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何をやってもダメだった私が、教わったこと。気づいたこと。実行したこと。

東京に住み始めて1年が経ちました。
こんなに時間が経った先々週の日曜日、初めて近くの図書館に行ってみた。
小規模だったけど、係の人のサービスが丁寧で気に入りました。
カードを作ったので、たまに通ってみようと思います。

この記事タイトル、私が実体験を語るのかな?と思った人もいるかもしれないけど、実は本のタイトルです。
渋井真帆さんという企業家の方が書いた本。
図書館で見つけました。

2009年の本で、今まであまり見かけたことがない。
なんとなく借りてきたけれど、思ってた以上に内容が良かったので、紹介したいと思います。

起業を考えている人にはおすすめです。



概要

ビジネススクールの開業を夢見ている渋井さん。
勢いで個人事業主になっては見たものの、自分の会社というものが明確に誕生したわけでもなく、部下がいるわけでもなく。

アルバイトに近いような講師の仕事をしながら、細々と営業活動に勤しむ毎日。
どうしたら、起業家として、胸を張れるくらい事業を成功させられるだろうか。
と悩んでいました。
うまくいかない!とうじうじうじうじ。

そんな中、今まで起業活動を進める彼女をただただ黙って見守ってきた旦那さんが、初めて口を開きます。

考え方が甘い!

旦那さんは銀行員。それも長いことビジネスの経験を積んできた人です。
いろんな人が起業の融資をしてもらうために銀行にやって来るのを、長年見てきました。

みんなが夢や想いを語る。
でも、会社というのは、そういう理想や情熱だけで成り立っているのではないんだ!君みたいな人のことを夢想起業家というんだ。

ずっと味方だと思っていた身内からの強い言葉にうちのめされ、反発する渋井さん。だけど、これまで口出されるのを拒んできたのは自分自身でした。


サラリーマンのあなたなんかに起業なんてできないでしょ、という態度だったのです。
反省。

問題を解決したい。
どうやったら前進できるのか。
旦那さんからのレクチャーと、2人だけの勉強会。
ビジネスについて学ぶ生活が始まりました。



学んだこと

印象に残ったところを自分の考えも踏まえつつ、いくつかまとめてみます。

この本の文章自体は結構、挑戦的というか、交戦的というか。
渋井さんも、旦那さんも常に芝居がかったようなトゲトゲした語調です。
一応、フィクションの物語形式をとっています。(若干、作家の近藤史恵さんの文体に似てる…)



あんまり自然なやりとりではないので、私自身はそんなに好きではないんだけど、書いてあることは為になるなと思うことがたくさんありました。
言ってしまえば当たり前のことのようにも見えるけど、綺麗にわかりやすく言葉になっているのに爽快感を感じます。


起業を夢見ているわけではないけど、このご時世なので、フリーランスとか、自分で食べていくことに興味がないわけではなく。
いろいろ知りたいなぁと思って、手にとってみたわけですが、世の中の起業家さん。
雇用を創出して人の生活を保障していくのってすごいことだなと改めて思います。

ブラック企業は別として。



◇理想論より、ずっとお金を払ってもらえる仕組みの構築

起業をする人はみんな夢を語る。自分の想い、理想、考え。
でも、そういうのって他人からすると本当にどうでもいい。

銀行に融資をお願いしにくる人は、自分の事業の理想ばかりを語るそうです。
だけど、一番の問題なのは夢物語ではなく、融資を返済してくれるポテンシャルをその会社が持っているかどうかです。
継続してお客さんからお金を払い続けてもらえそうなのか、ずっと払おうと思えるサービス価値を持っているのか、持続可能性があるのか。


今風にいうとサスティナビリティですね。
それを説明して納得してもらうことが1番の課題なんですよ、という内容でした。



前の会社の社長さんもここ、超重要視してたことを思い出す。。。
社員に繰り返し語られる理念の中でも、サステイナビリティは最優先事項でした。
それに反したり、脅かすような経営方針は徹底的に排除していました。
ここが肝なんですね。



◇人手と人材の違い
この違い。わかりますか?

・・・

人手とは、言われたことを言われた通りに行う働き方をする人。
人材とは、ビジネスにおける正解のない課題に対して考え、発想し、それらをビジネスや現実の制約の中で形にしていく働き方をする人。

ごく簡単にいうと、自分の頭でものを考えて仕事をしているか、ということでしょうか。
社長ともなると、ゼロのところからシステム作りをしなければなりません。自分で考えて、正解を掴んでいく力は必要不可欠。

ここをしっかり区別したことはなかったので、言葉に表されていることにとてもスッキリしました。

これは安易にアルバイトと会社員と区切れるものでもないような気がします。

アルバイトでも、言われたことだけじゃなくて、自分なりにどうやったら早く作業を進められるかな?と考えたりしますよね。
そういうことの積み重ねで、少しずつ培うスキルなんじゃないかと思います。


 読んでいて、東京に引っ越してくるときの光景が思い出されました。
引っ越し業者さんの会話です。

慣れている先輩さんと、新人の後輩くんのペアが荷物を運んでくれました。
「作業で迷惑をかけるかもしれないから、他の部屋の方にこちらからご挨拶しときますね!」と言ってくれたんですね。
言ったのは先輩さんなんですけど、実際言いにいくのは後輩くんらしい。

え、なんて言えばいいんすか。

と影でゴニョゴニョ言ってるのが聞こえてきました。
戸惑う後輩くんに、

なんて言ったらいいと思う?

