャロー・フォーカス/Shallow focus】浅い
と言います。

深い 

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浅い

画像2

上記の画像は分かりやすいように加工した画像ですが、この様に背景をはっきり写すか写さないかは映画の表現上、とても大事になります。

もし、フォーカスをどんどん浅くしていくと…こうなります。

画像3

この様に極端に被写体以外をボヤカす手法を【ボケ/Bokeh】と言います。
そうです、日本語がグローバル・スタンダードとして使用されているのです。

覚えておいて欲しいのは、フォーカスが浅くなればなるほど、撮影が難しくなります。
というのも、少し動くだけでピントが合わなくなるからです。
日本ではピント合わせはアシスタントの仕事…という、イメージですが海外ではピントを合わすだけの専門スタッフ=プロがいるくらいです。

ちなみに、ボケ状態で被写体から別の被写体にピントを合わせ変える事を
【プル・フォーカス/pull focus】と言います。

この表現は3脚を使った表現と共に、もっとも簡単で効果的な表現です。

こちらは様々なプルフォーカスの例です。

さて、大きく分けて2つのレンズ表現について学んできましたが、次はレンズ自体の違いの効果について学んでいきましょう。

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