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栄養食事療法№10 逆流性食道炎 編 胸やけ・つまり感の不快!放っておかないで・・・

最近、胸やけや喉のつまり感がある、と感じている人から心配する声が聞こえてきました。症状が繰り返し起こるので、思い切って受診すると「逆流性食道炎ですね」と診断されたと言うのです。

胸やけ等の症状だけでは、飲み過ぎや食べ過ぎのせい?と軽くみてしまいがちですがこれも病気です。

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この病気は、酸っぱい胃液が何らかの原因で食道内に逆流し、胸やけやつかえ感があり「胃食道逆流症」と言います。
その内、検査をして食道に炎症がみられるものが「胃逆流性食道炎」です。

私が病院で栄養食事指導に従事していた時も、糖尿病等の基礎疾患で来室された患者さんの中に、胸やけ・喉の違和感等の不調を訴える人が実に多くいました。

この症状は、食事を含む生活の仕方がかかわっています

もちろん、受診して診断されたら治療をすることになるのですが、今回、管理栄養士からお伝えできることもありますので、参考にしていただければ嬉しいです。

先ず「自分でできることはやってみる」が自己コントロールには大切だと考えています。

〔セルフチェック〕

症状がある場合に受診をすると、問診があり、必要に応じて内視鏡等の各種検査等が行われます。

問診には逆流性食道炎専用の問診票(Fスケール)を活用したセルフチェックが行われる場合があります。
この問診票は12項目の質問からなり、解答して総合計点数が8点以上の場合に「逆流性食道炎の疑いがある」とするものです。

よろしかったら、試してみてください。

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いかがでしたか?
ちなみに、私は2点でした。
数年前にピロリ菌の除去をした直後を思い出し、計算をすると9点でした。
ピロリ菌自体は胃酸分泌を減少させますが、私の場合、ピロリ菌除去直後は胃酸が本来のように活発化し、胸やけなどの症状があったと理解しています。

〔胃酸が逆流しやすい人の傾向〕

食べ物を大量に食べた後や甘い物を食べた後に、胃内の浸透圧が高まって食道に胃内容物の逆流が起こりやすくなります。

また、加齢で食道の機能が低下し、男・女共に高齢期に多く見られる症状です。

さらに、食事を含む日常生活の習慣から、胃酸の逆流が起こりやすいタイプの人もいることがわかっています。

管理栄養士としては、食生活指導の前に食事の問診を行いますが、胃酸が逆流しやすい人には次のような傾向が見られます。

① たんぱく質や脂質の多い食事をするタイプ
たんぱく質や脂質が多いと消化に時間がかかり、胃内に食物が長く停滞するため、胃酸の分泌が活発になって胃液の逆流が起こりやすくなります。

② 大食いで早食いのタイプ
大量によく噛まずに短時間で食べるため、消化器官に負担をかけています。
腹いっぱいになるまで食べ、10分以内で食べ終えるのはいささか問題です。30分くらいはかけたいですね。

③ 甘いものが好きでよく食べるタイプ
甘いもの、特に浸透圧が高い菓子類(ようかん、あんこ物の和菓子、脂肪の多い洋菓子等)を好んで食べる習慣がある人や、炭酸飲料など胃に膨満感がある嗜好飲料をよく飲む人に多くみられます。

④ 肥満体質のタイプ
腹部の脂肪で胃が押し上げられ、胃酸が逆流しやすい状態にあります。

⑤ 日常生活の姿勢が前かがみのタイプ
仕事柄、習慣的に前かがみの姿勢になることが多く、腹部の圧迫が胃を押し胃酸の逆流が生じやすくなっている人がいます。

⑥ 加齢
加齢はしかたのないことですが、年齢と共に食道機能が低下し、特に下部食道括約筋が緩むと胃酸が逆流しやすくなります。

⑦ その他
常時服用している薬に、下部食道括約筋の緩みや胃酸分泌の影響等の副作用があるかどうかを、確認しておくことが必要です。
また、ピロリ菌除去治療後に、本来の胃酸分泌能が活発になって胸やけ等の症状がみられる場合もあることを知っておきましょう。

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〔再発防止対策〕

(1)食生活面
栄養食事療法では、胃から食道への逆流を防ぐために重要な次の2点があります。

①胃の食物の排出遅延や下部食道括約部圧低下の原因となる食事を避けることが重要です。
②食事で胃酸の濃度を抑えて、逆流物による食道粘膜障害を防ぐことも大切です。

高度の炎症や狭窄、出血等の症状がある時は、入院等で禁食となる場合があり、経口摂取だけではない栄養方法の選択となります。
まず、重篤な状態になる前に、上記2点について、自分でもできる対応が必要です。

〇経口摂取が可能な場合は食道や胃に優しい流動食から開始し、様子を見ながら形のあるおかずへと順番に食事の硬さを上げていきます。

〇胃食道逆流を防止するため、就寝前の食事摂取はせず、食後3時間以内は仰向けで寝ることは避けること。就寝時は、上体を自然に20~30度くらい高くすると良いと言われています。

〇1回の食事量が多いと逆流しやすいので、1日の分量を4~5回に分けるなど食事量の調節をします。

(2)栄養面
参考までに栄養量をお示ししますが、過度な食事コントロールは必要ありません。むしろ、規則正しい食生活、バランスのとれた食事等食べ方の行動変容のほうが大切です。

① エネルギー
肥満では腹圧が高くなり、胃酸の逆流が起こりやすくなるので減量に努めます。1日のエネルギーの目安は、体重1㎏当たり30~35㎉。

② たんぱく質
1日のたんぱく質は、体重1㎏当たり1.2~1.5g。
胃液の分泌を促進しないように、消化の良いたんぱく質(脂身の少ない肉・魚、豆腐、卵等)とします。また、牛乳、乳製品は胃酸の中和作用があるので、摂取をおすすめします。
空腹時に胃酸が逆流しやすい人は、食間に牛乳・乳製品を飲むのが効果ありです。

③ 脂質
1日の総エネルギーの内、脂質のエネルギーは20~25%を目安とします。
天ぷらやフライなどの揚げ物、油を多く使用した料理は、胃排出の遅延となる高脂肪食であり、消化のために胃内停滞時間が長くなります。
症状がある場合は揚げ物を控え、症状がない場合においても、日頃から脂質の多い料理は少なめにすることが望ましいと考えます。

④ 刺激物やカフェイン飲料は避ける
下部食道括約部の圧を低下させてしまう刺激物に、強い辛み食品や酸味、酸味の強い果物、香辛料、カフェイン飲料、炭酸飲料等があるので適宜避けたいものです。

⑤ 甘い菓子類等は避ける
甘い菓子類(和菓子や洋菓子等)は高浸透圧の食品で、食べた後に胃酸の出が激しくなります。このような時に逆流が起こりやすいので、甘党の人はこれらの過食と習慣は意識して改めたいですね。

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⑥ 食物繊維
便秘により、腹圧が高くなり逆流が起こりやすくなります。便秘の時には、オリゴ糖や食物繊維の多い食品をおすすめします。整腸剤も有効と言われています。

⑦ 調理は熟煮する
生物よりもできるだけ良く煮て食品を軟らかくし、食道や胃壁に負担にならないような調理方法がよいでしょう。

逆流性食道炎は、再燃と寛解(良くなったり悪くなったり)を繰り返し、慢性に経過しやすい病気です。
症状がおさまったら、もうこれでいいか!というわけにいきません。

あなたのライフスタイルや嗜好に、ある程度合わせた食生活の見直しを行うことをおすすめしたいと思います。

今回もありがとうございました。



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