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「#推ししか勝たん」で経済が動く! オタク女子の消費行動から見えてきたもの

「#推ししか勝たん」というハッシュタグをご存じだろうか? “推しが最高”という意味で、特に10代の若者がSNSなどで使用している言葉だ。そもそも“推し”とは、イチ推しのメンバーを意味する略語“推しメン”をさらに略したもの。今、この推しにハマるオタク女子たちの“浪費”が、経済をも動かしているのだという。オタク女子たちを突き動かすものとは? オタク活動の実態を探りながら、“推し”と“経済”の関係について考察する。

MERY世代女子の7割以上が「推し」がいる

MERYでは2020年6月26日~30日の間に、MERYのアプリ内で「興味関心に関するアンケート」を実施。全425人の回答者のうち、高校生・中学生が116人、大学生・専門学生が135人、会社員・公務員が117人、主婦が7人、パート・アルバイトが33人、その他が17人と、学生と社会人の回答が多く集まりました。

今回MERYでは、“推し”に関するアンケートに注目。「推し(と呼べる好きな人)がいますか?」との質問に、なんと7割を超える女性が「推しがいる」と回答しました。

問:推しはいますか?

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N:423 その他回答0.5%を除く

世代別に見ると、社会人は67.5%、大学生・専門学生は73.9%、高校生・中学生は80.9%と、世代が低くなるほど「いる」の割合は増えるものの、総じて推しがいることがわかります。

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「推しの対象は?」の問いに対しては、アイドルやアーティストという回答の他、アニメキャラクターという回答もありました。

中でもアイドル推しの場合、「アイドルに“ガチ恋”しちゃだめ?推しに会いにいく7日前から頑張る乙女計画」の記事でも紹介したように、推しの対象にリアルに恋をしていることも。「正直、自分の誕生日よりも推しの誕生日の方が大事。#本人不在の誕生日会でお祝い♡」の記事のように、本人はいなくとも部屋を飾り付けたり、豪華なケーキを用意したり、パーティールームを貸し切って誕生日会を開催したりするほどの心酔ぶりです。

女性たちが推しにそこまでハマってしまう理由……。それは、「一番身近にいる永遠の推し?アイドルフィルターで彼氏のキラキラ度増し増し講座」の記事で紹介したように、時を重ねるごとに新たな魅力を知っていけるところにあるようです。最初は顔が好み程度だったものの、調べていくうちに、推しの新たな一面であったり、ギャップ萌えだったりと、新たな魅力にどんどん気付いていき、抜け出せなくなってしまうというのです。

そんな魅力の沼から抜け出せなくなってしまったオタク女子たちは、どんな行動を取るのでしょうか。自分が恋したときを思い出してみてください。相手のことを考えるだけで嬉しい、次に会えるのが待ち遠しい。そして、相手のために何かしたいと思いませんか?

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月4万円以上も!? 推しに“使う”金額を調査

相手のために何かをしたい……そんなオタク女子たちが取る行動の一つが「推しにお金を使う」ことです。

矢野経済研究所が2018年に実施した「オタクに関する消費者アンケート調査」では、オタクの中でも「アイドルオタク」は、最もお金を使うという結果が得られています。

では実際のところ、アイドルオタクの人は月にどれくらいお金を使っているのでしょうか? 「推しに対するお金のかけ方」について質問をしたところ、「CDやDVDが出たり、ライブが決まった時に多く使う」「月々というよりもCDが出た時などイベントごとに使う」といった回答が集まりました。

「カムバ期は3万円、その他はお金使いません!」(大学生)

カムバ期というのは、K-POP業界において新作アルバムやシングルをリリースすること、およびその作品のリード曲を引っ提げて音楽番組へ出演するといった一連のプロモーション活動のこと。韓国アイドルのオタクにとっては、何よりも重要な時期です。中には、日本へのCDの輸入を待ちきれず、現地で新作をいち早くゲットするため、そして韓国の音楽番組をリアルタイムで視聴するために渡韓する人も。この時期に3万円以上を使うことは当たり前ともいえるのかもしれません。

・「ライブがある月はチケット代やグッズ代で3万ぐらい使います」(専門学生)
・「ライブで遠征するときなど、使う月は4万以上使うけど使わない月は0の時もある」(大学生)

公演内容が同じであっても、すべてのライブに参戦したいのがオタク。たとえそれが遠い地域であっても、はたまた海外であっても遠征します。チケット代だけでなく、交通費や宿泊費にもかなりの金額を注いでいるにもかかわらず、さらにグッズまで購入する……。オタクにとって、ライブで直接声援をし、同じ時間を共有することで得られる精神的充足に比べれば、そういったコストは気にならないのだと考えられます。

