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言うべきか、言わざるべきか。

夫からLINEがきた。
わたしたち夫婦は必要最低限のやりとりしかしない。
それなのになにやら長文だ。

何事かと読み進めていくと、そこにはマンションのエレベーターで、女子高生と一緒になったことが書かれてあった。

夫が先に乗っていて、途中で女子高生が乗ってきた。ふと女子高生の足元に目をやると、靴下のアキレス腱あたりの位置に、大きな穴が開いていた。ちょうど見える位置だった。あとちょっとズレていれば、靴で隠れて見えないが、穴からは女子高生の皮膚がまごうことなく見えている。これじゃ、誰かに指摘されたら可哀想だ。教えてやるべきか。

夫は迷った。

言うまいか、言わざるべきか。

考えあぐねた末、言わなかった。
その決断は正解だったか?という内容だった。

わたしは自分が高校生のときを思い出し、LINEを返す。

「いくら同じマンションだからって、知らないおっさんから、しかも背後から、あなたの靴下、穴開いてますよ。なんて言われたら、は?あんた誰?きもちわるっ!って思われる。正解!」と返した。(正解かはわからないが)。

すると「よかった」とだけ返ってきた。

でも念のため考えてみた。
仮に彼女が学校で、好きな子に穴を発見されたとする。それで例えば、彼女の好きな子が穴を見てどん引きしてしまったらどうか。

仮にわたしが夫の立場だったとして、例えば男子高校生のズボンのチャックが全開だったとする。その日たまたま男の子は、だっさいパンツを履いていた。だっさいパンツが見えたまま学校へ行き、これまた好きな子に見つかって、どん引きされたらどうだろう。

多感な年頃ゆえ、とうの昔に過ぎ去った頭では想像に及ばないことが起こりそうだ。

さあ、それを見つけたわたしは、はたして教えるだろうか。

「あ、あの、パンツ見えてますよ」

いや、完全にアウトな気がする。

結局考えてみても、答えは出なかった。
相手がどういうタイプかにもよる。
「言えば良かった」と思うことより「言わなきゃ良かった」と思うことのほうが、ダメージが大きいかもしれない。

そういうことって日常のなかにゴロゴロ転がっていて、こちらの緩んだ隙をついてくるような気がする。たいてい気づくのは、ことが起きてしまった後だ。


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