と厳しめに問う先輩さん。


わー、新人がんばれ〜!と懐かしくみていました。

懐かしい?

なぜなら、これ。
私も昔会社で何度となく先輩と繰り返した会話だったからです。
先輩の教育は冷たいようで正しいです。
優しく答えを教えるだけが全てではありません。

どんなに小さな局面でも、自分自身で思考して行動すること。
これが社会では求められています。

会社には会社の規定や決まりがあるから、マニュアルに沿って動かなければ!と真面目な人ほど思うものだと思うし、私もそうだったんだけれど。
ただ答えをみて動くだけでは、不十分です。
どうしたらいいんすか?と単純に聞くのではなくて、私は〜だと考えているのですが、どうするべきでしょうか?と自分の意見・考えを添えて、アドバイスを求めるのが賢明だと思います。

ほんの小さな意思決定や、思考判断を重ねていくことで、人は人手から人材になっていくのかもしれません。



◇印象マネジメント

相手に与える印象を重要視すること。
その仕事にあった洗練された物腰でいること。
話し方、立ち方、服装などにも、期待される役割のイメージを反映させること。

ホテル時代もよく「ブランドを背負ってんだよ!360度どこからみられても、洗練されたスタッフでいないと!」と言われることはあったけれど。
やめてからちっとも気にしなくなってしまったような気がします。

というか、サービス業だけが求められていることだと思っていたような。
今一度、話し方とか振る舞いの本を読んでみようかな、と思いました。
そもそも、どうみられたいか、から考えてみても良いかもしれない。

よくミュージシャンが変な服とか着てるけど。
あれはほとんど、人々の印象に残るための戦略なんですよね。
印象操作術を自分自身にしていくのも大切なことかも。
やってみたい。



◇プロフェッショナルとは何か


プロフェッショナルとは、自分の役割に対する意義と責任と覚悟を持つこと。

自分だけが儲けていればいい、という考えではいけない。
起業して社長になるということは、事業に携わってくれる人々の生活にも、責任を持つということ。
会社は軌道に乗れば、一生安定なんてありえない。
世界は常に動いて、変化している。
ビジネスの仕方も変わる。
その中で、倒産したり、業績が赤字になったりする。

そんな不運に見舞われたとしても、トップに立っている人は、被害者ヅラなど決してしてはいけない。
柔軟に発想して対応策を考え、なんとかして生き残る術を見つけていくことが、上に立つもののつとめ。
そうして、誰かの生活を支えていること、社会にお返しをしているという実感が、誇りに繋がっていく。


ここだけ読んでいると、世の中の社長さん達すごいなぁと思います。
みんながみんなこんな立派な認識を持っているとは限らないけど。
私はそんなプレッシャー耐えられないかも。
やるとしても、1人ぶんの食いぶちを守るだけで、精一杯な気がする。



最後に

ざっとまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
このほかにも事業を立ち上げていくときのフレームワークとか、供給者の視点で物事を見ることとか、情報の蓄積とか、いろいろ書いてありました。
起業する、しないに関わらず、社会人としても発見の多い本なのではないかと思います。

実用的なこともわかりやすくまとまっていて良いのですが、最後の方の章に書いてあった渋井さんのおばあさんの話も印象に残りました。

戦争を体験したおばあさんの苦労のお話。
もう読んでいても可哀想になるくらい大変な出来事がたくさんの人生を送られていたようです。
その数々は、当時の女性にとってはそんなに珍しいことではなかった。
だから、苦労したことに対してはなんとも思わない。

だけど、もし同じ苦労をするならば、自分で選んだ道で苦労したかった。
どんな時も自分に選択権はなかった。それだけが悔やまれると。


今の時代は昔より格段に選択の自由がありますね。
ありすぎて困っちゃうくらいなのよね。
何したらいいのかわからないとか、どうやってやりたいことを見つけたらいいのかわからないとか、そういう悩みはいろんなところから聞こえてくる。


でも、それって本当に贅沢なことなのかもしれません。

20代もあと数年で終わっちゃうけど。
たくさん真剣に考えて過ごしたいな、と思いました。
とにかくなんでもいいから手を動かそう。

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