・「アルバムが出た時に、最低でも2000円以上、最高で12000円ぐらいかかる」(高校生)
・「毎月ではないが5000円以上10000円以下」(中学生)

高校生・中学生でも月に1万円程度使うという声が。高校生・中学生にとっては、決して安い金額ではありません。お金を貯めるためにアルバイトに精を出す高校生もいれば、まだアルバイトができない高校生・中学生は、他に買いたいものを我慢しながらでも、お小遣いをコツコツ貯めているのではないでしょうか。

このように、推しに使うお金を惜しまないオタクの悩みの一つになっているのが「金欠」。「お金がないのなら、推しに使うお金を節約すれば?」と思うかもしれませんが、オタクにとってはそうではありません。

その悩みを解決するため、「応援したいのにお金がない。大好きなあの人のために『推し貯金』、始めませんか?」の記事でも紹介したような、「推し貯金」なるものも登場しています。推し貯金とは、その名の通り、推しを想いながら貯金をすること。たとえば、推しがブログを更新したら500円、ツイートしたら100円といったように、推しが何か情報を発信するたびにお金を貯めていく方法などがあります。そのために、推し貯金専用の貯金箱やお財布を用意する人も。

こういった行動のすべては、推しにお金を使うため。推しのためにオタク女子たちは動き、お金を消費しているのです。

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「少しでも推しの力になりたい」──経済をも動かす推しへの愛の力

推しのための消費を厭わないオタク女子たち。いったい何が原動力になっているのでしょうか? 推しに大金を使う気持ちを探るため、「推しに使うお金が月に5000円以上」と答えた方にその理由を聞いてみると、次のような声が。

・「推しの方に直接お会いして話すことが難しいから、グッズの購入やライブに行くことで感謝を伝えています♥」(大学生)
・「雑誌などの売り上げが良いと次のお仕事につながる可能性もあるので貢献するため」(会社員)
・「推しに美味しいご飯を食べて欲しいから」(会社員)
・「自分のお金で推しの生活が豊かになると思っているから」(専門学生)
・「コロナ禍でライブが軒並み中止になり、少しでも多く推しに貢ぎたいと感じているため」(大学生)

オタク女子たちにとってお金を使うことは、推しに自分の気持ちを伝える手段であるばかりか、推しの生活や今後の活動を支えるための行為とまで考えているようです。つまり、オタク女子にとっては、“浪費”ではなく、純粋な“愛”ということができるでしょう。

以上の通り、たとえばアイドルがライブを開催すれば、チケット代はもちろん、グッズが爆売れし、遠征する人もいる。その行動が、アイドル自身はおろか、レコード会社、コンサート運営会社、グッズ制作会社、さらには鉄道会社や航空会社やホテルの売上となり、結果として2000億円以上(2018年、矢野経済研究所調べ)というものすごい規模の経済効果が生まれています。これを支えている大きな力は彼女たちの“愛”。逆に、愛がなければ何も動かない。こうしたことから、推しへの愛は、日本の経済を回しているといっても過言ではありません。

そんなオタクの愛を理解し、事業に生かしたMERYの例を紹介します。

オタクの気持ちを理解し顧客へのアプローチを行ったMERY shopの事例

アイドルオタクで、気持ちは誰にも負けていないと自負していても、コンサートに参戦する際、服装などでオタク感を出すのは苦手という人も実は多く存在しています。そこで注目されているのが「ワンポイント推しカラーコーデ」。洋服の一部分を、応援しているグループなどの色にするというコーディネートのことです。

MERYでは、そうしたオタク行動から発想を得て、2019年秋に公式WEBショップ『MERY shop(メリーショップ)』にて、華やかなハンドメイドアクセサリーが人気の『Amelia.』とコラボレーションし、全7色展開のアクセサリーを発売。「好きなアイドルのメンバーカラーを身につけよう!」と、「推し活」向けアクセサリーとして紹介したところ、発売スタート後に即完売。在庫を急遽追加するほどの大反響に、製作サイドも驚愕したという事例がありました。

若者の購買意欲が低迷しているといわれている現代においても、愛してやまない推しのためなら、惜しみなくお金を使うオタク。彼女たちの浪費は、単純な“無駄遣い”とは違い、自分の愛を証明したい、自身が推すコンテンツや作品を“次”につなげたいという願いも込められています。そうしたオタクの心理を理解しておくことは、これからの企業の認知向上や利益拡大につながるのかもしれません。

本コラムはMERY LabがForbesJAPANに寄稿したものです。
https://forbesjapan.com/articles/detail/36056/1/1/1

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