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毒にも薬にもならない

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#エッセイ

食べたことばかり覚えている

食べたことばかり覚えている

 食べたことばかり覚えている。
 小さい頃よく親に言われた言葉だ。家族旅行で行った土地や、した事を言われても全く思い出せないのに「ほら、あれを食べた時だよ」とすぐに記憶が甦ってくるのだった。

 大人になった今では、流石に観光名所に訪れたことだとか、川下りをしたことだとかも記憶しておけているのだけれど、そうは言ってもやはり人生の幸せな記憶は大体食べることと結びついている気がする。

 例えば、実家

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人生はちょろりんピック

大学生の後半から社会人序盤にかけて、自分を見失いがちだった。

他人に対して攻撃的になって、不機嫌であることが正しいかのように振舞っていた。
見知らぬ他者の落ち度をあげつらう事が、世間に対する義務であるかのような顔をしていたと思う。

平日夜の地下鉄のホームで、酔っ払って周りにぶつかりながら歩くサラリーマンを見て、

「自分の許容量も分からずに飲んで周りに迷惑かかるなんて馬鹿じゃん。」

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日常的に死ぬ── 虚無とたたかう

「虚無とたたかう」という言葉は僕のものではない。

とりいさんが12月の頭からクリスマスまで定期的に更新していた一群の文章の大見出しとして使われていたものだ。

そこでは虚無の説明として、

”人間が安心して眠ることを妨げる「今日も何もできなかった」という焦り”

”やるべきことを見つけられないまま人生を終えるんだろうなという諦め”
  

   (とりい「「虚無とたたかう」アドベントカレンダ

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ホットカフェラテの注文方法

▼コンビニでホットカフェラテを購入する方法

① レジでホットカフェラテ用のカップを購入します。サイズはSとMから選ぶことができます。

② 受け取ったカップをコーヒーマシンのカフェラテ抽出口にセットし、ボタンを押します(誤ってブレンド抽出口に置かないよう注意しましょう。虚空を流れるカフェラテの滝を眺めるはめになります)。

③ ボタンを押している間に、商品のレジ通しが終わっているので会計をしまし

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男子100mブーケラン

男子100mブーケラン

花束を持って街を走りたい。

時間帯は夜がいい。ショーウィンドウの光や街路灯に照らされて駆けるのが様になりそうだからだ。

服装はやっぱり黒のスーツか礼服が望ましい。本来激しい動きをするように作られていない服で、あえて全力疾走している所にドラマ性を感じる。諸々をかなぐり捨てて目の前のことに真剣に挑んでいる人間の格好良さとでもいうのだろうか。

当然、花束の形にもこだわりたい。花キューピットによると

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