深呼吸Booksからのご挨拶
「抹茶ミルク」出版プロジェクト
2020年夏に開始したYAMI大学・深呼吸学部は、オンラインの上で「教育」というフレームの中での「新しいコミュニティ」を作れるのか、という問題意識で運営してきました。「教育」の最大の意味は「クラスメート」の信頼関係を成立させることだと思っていたからです。
塾長である橘川は、毎週土曜日の夜、4時間から5時間の講義で、さまざまな指導や問題提起を投げつけながら進めてきました。そして、この「教育コミュニテイ」活動の中から、新しいプロダクツ(社会的製品)が生まれてきました。
小説「抹茶ミルク」(著・滝和子)は、塾生である滝和子が、最初は橘川個人に読ませるために書いた短い家族の物語でした。それを塾生たちに公開し、「ソーシャル編集」という、塾生全体で意見や感想を言うZoom会議を何度も開催し、そのたびに、著者は、さまざまな刺激と勇気をもらい、書きたい内容も、どんどん膨らんで、一冊の本として完成しました。
私の描く参加型社会とは「人々との信頼関係のつながりによるコミュニティに支えながら、自立した個人が頑張る」社会です。新しい模索の苦労は個人が引き受けなければなりません。個人的な表現や創造活動は孤独なものだが、それを見守っている信頼出来る他者たちを意識出来るか出来ないかで、個人的な努力の意味が大きく変わるはずです。
そうした未来への、一つのプロトタイブが誕生しました。
「抹茶ミルク」は、これまで長い歴史の中で染み付いていた日本型の家族のあり方が崩れ、戸惑う、戦後社会の家の人々の関係性を描いた物語です。現代に生きる私たちにとって、他人事ではない課題だと思います。
発行後に、読書会を兼ねた、日本の家族について語り合う「家族未来フェス」を計画しています。
本の発行をクラウドファンディング出版で行うのも、これまでの出版社・取次・書店という巨大な流通構造の中では、どれだけ本が売れようと、著者と読者の関係は築けません。ただ販売部数だけが評価の基準で、書いた人と読んだ人の1対1の関係は成立しないのです。
私たちの目指す参加型社会は、そうした巨大で強固だけど空虚な社会システムではなく、ひとりひとりのエネルギーと思いが伝わりながら満たされる、小さなコミュニティのネットワークです。
「抹茶ミルク」を刊行することになり、すこしずつ、新しい出版のあり方を目指す人たちの内部に反応が起きています。一人の思いを、数量ではなく、確かな別の個人につなげられる、新しい出版流通を作りたいと思います。
よろしくお願いいたします。
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