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里芋料理が大好き。でも触ると手がかゆくなる!食べるは良いよい、作るは怖い!!

若い頃、調理現場で大量の里芋を下処理したことがあります。業務用ピーラーという全自動洗濯機によく似た芋洗い兼皮剝き機で500人分を処理し、その後手作業の切り込みを行ったところ、手から腕、顔辺りがかゆくて真っ赤にただれてしまいました。

以来、里芋料理が好きなのに触るのが苦手で、自分ではあまり調理しません。かゆくなるのが怖いのです。
見ただけでかゆくなるのだから重症ですね。

〇里芋に触るとかゆい?かゆくならない皮の剥き方のコツ!

煮物、茹で物、唐揚げ等どんな料理でも美味しい里芋。春に植えて秋から冬にかけて収穫され、この時季は旬です。
しかし、私と同様、里芋の下処理で手がかゆくなった経験がある方は、なるべく料理に使いたくないと思うこともあるのではないでしょうか。

なぜ里芋に触れるとかゆくなる?その原因と理由は?かゆくなりにくいコツは?を整理しました。

① かゆくなる原因は目に見えない物質
里芋を調理する時に、手がかゆくなる正体は「シュウ酸カルシウム」です。シュウ酸カルシウムはひとの目に見えない小さな針のような結晶で、生の里芋に存在しています。里芋の皮の付近には特に多く含まれています。

② 里芋のかゆみ対策〔酸性の水に浸ける〕
シュウ酸カルシウムは、酸と結合すると分解されやすい特徴があります。酢やレモン汁などの酸性物質と混ぜることで、針状の結晶が壊れます。

300mlの水にスプーン小さじ2杯程度の酢やレモン果汁等を加えて酸性水を作り、里芋を皮ごと漬け込み、包丁で皮を剥きます。
手に酸性水を付けておくと、かゆみの予防にもなります。

〔加熱する〕
シュウ酸カルシウムはたんぱく質と結びついています。たんぱく質は加熱することで分解されるので、里芋を加熱することで、シュウ酸カルシウムの性質も壊れます。

具体的には鍋に湯を沸かし、皮付きの里芋を2~3分ほど茹でます。粗熱を取ってから皮を剝きます。つるりと皮が剝けますが、芋によっては剥きにくい場合があるので包丁を使います。

電子レンジの場合は、洗った里芋を包丁で一周ぐるりと切り目を入れ、軽くラップに包んで600Wで3分ほど加熱します。
あくまでも下処理なので、皮が剝けたら改めて十分に茹でるか煮ます。

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〔乾かす〕
里芋は泥を洗ってから天日で乾かします。乾けば滑りにくく皮が剥きやすくなりますが、過剰な乾燥は芋の味が変わるので注意します。

〔直接触らない〕
ビニール手袋を使用し、芋のかゆみ成分に手を触れないようにします。水を使うとぬめりで滑るので、泥芋のまま皮を剝くことをお勧めします。
里芋と手が接触することを物理的に避ける方法が、当然ですが手っ取り早いのです。

③ 里芋で手がかゆくなった時の対処方法
とにかく流水で十分に洗うこと。
塩や酢で洗うこともおすすめです。手を粗目の塩で洗うと、手に付着したぬめりがとれてかゆみがなくなります。
また、薄めの酢水で洗うのも有効です。少しでもかゆみを感じたら早めにしっかりと手を洗うことです。

《私がおすすめの下処理の手順》
① 鍋に里芋が被る程度に水を入れて沸かしておきます。
② ビニール手袋を使用して、泥のまま皮を剥きます。
剥いた里芋をボウルに入れて荒塩をまぶし、まんべんなく手で転がしながら軽くもみます。
③ 湯に適量の酢を入れ、里芋を8~10分程度茹でます。吹きこぼれないように途中で弱火にしたり、水をさし入れます。
④ 表面が茹で上がったらざるに取り、水けをしっかり切ると下処理が完了です。
ぬめり取りは、料理の煮汁の濁りをなくし、味がしみ込みやすくなる点で重要です。
⑤ みそ汁や煮転がしに使う里芋は、塩もみだけの下処理で十分ですが、含め煮や煮合わせ等では煮汁を濁らせないため、茹でこぼしが必須です。

