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樋口一葉にカギカッコ
2004年から五千円札紙幣に肖像画を描きこまれている樋口一葉。
明治時代に名作「にごりえ」や「たけくらべ」を書いた女流文学者。
2024年からは津田梅子と交代されるとか。
誰でもそうでしょうが、わたしも樋口一葉の名前は十代のころから知っています。
でも、作品は?
中学生時代、文庫本の「たけくらべ」を開いたこともありましたが……。
が、しかし……(絶句・涙)当時の読解力ではッ、みごとに挫折しましたぁッ!!!
地の文は古文調で改行がほとんどなく、会話文に「カギカッコ」すらありませんッ。
これを読みづらいと言わずして、なんと言いましょうかぁッ。(涙涙涙)
樋口一葉と同世代(正確には五つくらい年上)の文豪で夏目漱石がいます。
夏目漱石が現代人でも読める文体を採用したのに対し、一葉先生は江戸時代の戯作(小説)の書き方をそのまま採用したかのように、会話文のカギカッコもなければ改行もないのです。
ところで最近……。
コロナ禍でひきこもり生活をしているため、読書の時間がとれるのをいいことに、ふと思い立って「樋口一葉」の作品を図書館から取り寄せました。
つまり学生時代に挫折した樋口一葉に再度チャレンジ!(読書リベンジ!)
かつてなら読めなかったものでも、いまなら読解できるかも……?(笑)
ところが、図書館にある「全集」は重量があるうえに出版が古く、文字が細かい。おまけに文字自体がとても古い。たとえば「恋」という漢字が「戀」だったりヒロインの名前も「お関」が「阿關」と読みづらい。
しかも、やはり改行とカギカッコがない!
図書館の書籍で挫折するのもシャクだから、アマゾンからキンドルにインストール。〇円なのがうれしい♪
いくつかの作品を二日間、ぶっとおしで読みました。
たかが二日間。
それでも、感動的に濃厚な二日間の読書体験でした。(ありがとう一葉先生♪)
けれど、ふと思ったのは
(わたしのように拝読に挫折して、そのまま樋口一葉を読まない人がたくさんいるにちがいない)
ということでした。
だいたい、なぜ樋口一葉はドラマ化されないのでしょう? その人生も作品も。
作品を読んでいて、どれも上質な舞台演劇を鑑賞しているかのような錯覚があり、これを映像化しないのは
「なんてもったいないっ!」
一人くやしい思いすらしました。
もっとも、樋口一葉も一度だけドラマ化されたことがあります。主演は大原麗子さんで、とても演技に気迫がこもっていたと記憶しております。
それから舞台では「頭痛肩こり樋口一葉」というのがあります。
こちらは井上ひさし先生の戯曲。
一度だけテレビで劇場中継が放送されました。
ちょっと記憶をさぐりながら内容を書き留めますと……。
貧しいながらも母親と妹の三人で樋口一葉は長屋に暮らしています。母親は
「わたくしたちはもとは士族(武士)なのだから、貧しい人にほどこしを」
という見得と心意気があって、お金をご近所に分け与えたりします。
それはしかし、内職仕事のかたわら一葉が小説の執筆で得た原稿料なのです。
そういう樋口家に入り浸る女ともだちが二人いるのですが、若い方の一人が、貧しさゆえに娼婦の身分に堕ちます。
そしてもう一人の女ともだちの亭主を(それと知らずに)色仕掛けで夢中にさせ、破滅に追いこみます。やがて二人の女ともだちは樋口家で刃物を振り回して大ケンカ。どちらも命を落とすわけです。(身もふたもない……(;^_^A)
ラストに二人の亡霊が一葉をむかえにやってくるところで「幕」だったか……。
井上ひさし先生らしいコメディタッチで、出演者が女性だけでその時代を描いていました。
というわけで、樋口一葉については本当に映像化が少ないです。
読まれず、人生も紹介されないというのは痛ましい気がします。
次の五千円紙幣の「顔」である津田梅子は(大学もあるし)大河ドラマでもさり気なく脇役で登場しますし、歴史バラエティ番組でも取り上げられることがあるのですが……。
「いくら紙幣に肖像画を描かれたって、作家は作品を読んでもらわなきゃ意味ないわよ。ああ、頭いたい」
と一葉先生はこめかみをもんでいそうです。
これはもしや、頭痛持ち……ではなくて、一葉作品は文体が古風すぎるのと、ドラマ化するにはどれも短すぎる? というのが理由かもしれません。それから
「パクリができない」
ということもありえるかと……。
パクリというのは後輩作家たちが文豪の名作を敷衍して自作の中でいじったりという作業です。つまりパロディ化。
たとえば夏目漱石の「それから」は谷崎潤一郎が「熱風に抱かれて」という短編小説でパクッてます。登場人物の名前すらも。谷崎の筆にかかると、破滅的な純愛がエロチックなラブコメになるから(それでいてリスペクトしている!)興味深いです。
まあそんなわけで(どんなわけだか?)いくつかの一葉作品のあらすじを紹介しつつ、拝読した感想文を徒然なるままに、こちらに投稿したいと思います。m(__)m
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