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俳優演出【入門】:【キャラクターがどのように世界を見ているか】の提示

【キャラクターがどのように世界を見ているか】

3つ目の情報となるのがこれです。
役者が役の基本行動を設定するための最も重要な情報と言えます。

【キャラクターがどのように世界を見ているか?】

それはどういう意味なのでしょう?

では例を観ていきましょう。

【Fact/事実】から登場人物を分析して、彼女の世界観を想像してみましょう。

登場人物Aは専業主婦です。
ビジネスマンとして成功している旦那と、エリート校に通う息子がいます。
A本人も積極的にボランティアや地域の行事に参加し盛り立て役として地域の人との交流も多いです。Aは周囲の人から幸福な人間だと思われています。しかし、実は旦那には結婚前からつき合っている浮気相手がおり、息子は母親を嫌っています。

さて、こんなAはどのように世界を見ているのでしょうか?

悪い例: 

Aは自分を不幸せな人間だと思っている

何故悪例か?

それはこの表現では登場人物の行動に直結しないからです。

役者に与える情報は必ず行動に移すために必要な物であって、どう行動して良いのか分からない情報等、要らないどころか邪魔なだけです。しかも、Aが不幸せな事くらいシナリオを読めば分かるはずです。(もし役者がそれを理解しなかった場合はシナリオか役者に問題があります)
また、脚本を書く際の決まりと同様『(形容詞)+だと思っている』という登場人物の考えは、画面には出てきません。必ず行動として表現しなければなりません。

良い例: 

Aは家事の合間など、ふとした瞬間に、ついつい“自殺したい衝動に駆られる”。それが嫌で、常に“何かする事”を探している。

こちらの例の場合、ただ単に”不幸な人間“と形容するよりも、彼女の行動の理由が明確にわかります。
彼女がボランティアや地域活動に打ち込むのも、その衝動から逃れる為。そうなると『彼女は他人と居る時と1人になった時では全然、表情も行動も違う人間になるのではないだろうか?』『大変な2面性があるのではないか?』などと想像が膨らみます。

そう、具体的な行動が想像できる事が【キャラクターがどのように世界を見ているか?】という情報の大切な事なのです。また、忘れていけないのは、それはいつ、なん時であっても適応されるということ

例えば…

『誕生日に婚約者から高価なプレゼントをもらう』それに対して①〜③のキャラクターはそれぞれ以下の様に感じます。

①嬉しさのあまり、相手の誕生日のお返しを考え始める
②「こんなに高価なもの…自分にはもったいない」と、恐縮する
③「こんな無駄遣いして、何で将来の為に貯蓄しないんだ」と怒る

ただ単にプレゼントをもらうだけでも、人それぞれ考え方が違います。

この思考回路は常に一定でなければなりません。

『平日にわざわざ婚約者が晩ご飯を作りに来てくれた』

①嬉しくて、相手にも喜んでもらえる事を考え始める(マッサージや次のデートのプランを考える)
②相手も疲れているのに、申し訳ないと思ってしまう(ついつい手伝ってしまう)
③平日の疲れてる時になんて考え無しなんだ、と思う(早く帰ってもらえるように行動する)

これらの①〜③のキャラクターは

①ポジティブで思いやりのある人
②いつも自信が無く、相手の様子をみてしまう人
③冷静で合理的な人

などと、形容するより、ずっと具体的にキャラクターを想像する事が出来ます。

人生や物事をどのように感じ、行動しているのか?
それこそが【キャラクターがどのように世界を見ているか?】なのです。

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