ギックス
食べたことばかり覚えている。 小さい頃よく親に言われた言葉だ。家族旅行で行った土地や、した事を言われても全く思い出せないのに「ほら、あれを食べた時だよ」とすぐに記憶が甦ってくるのだった。 大人になった今では、流石に観光名所に訪れたことだとか、川下りをしたことだとかも記憶しておけているのだけれど、そうは言ってもやはり人生の幸せな記憶は大体食べることと結びついている気がする。 例えば、実家を思い浮かべて真っ先に浮かんでくるのは台所とダイニングテーブルの映像だ。 一
ノートにメモをとっている。 道を歩いている時や、本を読んでいる時にふと思いついたことがあると、ノートアプリを立ち上げて書き留める。 面白いアイデアばかり、という訳ではない。 むしろそんな有益なメモは全くない。 思いついた時には「これはいい文章の核になるぞ」だとか「後でゆっくり考えよう」と思って、いそいそと書いているのだけれど、見返してみて文章に落とし込めるようなものはほんの一握りだ。 ということで、今回はメモしてはみたものの何にも活かされることのなかった断片達を供養したいと
盆暮れ・正月になると寿司が食べたくなる。 物心がついてから中学生になるまで、毎年寿司のある宴会に参加していたからだ。 熊本に住む祖父は人を集めて酒を飲むのが好きで、毎年親戚一同を集めていた。 受験や就職など状況によってメンバーは毎年少しずつ違ったが、20人以上は居たと思う。 宴会の日、参加者達は昼過ぎから徐々に集まってくる。 福岡、鹿児島、遠くは大阪から来る人もいただろうか。全員の到着を待つことなく、来た人から順に思い思いに酒盛りを始めるので、大阪からの一団が到着する
ひんやりした場所が好きだった。 仄明るくて、ひんやりしていて、静かで、さらりとしている場所。小さな頃から太陽がさんさんと降り注ぐ場所よりもそういう空間に惹かれた。 庭で遊ぶにしても玄関に面した日当たりの良い砂場より、裏手の離れに向かう日の当たらない通用路で座っている方がしっくりきた。 ブロック塀にもたれかかって座っていると、ときおき風が吹き抜けていくのが心地よかった。通用路のわきにはかさかさとした緑色のドクダミが、隠れるようにして群生していた。砂場のそばに植えられたツツジ
キックボクシングを始めた。 家の近所にキックボクシングを教えるジムができた事はずいぶん前から知っていた。 ただ、格闘技全般は自分と縁遠いものだと思っていたので、特に詳しく調べることもなく前を通るときに眺めている程度だった。 入り口側の壁がガラス張りになっているその建物は、通り過ぎるだけで中の人達の姿がよく見えた。 ミットを着けたトレーナーとそれにパンチやキックを打ち込むトレーニーたち。一撃ちごとに響くバシン!バシン!という音がこちらまで響いてきて、何だか漫画の世界みた
大学生の後半から社会人序盤にかけて、自分を見失いがちだった。 他人に対して攻撃的になって、不機嫌であることが正しいかのように振舞っていた。 見知らぬ他者の落ち度をあげつらう事が、世間に対する義務であるかのような顔をしていたと思う。 平日夜の地下鉄のホームで、酔っ払って周りにぶつかりながら歩くサラリーマンを見て、 「自分の許容量も分からずに飲んで周りに迷惑かかるなんて馬鹿じゃん。」 と放言することで、自分を表現できているつもりになったりもしていた。 一緒
▼コンビニでホットカフェラテを購入する方法 ① レジでホットカフェラテ用のカップを購入します。サイズはSとMから選ぶことができます。 ② 受け取ったカップをコーヒーマシンのカフェラテ抽出口にセットし、ボタンを押します(誤ってブレンド抽出口に置かないよう注意しましょう。虚空を流れるカフェラテの滝を眺めるはめになります)。 ③ ボタンを押している間に、商品のレジ通しが終わっているので会計をしましょう。 ④ お弁当あたためをお願いしたら、次の人の邪魔にならないよう脇によけて
