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【MERY Lab】 生理の話は「タブー」ではなくなった? MERY世代女子たちのカラダのリスク


生理や女性特有の病気をテーマとして取り上げたファッション雑誌やテレビ番組などが増えていることにお気づきだろうか。どうやら、「女性のカラダ・健康」に対する世の中の興味関心が高まってきているようだ。MERY世代の女子たちは、そういった世間の変化や自分のカラダについてどう考えているのか。

10月23日~25日にかけてMERY世代の女性を対象に、LINEリサーチを利用して実施した「体に関するアンケート」の結果から、若者の健康意識を読み解くとともに、「女性の健康」を取り巻く環境について紹介する。

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まだ若いから油断してる? 自分のカラダに関する意識調査

今回のアンケートには、会社員・公務員134人、大学生・専門学生137人、高校生・中学生2人、専業主婦5人、パート・アルバイト18人、その他19人と、計315人のMERY世代女子たちから回答が寄せられました。

まず、健康とは切っても切り離せない関係にあるダイエットについて、若者の意識はどうなっているのでしょうか。「ダイエット経験はありますか?」との問いに対しては、60.0%が「ある」と回答。そのダイエット方法として取り組んだことがあるものをすべて選んでもらったところ、食事制限が79.9%、運動が71.4%と、ほぼ同等の結果でした。食事制限だけをするのではなく、運動も行って健康的に痩せようと思っている女子が多いことが示唆されています。

続いて、日々の健康管理として実行していることを選択肢から当てはまるものをすべて選んでもらったところ、「バランスの良い食事をとる」が45.4%と一番多く、続いて「適度な運動をする」が39.1%、「規則正しい生活を送る」が36.2%という結果になりました。

Q:ダイエット経験はありますか?

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Q:どのような方法でダイエットをされましたか?

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 健康管理として実行している事

:バランスの良い食事をとる(45.4%)
:適度な運動をする(39.1%)
:規則正しい生活をする(36.2%)
:アプリで体調管理をする(20.3%)
:健康診断や検診を積極的に受ける(7.9%)
:その他(1.3%)
:あてはまるものはない(23.8%)

若者は食生活や生活リズムが乱れていると思われがちですが、MERY世代女子の中にも健康意識の高い方が一定数存在することが見て取れます。

20.3%の回答があった「アプリで体調管理をする」という項目も見逃せません。MERY内の『自己管理はiPhone一台におまかせ。日々の生活を記録できるアプリlist』という記事でも紹介したように、現在は月経管理アプリやダイエット・ヘルスケアアプリといった体調管理アプリが無料で多数存在しています。

また、『「自炊」が好きになる!?無料レシピでやる気アップ、オススメお料理アプリ6選』 でも紹介したようなレシピのアプリも充実しています。こういったものの存在により、体調や食事の管理がしやすくなり、健康意識を高めることにもつながっているのかもしれません。

一方で、「健康診断や検診を積極的に受ける」という回答は7.9%にとどまっています。健康診断は、学校や会社で年に一回の受診が義務付けられていることが多いため、ほとんどの人が受けているのではないでしょうか。しかし、検診、特に子宮頸がん検診や乳がん検診といった女性特有の病気の検診は、自ら病院に行って受ける必要があります。

Q:子宮頸がん検診を受けたことがありますか?

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そこで、「子宮頸がん検診を受けたことがありますか?」という質問をしたところ、「ある」と回答したのは31.1%。乳がん検診や子宮がん検診にいたっては、それぞれ9.5%、15.6%とさらに少なくなっています。やはり、自ら病院に赴かなければ受けられない検診については、積極的に受けている人が少ないのが現状のようです。

「まだ若いから、婦人科検診には行かなくても大丈夫」「毎日の食事や生活習慣に気を付けているだけで十分」……。もしかしたら、自分の健康に対して自信があるというのが、MERY世代女子たちの本音なのかもしれません。

「タブー」だった話題が話せるようになった世の中

ここまで、MERY世代女子たちの健康意識について見てきました。自身の健康に自信があることが垣間見られた彼女たち。では、自分のカラダに関して悩んでいることもないのでしょうか。「自身のカラダの悩み」について尋ねたところ、「冷え性」、「生理が重い」、「生理不順」など、女性特有の悩みを抱えているMERY世代女子がいることがわかりました。

