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幻想の音楽通信 Vol 17

V/A - Colliding Wind

ベルリンを拠点とするレーベルConcentric Recordsから不思議なコンピレーション・アルバムがリリースされました。詳細を覗くとこの作品は「コライディング・ウィンド・バイナリー」(衝突風連星)から着想を得て、現在の混沌を捉えたテーマが主題にあります。「Mono no aware」で注目されたKareem Lotfyや、フィールドレコーディング界隈の旗手Jana Winderenが同列で並ぶこのコンピレーションは、近年のエレクトロニック・アコースティックの動きを蒸溜した一つの軸として存在しています。


Zebularin - Semantic Radiation

ドイツのシュトゥットガルトからZebularinという異型のポスト・ロック/アンビエントを象ったアルバムが産まれました。長尺の楽曲や短尺の楽曲ともに共通する非典型の背景にはメンバーがそれぞれ異なった音楽的背景を備えている事がこのアルバムに多分に影響しています。イギリスのニューキャッスルを拠点に置くレーベルCruel Nature Recordsからリリースされた「Semantic Radiation」には、メンバーの培って来た様々なジャンル(ジャズ、ロック、インダストリアル、サウンドアート)の混交のダイアローグが、ジャンルの細分化を意識させながらOtomatik Muziekからリリースされた次作「Hermetic Topography」へ繋がる情緒ある相関的なゲマインシャフト(共同体)になっています。


Electric Jalaba - El Hal

2011年にロンドンで結成されたバンドElectric Jalabaの新作「El Hal」は、(The feeling)を表す語としてゲンブリ奏者でもあるSimo Lagnawiが付した通り感覚に訴えるのは自身の出身地モロッコにも関係があるように思います。彼らはグナワ・ミュージックにジャズ・ロックを混交させた音を主体に魔術的なリズムを撹拌させていきます。「Daimla」のような砂塵舞う大地に根ずく土着的な音に異質なまでのエレクトロニックなテイストが70年代にハード・ロックや多くのジャズアーティストに影響を与えた余波の結果が実を結んでいるのを実感します。

グナワは、中世において西アフリカからモロッコに奴隷として連れてこられた貿易商や黒人部族の末裔の名称です。カルカベと呼ばれるカスタネットでリズムを作り、Simo Lagnawiも奏でるゲンブリというベース状の弦楽器を弾きながらコーラスを響かせるのがグナワ・ミュージックの特徴です。Maleem Mahmoud Ghaniaがグナワ・ミュージシャンでは有名ですが、Electric Jalabaのようなジャンルを越境して自身の文化に結合させていくことで自身のスタイルを確立させていくアーティストだとシカゴのアヴァンギャルド・ジャズを主軸にするAdam Rudolphと1991年にコラボレーションを果たしたHassan Hakmounの作品「Gift of the Gnawa」も顕著なアーティストです。


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