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反緊縮や積極財政とナショナリズムの関係についての考察


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注意

これらの重要な情報を明かします。

『キミのお金はどこに消えるのか』
『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』
『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』
『逆資本論』
『ヤンキー経世済民漫画』
『資本主義と戦うギャルの漫画』
『こんなに危ない!?消費増税』

はじめに

 以前から経済学について調べる中で、主流派経済学と言われる分野が間違っているとして、現代日本の借金と税金の分野についての「積極財政」の主張をまとめました。



2023年6月28日閲覧


 再びまとめますと、「現代日本の政府の借金は自国通貨建ての、内国債で財政破綻、デフォルトは考えられず、低金利が続くので安全であると財務省自身が認めている」、「国債を大量に発行すると円の信用がなくなりハイパーインフレになるという主張があるが、現代日本は20年以上デフレか低インフレが続くので、円の国債は信用されており、ハイパーインフレは起こりにくい」、「そもそもハイパーインフレは戦争や災害でものがなくなるなどの異常事態でなければ起きない」、「税金の徴収は政府が発行した通貨を政府が回収する、お金を消す行為であり、財源のためではなく景気を調整したり貨幣に信用を与えたりするためにある」、「政府の赤字は民間の黒字であるので、不景気のときには無駄な公共事業をした方が良い」というものでした。

気になること

 これらの主張は、現代日本で政府の借金のために緊縮をして国民の賃金を低迷させていることへの危機感があるようです。
 主に漫画家の井上純一さん、『ヤンキー経世済民漫画』を描くmihanaさん、藤井聡さん、中野剛志さん、松尾匡さんが主張しているようです。
 それらは、国内の経済的弱者を助けるという概念において、私は賛同します。
 しかし、その主張のリスクとして、「国内の利益ばかり考えて良い分野と悪い分野があり、後者の問題が軽視される」と私は考えています。
 それをここにまとめます。

産業革命とヨーロッパの戦争

 たとえば、井上純一さんは、資本主義の説明をするときに、産業革命以後においてヨーロッパの各国が戦争をしていたことを「何で戦争ですか?」と妻の月さんに問われて、「そういう時代だったの」と答えるに留まっています。
 しかし、戦争の議論でしばしば問われるナショナリズム、国家主義や国民主義と呼ばれる思想についての書籍を読みますと、資本主義との関連もあります。
 ヨーロッパのナショナリズムにおいては、当時専門家のラテン語などでしか読めなかった聖書を、一般的なドイツ語などに翻訳して、資本主義と活版印刷の発達で多数販売したことが、国民の団結を促し、異なる言語で会話する国同士の対立を招いたそうです。
 活版印刷の発達しただけの時点の中国でナショナリズムが育たなかったのは、資本主義が当時はなかったためだそうです。
 この意味で、資本主義とナショナリズムを通じた戦争には関連がみられます。井上さんは「そういう時代だった」と、その辺りを省略していると私は考えています。経済より政治の話題なので仕方がないかもしれませんが。

反緊縮と気候危機とナショナリズム

 井上さんは『逆資本論』で、「自分と同じ反緊縮のクラスターで、気候危機の話題を笑う人がいる」と説明しています。
 その原因を「反緊縮(あるいは積極財政)は反グローバリズムの主張で、気候危機対策を海外から押し付けられた規制だとみなすところがある」とも説明しています。
 しかし、それは井上さんを除けば、反緊縮、積極財政の主張をする向きに、日本国民の利益を追求する反グローバリズム、ナショナリズムがあるためとも取れます。
 実際に、『ヤンキー経世済民漫画』では「国とは人や」という台詞もあり、同じmihanaさんの漫画で、「外国人株主が日本の企業の長期的成長を真剣に考えてくれるの?」という主張があります。
 また、藤井聡さんの『こんなに危ない⁉︎消費増税』でも、当時の経団連が低賃金で働く外国人労働者を日本に引き入れたことを批判しています。
 あくまで現代日本で言われる反緊縮、積極財政は、特に日本政府の借金を心配せず、国民の低賃金を心配するため、日本だけの全体の経済を改善したいという二面性があるのでしょう。
 この単語はあまり見当たりませんが、日本の相対的貧困を問題視しているとみられます。