女性特有の悩みの中でも、特に生理は毎月やってくるもの。辛い思いをしている人が多いにもかかわらず、なかなか相談できずに悩みを抱え込んでいる人が多かったのではないでしょうか。

しかし昨今、Forbes内の記事『「生理バッジへの批判は覚悟していた」 それでも大丸梅田店が店員の生理をオープンにした理由』でも取り上げられたように、生理のことや体調についてオープンに語られることが多くなってきています。アンケートでも、「最近、生理など女性のカラダについて話しやすくなったと思いますか?」という質問をしたところ、「話しやすくなったと思う」との回答が30.8%で、「思わない」の18.4%を大きく上回っていました。

Q:最近、生理など女性の体について話しやすくなったと思いますか?

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「話しやすくなったと思う」と回答した方に、「話しやすくなって良かったこと」を聞いてみると、「辛さを共有できることで楽になった」という声が多く寄せられました。

「周りも同じことを思っていると安心する」
「辛いときに無理せず伝えられる」
「気持ちの共有で気が楽になる」

女性特有の悩みは一人で抱え込んでしまいがちなものです。特に生理のときは、ホルモンの影響もあってネガティブ思考になりやすいといわれていますが、辛いという気持ちを素直に吐き出せたり、自分と同じ辛さを経験している人がいることがわかるだけでも、気持ちが楽になったり、安心できるようです。

また、相談することで「新たな選択肢ができた」という回答も多く見られました。

「自分が思っている以上に婦人科に通っている人がいると知ると、少し行きにくい婦人科に行きやすくなる」
「自分自身だけでは病気かどうか悩む軽い症状でも、人に相談したり、病院に行きやすくなる」
「ピルを飲む選択肢ができた」

これまでは、なかなか話題にしにくかったことを相談できるようになり、病院へ行く、婦人科系の薬を飲む、といった選択をしやすくなったといえます。これまでのようにただ辛さに耐え忍ぶのではなく、健康状態の改善に向けた行動を起こす、というポジティブな影響が現れているようです。

さらに、「男性からの理解が得られたことで生活しやすくなった」という回答も。

「男性の理解が高まっているので、生理時のしんどさを少し理解してくれて、生活しやすくなった」
「男性が生理の辛さを少しわかってくれること」

生理日付近にイライラしてしまうことや生理中の辛さを、男性が知っていてくれるだけで、パートナーとの喧嘩が減ったり、学校の男性職員や職場の男性上司にも相談しやすくなり、ストレスは軽減するものです。

とはいえ、18.4%は女性のカラダについて話しやすくなったと「思わない」と回答し、50.8%は「どちらでもない」と回答しています。生理などの話題は「タブー」とまではいかずとも、まだまだ「女性の問題」として扱われ、「社会の問題」とまでは至っていないのが実情ではないでしょうか。

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「女性特有の健康課題」の解決に取り組む企業が増えている

女性特有の健康課題を「社会の問題」とするためには、どのような取り組みを進めていけばよいのでしょうか。実は今、IT企業をはじめとする様々な企業がヘルスケア業界に参入し、「女性の健康」をテーマにしたビジネスを展開する動きが世界中で活発になってきています。

その一つとして注目されているキーワードが、Femtech(フェムテック)です。フェムテックとは、Female + Technologyの造語で、女性の健康課題の解決を目指したテクノロジーのこと。主に「妊娠/不妊」「月経」「更年期」「産後ケア」「婦人科系疾患」「セクシャルウェルネス」の課題解決に向け、アプリケーションなどのソフトウェアから、医療機器や製品、診断サービスまで、幅広いサービスを提供しています。

2012年に全世界で60億円ほどだったフェムテック関連事業に対する投資額は、その後7年間で約750億円まで急成長しています。2020年には1,300億円を超える見込み(*1)。また、米市場調査およびコンサルティング会社であるフロスト&サリバンの調査レポート(*2) によると、2025年には世界で5兆円規模の市場になるとまで予想されています。

*1 Forbes JAPAN 投資額はメルカリ相当。女性の健康課題をテクノロジーで解決する「Femtech」市場が急成長、「タブー」が市場を創り出す フェムテックの目指す未来より/*2 FROST&SULLIVAN FEMTECH Digital Revolution in Women’s Healthより