去年7月にでた山階基さんの歌集『風にあたる』を読みました。 枡野浩一さんが帯分に寄せている「もといくんの歌集の中で暮らしたい ゆくてのシャツを乾かしながら」という短歌の通り、日々の生活の様子を書き留めたものです。 一連の歌の中で、主体は恋人ではない人と2人暮らしを始めるのですが、ぼくはこの他者である人たちが共に暮らしていこうとする姿に強く心を惹かれました。 卯の花がすきなあなたと手を組んでふたり暮らしという寄り道を 「恋愛して結婚し、家を買って子を育てる」と
花束を持って街を走りたい。 時間帯は夜がいい。ショーウィンドウの光や街路灯に照らされて駆けるのが様になりそうだからだ。 服装はやっぱり黒のスーツか礼服が望ましい。本来激しい動きをするように作られていない服で、あえて全力疾走している所にドラマ性を感じる。諸々をかなぐり捨てて目の前のことに真剣に挑んでいる人間の格好良さとでもいうのだろうか。 当然、花束の形にもこだわりたい。花キューピットによると花束の形は大きく分けて2つ。どの方向から見ても同じように花が見える「オールラウン
ココアにソフトクリームを入れるとミルキーの味になる。 ということに気がついたのは、春先の喫茶店だった。 その日僕は学生時代に付き合っていた友人とサンマルクカフェに来ていた。 晩御飯を食べてから、キャンパスをふらふらしたり、かつての下宿先まで散歩したりした後のことだった。 散歩の途中、微かないい匂いを感じて見回すと道端の家屋の柵から花が飛び出していたので、知っている花の名前を並べ上げて当てようとしてみる。 進行方向に大きな家が見えると、友人は僕の手を掴んで門扉の横のイ
2019年2月2日(土) 休日を100%楽しめないことに悩んでいる。金曜日はだいたいお酒を飲んで帰ってくる。すると土曜の朝のスタートがだいたい遅くなってしまうのだった。 前日に晩酌をしていない日曜の朝も遅いので、お酒のせいにするのはお門違いかもしれない。 いずれにせよ、昼過ぎに起きてしまった休日のだるさは休日を台無しにするのに充分なパワーを持っている。 今更動き出したところで世間のみんなには出遅れているし、用事を済ませた頃には夕方になっているだろうし、何より寝す
スクールカーストってなんだよ。 Twitterでスクールカーストに関するツイートを見た。 「学生時代スクールカーストが低かった子が、実は学内で評価されないすごい才能を持った人で後にそれが評価されて輝いている。こんなに素晴らしい人が埋もれる学校のカーストって残念だなあ」 といった内容だった。 集団内の立場を分かりやすく固定化しようとして、人間の一部分だけを切り取るスクールカーストという制度への違和感、という点には納得できた。 しかし、そこにぶつけるのは「カーストが
2019年1月20日(土) 今日は髪を切りに行ったついでに、 湯島一帯を散歩してきました。 --------------------------------------------------- 僕は美容室の太客だ。 なんと、3週間に1度散髪に行っている。 なぜこんな短いスパンで整える必要があるかというと、 僕の髪の毛は量が多い上にハリガネのように固いからだ。 ちょっとでも気を抜くと髪の毛同士が押し合って、思い思いの方向に広がってしまう。 そういう訳で三
「虚無とたたかう」という言葉は僕のものではない。 とりいさんが12月の頭からクリスマスまで定期的に更新していた一群の文章の大見出しとして使われていたものだ。 そこでは虚無の説明として、 ”人間が安心して眠ることを妨げる「今日も何もできなかった」という焦り” ”やるべきことを見つけられないまま人生を終えるんだろうなという諦め” (とりい「「虚無とたたかう」アドベントカレンダー始めます」) という例が挙げられている。 更に「虚無とたたかう」の小見出し
要らない習慣ばかり身についてしまうよね、という話を友人とした。 要らない習慣というのは、 例えば夜布団に入ってからだらだらスマホをいじってしまうことや、仕事帰りのコンビニでそんなに食べたいわけでもないシュークリームを買ってしまうことだったりする。 もちろん、良くないのは重々承知だ。 スマホをいじるほど睡眠の量と質は下向くし、夜間の糖分は脂肪になりやすい(更にこれまた睡眠の質を下げるという話もある)。 しかも、本当にしたくてしているというわけでもないの