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わからないなりのファッションショー

周知の通り、人の集まるイベントは中止や縮小に追い込まれている昨今。モードファッションの世界も御多分に漏れず、オンライン開催になっていたらしい。2021年の春夏コレクション、どのブランドも動画を配信し、それが誰でも見られるようにアーカイブされているからすごい。

1.完全に短編映画。ディオールってこんなブランド

「モードファッションなんて興味ないな」って人も、見ればそれなりに楽しいんじゃないか。ブランドによっては短編映画のような趣きがあるし、いかにファッションに関心がなくても、デザイナーが考え抜いたルックを見ていれば「よくわからないけど壮麗だ」と感じられる、そういう気合の入った配信の数々。一番「物語」っぽいのはこれだろうか。

ディオール。実はどういうブランドなのかよくわかっていない。「スーツと言えばシャネル、高級と言えばプラダかエルメス」と思っているので、ディオールの立ち位置をよく知らないのだけど、この動画は気迫がある。これを作れるくらいなんだからすごいんだろう。

ヨーロッパ独特の〈暗い〉感じ、緊迫した雰囲気。欲を言えば登場人物にもっと演技力が欲しかったけど、彼女たちの本業はモデルであって女優じゃない。完全に短い映画であるようなファッションショー、脱帽の一言だった。

2.24歳、サンローラン似の期待の新星

https://www.vogue.co.jp/fashion/article/us-vogue-rochas-charles-de-vilmorin

華やかな話題には事欠かないモード界、新星も次々登場する。24歳で、ルックスは故・イヴサンローランに似ている、シャルル・ドゥ・ヴィルモラン。この人の作るショートムービーも、粗っぽさはあるけど華やかで芸術的。

三部作になっているショートフィルムの、三番目を載せてみた。色使いの鮮やかさが、ゴーギャンやゴッホを思い出させる。若いなあ、って気持ちと、才能あふれてていいなあ、という感慨が入り混じる動画だった。前衛的で鮮やか好きな人におすすめ。

3.大御所シャネルも、さすがの貫禄

https://www.chanel.com/ja_JP/fashion/haute-couture/spring-summer-2021.html

シャネルは公式HPでショートムービーを公開。ディオールが短編映画なら、こちらはドキュメンタリー映画のようだ。大きな階段を、着飾ったモデルたちが総出で降りてくる。それを客席で見守る、招待客のセレブたち。白黒の映像のときは、回想シーンのようなゆったりした曲が流れて、そこからカラフルな現実にカムバックする。動画の作り方がオーソドックスというか、堅実だ。

背景に散りばめられた花の数々も、往来しすれ違うたくさんのモデルたちも、どれもが「これぞパリコレ」という風格に満ちている。これが大御所ってことかあ……と明るい衝撃を受ける、シャネルのコレクションだった。


家にいる時間はまだまだ長いだろうから、いろいろ新しい世界に出会えたら。ファッションショーみたいに、チケットの取り方すら知らない世界がこれほど近くなったのは、間違いなくコロナのおかげだ。〈悪いことばかりじゃなかった〉、この騒動が収束したあとに、そう言えるひとつの理由になりそう。

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本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。