「タブー」が市場を創り出す フェムテックの目指す未来』をはじめとするForbesの記事でも多数紹介されていますが、現在、欧米では女性が社会的地位や経済力を持ちはじめ、Economyならぬ She-economyという「女性が社会進出をしたことで生まれた新たな経済圏」が誕生しています。そして、その流れを受けて社会は次の段階へと進み、これまでタブー視されてきた「健康・性」という課題を解決するフェムテックがブームとなっているのです。

そんな中、日本でも「女性の健康」をテーマにした動きがみられるように。その一つが、DeNAによる、子宮頸がんに注目した取り組みである『Blue Star Project(ブルースタープロジェクト)』です。

Blue Star Projectは、DeNAと検査薬メーカーのロシュ社による、国内全体の子宮頸がん検診の受診率向上を目指すプロジェクトです。インターネットやスポーツ事業を展開するDeNAが得意とするSNS活用やスポーツの試合を通じた発信を行なっています。

DeNAの広報は、「最近では20代~30代の女性の子宮頸がんの罹患が増えていることから、特にInstagramを中心としたコミュニケーション活動に注力しています。プロジェクトに賛同いただいたフォロワーの皆様からの関連投稿は約3000件に達し、経験者の方を含む様々なエピソードや子宮頸がん検診に対する前向きな声が多く投稿されています。また、2020年10月23日には、横浜DeNAベイスターズ主催試合における『Blue Star Project Women’s ナイター』を開催し、多くの女性の皆さんと共に盛り上がりました」と話しています。

MERY世代女子に今、心がけてほしいこと

フェムテックやDeNAのような動きは、「女性の健康」に対して世の中の関心が高まっていることの現れともいえます。一方で、DeNAがBlue Star Projectを立ち上げた一番の理由。それは、日本における子宮頸がん検診を受けている人の割合が、欧米諸国の70%~80%に対し10人に2人と、非常に少ないことです。しかし、20代~30代の間で子宮頸がんの発症率が急激に増えているというのです。

まだ若いから、自分のカラダのことは気にしたことがない……そんなMERY世代女子たちに向けて、日本産科婦人科学会 産婦人科専門医である吉形玲美先生からメッセージをいただきました。

「私が20年以上、産婦人科医師として臨床に携わってきた中で、とても悲しかったできごとが一つあります。それは、ご結婚されたばかりの20代女性の方が、妊娠を機に産婦人科を受診された際に「進行性子宮頸がん」が見つかったことです。彼女の命を助けるために、赤ちゃんを諦め子宮を摘出する手術を行いました。子宮頸がんの検診は、内診台に上がって子宮の入り口を擦るだけの簡単な検査です。誰もが『これで終わり?」と思うくらいにあっという間に終わります。11月は「子宮頸がん予防啓発強化月間」です。『あのとき検診を受けておけば……』と後悔する方が一人でも少なくなることを願っています」

また、「セルフケアでも子宮頸がんの予防ができる」と吉形先生は話します。

「腟は、乳酸菌が豊富な『おりもの』によって、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のほか、さまざまな病原菌からカラダを守っています。そんな膣の状態を健康に保つためには、デリケートゾーン専用の洗浄料や保湿クリームを使うことが大切です。検診を受けることを基本に、こういった新しい習慣も取り入れて、素敵で健康な生活を送ってください」

世の中の関心が高まっている今、まだ自分は大丈夫と考えているMERY世代女子たちに向けて、社会全体で「女性の健康」の大切さを伝えていくことは意義のあることです。

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日本においても、女性の社会進出が進んでいます。だからこそ、女性特有の健康課題について、もっとオープンに話したり、ポジティブに考えたいと願う人も多いはずです。フェムテックのようなビジネスの動きがさらに活発化し、世の中がさらに変化していくこと。それが、今を生きる、そして未来を創っていく女性たちがより自分らしく生きられる社会の形成につながることを願わずにはいられません。

【調査概要】
調査主体:株式会社MERY
調査方法:LINEリサーチ プラットフォーム利用の調査
調査対象者 :全国20~24歳 女性
有効回答数 :315名
調査時期:2020年10月23日(金)~10月25日(日)
本コラムはMERY LabがForbesJAPANに寄稿したものです。https://forbesjapan.com/articles/detail/38159/4/1/1

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