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国際決済銀行の中央銀行デジタル通貨に関するレポート

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』は、少し趣向を変えて、中央銀行デジタル通貨(CBDC)についてシェアしたいと思います。

国際決済銀行(BIS)は、少し前になりますが2020年10月9日付けのプレスリリースで、「Central banks and BIS publish first central bank digital currency (CBDC) report laying out key requirements(中央銀行と国際決済銀行は、主要要件を提示した最初の中央銀行デジタル通貨(CBDC)レポートを発行)」と発表しました。

中央銀行をメンバーとする国際決済銀行(BIS)が同日付けで発行したレポート「Central bank digital currencies: foundational principles and core features(中央銀行デジタル通貨:基本原則とコア特性)」は、カナダ銀行、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、スウェーデン・リクスバンク、スイス国民銀行、イングランド銀行、連邦準備制度理事会(FRB)、およびBISが連名で発行したもので、中央銀行の共同政策目標に貢献するためにCBDCの「共通原則と主要な機能」について概説したものです。

同レポートは、CBDC発行の是非や発行するか否かなどについては意見を述べず、あくまで「発行を確約することなく、CBDCの実現可能性の調査を継続する」ことを目的としたものとなっています。その中で、BISは、CBDCについて、① 中央銀行はCBDCを発行することで金融安定性を損なうべきではない、② CBDCは既存の貨幣形態と共存・補完する必要がある、③ CBDCはイノベーションと効率性を促進すべきである、という3つの原則を掲げるとともに、兌換性、使いやすさ、オンライン決済対応、低コスト、安全性、即時性、民間システムとの相互運用性などどいった、CBDCが持つべきコア特性を提示しています。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは、法定通貨として信用される現金(日本であれば、日本銀行が発行する銀行券と日本政府が発行する硬貨)を電子データとして発行するものです。現金に替わる支払決済手段としての電子的な通貨で、日本銀行によれば、デジタル化(電子化)されていること、法定通貨建てであること、中央銀行の債務(負債)として発行されること、という3つの条件が備わっているとされています。

日本銀行のバランスシートの負債の部は、取引先金融機関が金融機関間の大口取引決済のために日銀に持つ「預金債権」(=日銀当座預金) 、そしてリテール決済手段として銀行を通して個人・企業に流通する「銀行券」の2つによって構成されています。もし日銀がCBDCを発行するということになるなら、これら日銀当座預金と銀行券にくわえて、このCBDCも負債の部に入ってくるイメージです。

もっとも、日銀はBISレポートの発行者に名を連ねているように、現時点ではCBDCを発行する計画はないとし、CBDCに関する技術的調査や実証実験を行っていくというスタンスをとっています。

BIS中心のCBDCに関する議論の背景には、中国の中央銀行である中国人民銀行が進める「デジタル人民元」やフェイスブックなど民間が立ち上げた暗号資産「リブラ」プロジェクトの動きがあります。特に前者について、中国は、深センでの実証実験を経て、法定通貨の人民元にデジタル通貨を加えるべく中国人民銀行法改正に向けて既にパブリックコメントを募集済(2020年10月23日~11月23日)です。

本note記事でも、CBDCに関する中国の動きや「リブラ」プロジェクトについてシェアしていきたいと思います。

田中道昭

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