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〇美味しい里芋の見分け方と扱い

ねっとり、ほくほくした里芋はそれだけでも美味しく、また他の食材と組み合わせれば、料理のレパートリーが広くなる食材です。

今回は、里芋の種類と美味しい芋の見分け方をご紹介します。
里芋は茎の肥大したもので、株の中心部分に大きな親芋があり、その親芋に付く小さな子芋や孫芋を里芋として利用するものです。

★分類と見分け方
〔子芋用品種〕

親芋は食用には向かず、子・孫が多数付いて、これが食用として利用されるます。
知られているのは、石川早生、土垂(どだれ)等の品種があります。石川早生はコロンと小さい球形で関西方面で生産され、粘り気があってやわらかい食感です。ハウスで栽培され、春から夏にかけて出回ります。

土垂は関東で生産され、やや長めの子芋です。柔らかく粘りが強く一般的に美味しいと好まれています。
これらは品種名で売られず、里芋としてだけ表示されているので、形で区別します。

〔親・子芋用品種〕
親芋は大きな球形の芋に肥大し、親芋も子芋も食用として利用できます。
芽が赤い楕円型の赤芽芋と大吉(セレベス)、海老状の形のエビイモ等の品種が出回っています。いずれも肉質は粉質で濃厚です。

ヤツガシラ(八つ頭)もこの種類で、ひとつの芋からたくさんの芽が出る性質があります。親芋と子芋が分かれない為、形は塊状の不整形と恰好は悪いです。
でんぷん含有量が高く、里芋の内でも味が良いので高級品です。

「ヤツガシラを食べれば世間の頭になる」として縁起物で使われます。大吉(セレベス)とともに、めでたい席用として、正月の頃に食べられる品種で有名です。

〔親芋用品種〕
子芋があまりつかず、全体に肥大しない為、親芋が大きく育つ種類です。
長い京芋(タケノコに似ているのでタケノコ芋という)が代表的で、形は筒形が特徴です。
粉質で濃厚なところが美味しいのですが、寒さに弱いため九州方面で主に栽培されています。関東以北ではあまりなじみがない品種です。

〔里芋の旬〕
里芋は1年を通して売られていますが、旬は秋から冬にかけて収穫された今の時季です。
旬の里芋は皮が水分を含んで柔らかいので剝きやすく、中心部までねっとり感が強くて美味しいと評判です。

9月から12月のものは関東産が多く、10月から3月のものは九州産が多いです。
子芋の石川芋(一口大の子芋)は6~9月に出回り、「月見の衣かつぎ(皮ごと茹でて、食べる時につるんと剝く)」十五夜の頃に美味しくいただけます。時季や産地にもこだわると、美味しい食べ方ができます。

皮付きの里芋は貯蔵性が高いため、時季を超えて保存した物の中には、皮が乾燥していたり、寒い所で保管したため凍り付いてゴリゴリに硬くなったものもあります。
古い世代の人は「風邪っぴきの里芋」として料理にはならん、とよく言っていたものです。

〔美味しい里芋の見分け方〕
里芋は、泥付きで表面に少々湿り気のあるものが良品です。ひび割れしているものは乾燥して硬くなっているので、調理をしてもあまり美味しくなりません。
泥付き芋を保存する時は、湿らせた新聞紙に包み冷暗所に保存することをおすすめします。

皮剥きの芋を購入する時は、艶があって白いものが良品です。時々里芋の表面に赤い斑点を見つけることがありますが、この部分はいくら煮てもゴリゴリと硬いので美味しいとは言えません。
里芋は寒さに弱く、冬場にはこのような状況が見られます。
できるだけ取り除いて調理するのが良いですね。

里芋を触ったときに里芋の身が硬く締まっているものが理想的です。また、里芋のおしり側(親芋の切り口がある方)を触ってふかふかしていたら、傷んでいる場合があります。
成長の順調な芋は、縞模様が並行してきれいに並んで丸みがあります。

〔里芋の扱い〕
酢水は手のかゆみ防止だけではなく、里芋の変色を防ぐ効果もあります。下茹での時に少量の酢を入れると白く茹であげることができます。また、さっぱりとした煮物にしたい時、煮る前に塩でもんでぬめりをしっかり取っておきます。ぬめりが取れて粘り気も抑えることができます。

*ご自分に合った下処理の方法を見つけて、ぜひ美味しく里芋料理を召し上がってください。


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