マガジンのカバー画像

僕は君に、君は僕に

2
会話が少ない君と僕との短編物語。 会話は少なくても、心は繋がっている。
運営しているクリエイター

記事一覧

秋の風に誘われて

秋の風に誘われて

 秋の風は不思議だ。

 時に、夏を思い出させるフワッと包み込むような風。
 時に、冬を感じさせるツンッと突き刺すような風。

 今は、後者の方が多くなってきた。

 

 そんな風に吹かれながら、僕たちは近所のイチョウ並木を散歩している。

 床には、紅色や山吹色、橙色、鮮やかに色付いたイチョウと紅葉の絨毯が敷いてある。

 僕たちは所謂、紅葉狩りをしながらゆっくりと歩く。

 紅葉の絨毯は歩く

もっとみる
静かな夏

静かな夏

 空を見上げると大きな入道雲がひとつ。
 そこにいつにも増してギラギラと輝く太陽が見え隠れをしている。

ーーザァーン、ザザァーン…

 目の前に広がる大海原の地平線には太陽の光が反射し、キラキラとし、手前では白い波が砂浜を湿らしている。

 僕らは自動販売機と、白いベンチしか無い小さな無人駅で列車を待ってた。

 決して気持ちの良いとは言えない、生温かい風が2人の頬を撫でる。

 君は、微妙に残

もっとみる