漫画雑誌の表紙で、アイドルの紹介文が間違っていたと「訂正とお詫び」が出ていた。

ミスの内容

読者の反応は……

 この背景には、「確かに間違いやすい状況であった」という事実があり、読者も「訂正対応が迅速なので許せる」という感じである。
 たしかに誰にでもミスはあるし、それを素早く訂正したのはよいことだ。
 しかし、いつものようにこれを校正・校閲者として考えてみたい。

ミスの背景事情は……

「間違いやすい状況」が生まれたというのはこういうことらしい。

 乃木坂46の5期生で初めてセンターを務めたのは中西アルノ
→抜擢直後に中西は謹慎となり、他の人が代役を務めていた
→事情通でなければ、中西がこのときセンターを務めたことは知らない
→そういう人たちは、井上が初の5期生センターだと思っている

それでも疑問は残る

 なるほど、こういうことならば、自身の記憶に基づいて原稿を書いた人(表紙であれば編集者か、もしかしたらライターかデザイナー)が間違えることはあるだろう。
 しかし、誰が書いたにせよ、校正者が入っていたならば、必ずこの情報はチェックするはずである。そうでないとしても、最後に制作したりぎりぎりのタイミングで差し替えることもある表紙には、間違いが多くなりやすい。そのためダブルチェックは欠かせないはずだ。
 漫画雑誌のスケジュールについては知らないけれど、チェック体制がなかったはずはない。
 また、表紙に載るとなれば、アイドルの事務所側にも色校は渡っていたはず。そちらでも誰もチェックしなかったのだろうか。ビジュアル面だけを気にしてテキストは見ないなんてことはないだろう。万が一、名前が間違っていたりしたら、謝罪では済まないのだから。

校正・校閲者を入れられない場合・媒体であっても

 結論としては、出版社(校正・校閲者を入れていない?)側はもちろん、事務所(ビジュアル面しかチェックしていない?)側も、チェックが甘すぎた。これに尽きるだろう。
 今回の一件が怖いのは、出版業界全体に今後こういうミスが増えるのではないかということ。AIがファクトチェックをできるようになるまではまだ遠い。当面は「人間」が最後のチェックをしなければならないだろう。
 そして、それをする担当者は校正・校閲者である。校正者に見せる時間がとれない場合は編集者がチェックすることになるだろうし、現在もそうだろう。
 だが、そうした編集者なら「時間がないときに何をすべきか。省いてはならない工程は何か。どの情報をチェックしなければならないのか」はよく知っているはずではないのか。
 可能ならば校正・校閲者を最後の工程に入れてほしいが、それができないならば「シリアスなミスだけは拾えるスキルを備えた担当者(編集者)が最後に見る」ようにする。それだけは、どうにかして守っていってほしい。

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