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精神科医の僕がネットの「仮想クリニック」を作った理由

Kohei Yoshioka(kohekohe)

僕は精神科医です。
精神科には、日々何らかの生きづらさを抱えた人たちが訪れます。
知識と経験に沿って適切な対応をしているつもりですが、たくさんの患者さんと接していると、
「これで患者さんは本当に楽になるんだろうか?」
「精神科に来ないまま、人知れず困っている人もいるんじゃないか?」

という疑問が浮かぶようになりました。

僕自身、子どもが生まれて育児するようになってからは、育児の大変さが身に染みてわかり
「育児でメンタル不調になっているものの、どこにも出かけられず相談できないお母さんがたくさんいるんじゃないか?隠れ育児うつの人も多いんじゃないか?」
とも思うようになりました。

こうした違和感と向き合い、どうすればいいか考え抜いてたどり着いたのが、仮想クリニック「メタバースクリニック」です。

メタバースクリニックとは何か

メタバースクリニック

メタバースとは、インターネット上の仮想空間で自分のアバターを作成し、行動できるようにした仕組みのこと。

メタバースクリニックは、僕(医師)がインターネット上の仮想空間で主催する健康や医療にまつわる様々なイベント(お悩み相談、座談会、自助グループなど)に、匿名のアバターで無料参加できるサービスです。

自分の顔や名前を出さずに悩みを打ち明けて相談することができますし、わざわざ病院を探して、つらいなか足を運ぶ必要もありません。
無料で利用できますから、いくら通ってもお金がかからないのもメリットです。

毎回「ADHD」、「ひきこもり」などテーマを決めて座談会などのイベントを開催するので、自分の興味があるテーマの座談会に参加し、アバター同士で会話して悩みを共有します。マイクを使って音声で会話するので、実際に会話しているような感覚でコミュニケーションできます。基本的には僕も参加して、求められれば適宜アドバイスしますし、テーマによっては有識者をゲストとして招く予定です。

メタバースクリニックは「クリニック」と言ってはいるものの、コミュニケーションの場であり医療行為を行う場ではありません。だから精神科を受診したり、カウンセリングを受けたりするよりもラフに参加できます。

今月、ついにメタバースクリニックがオープンしました。どうして実在する精神科で患者さんを診ている僕が、わざわざ仮想のメタバースクリニックを作ったのかをお話しします。

僕は何者か

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物心ついたころから要領がよく、大抵のことは器用にこなせた僕は、いつしか医師を目指しました。無事医師になり、大学病院で麻酔科医として勤務して順風満帆な日々を送っていましたが、大学病院の一般的なキャリアプランには魅力を感じられませんでした。その時初めて、明確な目標を見失ってしまったのです。

些細なことかもしれませんが、何の問題もなく人生の階段を駆け上がってきた僕にとっては、最初の挫折と言ってもいいかもしれません。「医師になって人から認められ、たくさん稼げば幸せになる」と信じて努力してきましたから、「医師になっても幸せにはならない」という事実は、土台になっていたハシゴを外されたようなものでした。

そこで宙ぶらりんになった僕は、自分にとっての幸せは何なのか、自問自答して追求するようになります。自分の心と向き合ううちに、こうして心について考えるのがとても好きだということに気づきました。

「だったら精神科医になって、とことん心と向き合おう」
と思い、麻酔科医から精神科医に方向転換しました。これまでより「自分がやりたいことで社会の役に立っている実感」が得られるようになったのですが、さまざまな業界で活躍している人々と会う機会が増えるにつれ、心の奥にコンプレックスがちらつき出しました。

彼ら・彼女らは自分らしさを活かして活躍していますが、僕にあるのは医師免許だけ。
「自分から医師免許を取ったら何が残るのだろう。一体何ができるのだろう」
と不安になり、ただぬるま湯に浸かっているだけのような気がしてならなかったのです。

―何かを世の中にアウトプットして残せる人間になりたい。

そんな熱が沸々と高まり「精神科医の知見を活かしたサービスを開発して、世の中に届けよう」と思い立ちました。
これがメタバースクリニックの種となる思いです。

なぜ「メタバースクリニック」なのか

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せっかく作るなら、社会の課題を解決するサービスを作って社会貢献したかったので
「精神科医になってから感じていた課題を解決するサービスにしよう」
と考えました。

コロナ禍で特に痛感したのは、絶望的な状況でも希望を持って前進するために必要なのは「つながり」だということです。長引く外出自粛でつながりが欠如し、孤独感によってメンタル不調が生まれているケースが多くありました。

医師は患者さんを診察し、症状に合わせて薬を処方したり、状況に応じてアドバイスしたりできます。
でも、医師がどれだけ患者さんに寄り添おうとも、実際に同じような状況を経験した人の言葉には到底敵いません。

悩み苦しんでいる時、同じ立場で感情を共有できる人とのつながりは
「こんなに辛くて大変なのは自分だけじゃないんだ」
「自分だけが全てを背負い込む必要はないんだ」
「同じ悩みに共感してくれる仲間がいるんだ」

