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文化を頑張ること

近所のお店でポテトサラダをいただく。レモンが隠し味で入っているのか、爽やかな酸味が抜けていった。店には食に関わる雑誌が何冊か置いてあり、手に取って見ると「季節によって使うお椀が違う」という和食の特集ページや「日本ワインと国産ワインは何が違うか」などと書かれていてつい読んでしまう。

「季節によって椀が違う」というのは、例えば吉祥文様のお椀は正月のもの、波の絵柄は涼を感じさせるとのことで夏のもの、そんな風に使い分けがあるらしく、詳しくない人間には新鮮な内容だった。感化されやすい性格なので、家で使う食器も季節にこだわってみるか、とあっさり影響を受ける。

立春を過ぎた今だから、そろそろ春めいた器を使ってもいいのかもしれない。何か薄くて軽やかな食器、あるいは明るい色の何か……。そう思って雑誌を読み続けていると、日本酒を頼んだ人のところにガラス製の片口とお猪口が来た。片口は真四角で、正方形に近いデザイン。店側で春を意識したかはわからないけれど、ガラスが持つ気の置けない雰囲気に季節を感じる。

別に季節にそこまでこだわらなくたっていいのかもしれないけど、四季を感じて生きるほうがなんか「文化」って感じがして、その「文化」がやりたいなあと思う。髪型も、いまは重たく下ろしているけど、春になったら少し量を取って段をつけよう。バッサリ切る勇気はないけど、長さはそのまま軽くしてもらおう。

四季の感じ方は人それぞれだ。これから化粧を春っぽくする人もいれば、料理に酸味を加えて爽やかさを出していく人もいるかもしれない。淡く明るい色をファッションに取り込む人がいれば、桜模様の食器を出してくる人もいるだろう。そういうことのすべてに文化を感じる。年中同じであるよりも、外の空気と一緒に揺らいでるほうが、暮らしの楽しみ上手という感じがする。

「文化」は、ちょっと気合を入れないとできない。ズルズルとダラダラと「前シーズンの物だけどまだ使えるし」とか「やらなくても困らないし」と言って、季節ものを逃すことはよくある。物でもイベントでも。だけど、それをやっているとどんどん生活の色どりがなくなっていくから、ちょっと気合を入れてでも「文化」はやったほうがいい。普段めったに「頑張る」とは言わない自分だけど、こればかりは努力と気合の問題だ。頑張って文化をやろう……。

そういえば、外出自粛の影響で歌舞伎界もバレエ界もオンライン配信が増えたらしく、お家で手軽に劇場文化を摂取できるようになっている。本当は客席にいたいけど交通費が……という人たちにも劇場が開かれて、文化の新しい形って感じがする。

https://www.kabuki-bito.jp/ondemand/

https://www.france.tv/spectacles-et-culture/


本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。