 反緊縮の主張はしていないようですが、萱野稔人さんは、『ナショナリズムは悪なのか』という直接的な題名の書籍で、「日本のリベラルを自称する知識人はグローバル化に反対して格差を是正しようとするが、今の世界で日本と他の国の格差は縮んでおり、国内の格差は増大している。後者を心配するということは、リベラルを自称する彼らもナショナリズムを持っているのである。だからといって格差を是正しなくて良いわけではないが」という趣旨の記述をしています。
 反緊縮、積極財政の主張をしているか私は確認していませんが、日本共産党にも日本民族を重視するナショナリズムがあると、萱野さんや佐藤優さんは書いています。
 mihanaさんも藤井聡さんも、そしておそらく中野剛志さんも、国内の経済的な弱者を助けたい、国内の格差を是正したいという善意はあるのでしょうが、それはナショナリズムがあるとも言えます。それが良いか悪いかではなく、ナショナリズムはみられます。
 ネットで調べる限り、現実の政党でそれが分かりやすいのは、新党くにもりだとみられます。

「自分の国のことだけ考えてはいけない」領域

 ただ、それで済まされない領域も世界の社会問題にはあります。


2023年6月28日閲覧


 たとえば、コロナウイルスについて、朝日新聞で国連事務総長の、「自国民ばかり守ろうとワクチンを打てない国に回さないと、その国で感染爆発が起きて変異株が発生し、結局は自国を守るのも無意味になる」という主張が紹介されています。
 コロナウイルスについては、世界中の「人間」が手を組む必要があるでしょう。
 また、気候危機も、日本だけの問題では済まされないはずです。「海外から押し付けられた規制」と捉えるのは短絡的でしょう。
 ちなみに、反緊縮や積極財政の主張でしばしば批判される(ただしMMTを紹介したことはある)池上彰さんによると、地球温暖化により、ヨーロッパでは海流の変化からかえって寒冷化が起きる可能性があり、そのため「気候変動」と呼ぶことが多いそうです。

「合成の誤謬」で責めてはいけない個人と、責めてはいけない外国人

 また、中野剛志さんの主張で、デフレのときに各人が消費を抑えるのは、個々は合理的でも全体では非合理的になる「合成の誤謬」があるという記述もあります。そのときは、「無駄な公共事業」などの非合理的な政策をあえて国だけが行って改善出来るようです。
 しかし、その表現を借りますと、日本の政策で、低賃金の外国人労働者が「やって来る」こと自体は、合理的なので責められないでしょう。そのような政策をする国の問題であり、労働者を責めるのは酷だと考えます。ナショナリズムにも、そのような線引きが必要だと考えます。
 mihanaさんの漫画でも、国が不景気の中で投資を国民にすすめるのは批判しても、「経済的な不安の中で投資をする国民は責めない」とあります。
 反緊縮や積極財政の主張に含まれるナショナリズムについては、外国人の経済的、政治的弱者に矛先が向かないようにすべきだと考えます。

まとめ

 積極財政や反緊縮の主張は、数字にかかわる経済的な視点では私は肯定するものの、そこに反グローバリズム、さらに踏み込んで言えばナショナリズムがあるため、それを広げるリスクがあるとも考えています。

参考にした漫画

井上純一/著,飯田泰之/監修,2018,『キミのお金はどこに消えるのか』,KADOKAWA
井上純一/著,アル・シャード/企画協力,2019,『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』,KADOKAWA
井上純一(著),アル・シャード(監修),2021,『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』,KADOKAWA
消費増税反対botちゃん(著),藤井聡(監修),2019,『マンガでわかる こんなに危ない!?消費増税』,ビジネス社
井上純一,2023,『逆資本論』,星海社

https://twitter.com/mihana07/status/1610830627770871811?s=46&t=6tio6xUHWU4XCR56E_Ep7w

https://twitter.com/mihana07/status/1629838155560910848?s=46&t=6tio6xUHWU4XCR56E_Ep7w

2023年6月24日閲覧

参考文献

鈴木貞美,2009,『自由の壁』,集英社新書
萱野稔人,2011,『ナショナリズムは悪なのか 新・現代思想講義』,NHK出版新書
大澤真幸(編),2009,『ナショナリズム論・入門』,有斐閣アルマ
池上彰,2021,『今を生き抜くための池上式ファクト46』,文藝春秋
松尾匡,2019,『「反緊縮!」宣言』,亜紀書房
中野剛志,2019,『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室 基礎知識編』,ベストセラーズ
中野剛志,2019,『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室 戦略編』,ベストセラーズ

https://zaigen-lab.info/2022/07/08/delinquent_explanation_manga/
『ヤンキー経世済民漫画』紹介記事
2023年6月24日閲覧

池上彰,佐藤優,2015,『希望の資本論 私たちは資本主義の限界にどう向き合うか』,朝日新聞出版
春香クリスティーン,2015,『ナショナリズムをとことん考えてみたら』,PHP新書

池上彰,2020,『知らないと恥をかく世界の大問題11』,KADOKAWA

朝日新聞,2022年2月18日朝刊p.17,寄稿「国連事務総長「グローバルな意思決定、手詰まり状態」」


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