と感じさせてくれ、今にも折れそうな心の支えになるのです。

アルコールやギャンブル、薬物などの依存症も、精神科だけでの治療が難しい病気です。
精神科で薬を処方だけでなく、同じ悩みを抱えた人々が交流する自助グループの参加が再発防止に役立つ可能性として示されています。

同じ立場の人同士が悩みを共有する自助グループには、自分のことを受け入れてもらえるという安心感があり、心理的負担が軽減されるのです。
また、依存症は孤独感によって誘発されやすいので、孤独感を解消するつながりがあれば防ぎやすくなります。

しかし、精神科医としての診療行為ではこうしたつながりを提供することができません。
「こんなコミュニティがありますよ」と情報提供することはできますが、結局は患者さん自身が問い合わせしたり申し込んだりして、参加するしかないのです。
実際、アルコール依存症の潜在患者数は日本で年間57万人もいますが、自助グループに参加している人はわずか1万人ほどで、つながりを感じられる場に足を運べる人が少ないことがわかります。

だから
「誰もがプライバシーと心理的安全性の保たれた状況で、気軽につながりを感じられる場を作りたい」
「場所に縛られず、自身の経験を安心して語ってもらえる場所を作りたい」
「つらい思いを抱えている人たちにつながりを感じてもらって、希望を持ってほしい」

という思いで、インターネット上の仮想空間に匿名のアバターで参加できるメタバースクリニックを始めたのです。

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当面、メタバースクリニックは世界最大のメタバースプラットフォームであるVRChatを利用して開催していきます。(2022年3月よりスマホ対応のDOORでの開催も決定‼)

メタバースクリニックはなぜ無料なのか(ビジネスモデルについて)

メタバースクリニックの利用は無料ですが、「なんで無料なの?」と疑問を感じる人もいるでしょう。
無料なのにどうやってビジネスとして成立させるのかというと、企業スポンサーから収益を得る予定です。

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メタバースクリニックの仮想空間上に企業広告を表示し、参加者となるユーザーの目に触れるようにし、さらにイベントの様子を動画化してYoutube等でコンテンツとして公開することで広告効果を高める仕組みです。

コンテンツ配信を通して、イベントには直接参加していない同じような悩みや困難を抱える多くの人の目に触れることがヘルスケアサービスとして大きな価値提供になると考えています。

もちろん、全ての無料イベントの配信は、参加者に事前に同意を得たうえで開催します。動画配信時にはプライバシーに配慮し、汎用アバターを利用したりニックネームを非表示にしたり、声を加工したりして個人を特定できないようにします。それでも会話の中から個人が特定されそうな場面があるときは編集でカットしますので、安心してお話し頂けます。

オンラインビデオ通話との違い

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メタバース(インターネットの仮想空間)とオンラインのビデオ通話の大きな違いは、体験価値にあります。
メタバースなら、洗練されたビルのオフィスから広大な草原、キャンプファイヤーを囲んだ空間、星空の下など、どんな空間も想いのままに構築できます。

たとえばカウンセリングならストレスを緩和するリラクゼーション空間を、コーチング的な内容ならイマジネーションを高める洗練された空間を用意して、理想とする最適な空間でコミュニケーションできるのです。

メタバースクリニックで待っています

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メタバースクリニックでは、メンタル不調、ひきこもり、発達障害、LGBT、いじめ、人間関係、家族の問題、繊細さん(HSP)、コミュニケーション障害などなど、さまざまなテーマで座談会や自助グループを開催する予定です。ほかのテーマでも要望があれば積極的に開催したいと思っていますし、オフ会に行く感覚でぜひ参加してほしいです。

メタバースクリニックはVRデバイス(ヘッドマウントディスプレイ)を利用して360度の臨場感ある空間で体験できますが、VRを利用せずパソコンから参加することもできます。(DOOR開催イベントはスマホも対応)臨場感は減ってしまいますが、VRデバイスを用意する必要がありませんし、酔いにくいのも利点です(笑)

僕もメタバースクリニックで待っているので、つらい気持ちや苦しい思いを抱えている人は、ぜひ気軽にお越しください。
メタバースクリニックを通じて、匿名の元に、ゆるくつながれる。そんな新しいつながりのカタチを得ることで、一人でも多くの悩んでいる人が自分なりの一歩踏み出せることを願っています。

今後の展開として、ヘルスケアという視点からメタバースの持つ可能性を追求すべく、既にいくつかのアイデアに着手しており、そちらについてもサービス化を予定しています。ぜひ今後の可能性にも期待していただけたらうれしいです。

(編集協力:秋カヲリ)

※メタバースクリニックで、1クール24回の「依存症自助グループ」を無料で開催します。令和4年1月18日に販売開始されたばかりの最新版SMARPP-24改訂版を使ったワークで、どのタイミングからでもご参加いただけるので、依存症で悩んでいる方やサポートしている家族の方などはぜひご参加ください。

参加申し込みはこちらから

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メタバースクリニックHP

株式会社comatsuna

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