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 私は赤から青の彩、そして各々の繧繝が好きである。あまり赤から黄色を経由してみどりになっていく過程を美しいと目に止めることは無い。

 今日は私のいるところから北西へ進んだあるお寺様へ美しい錦が見られるということで訪れるはずだった。嵐山の大きなお寺といえば天龍寺。コロナ禍の175パーセント増しの人の出だそうだ。そこの塔頭であるため混むだろうと予測し近くの洋食屋さんで煮込みハンバーグをはふはふ頬張っていたら受付時間が終了してしまった。

外からでも宝厳院は紅葉が綺麗なのが見受けられた。緑から赤にかけての彩は今まで見た中でもトップクラスだった。それ故に入れなかったことが心残りである。ハンバーグが美味しかったからいいのだけど。何回も言うほど美味しかったから。はふはふ

 それからはあてもなくのんびりと、夜間徘徊と言われそうな2人だけの世界だった。2人とも手が冷えてシャカシャカ熱を求めながら歩いていると目の前に月が何も邪魔するものがない構図で現れた。歌詠みの題になりそうなほど美しい、やはり名勝から仰ぐ月は美しく水面に映る光は理知的な輝きを秘めている。綺麗だと話をしながらそんなことを思っていた。

 その時ひとつだけ言いたいことがあるという。何か感傷的な態度が気に触ったのかと不安になりながら恐る恐る耳を傾けると、予想を裏切る言葉が降ってきた。

 夜景の綺麗なところでってよく言われてたりするんだろう。よくありがちな街の灯りが綺羅綺羅しているようなところではなく月陽に照らされて水面が青い繧繝となった場所でその言葉をかけてもらえて心地良かった。

 発せられた声は震えていたけれど、寒さのせいにしておく。


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