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大切にしている「調理用語」③~炒める・炒め煮・炒る(煎る)・炒り煮~

梅雨の頃。じめじめと蒸し暑い。
こんな時、時間をかけた煮物や揚げ物は、食べるはよいが作るのは遠慮したい。
 
今回は、強火で短時間に仕上げる「炒め物」にスポットを当てた。
 
一般的に「炒める」という調理用語は、フライパンや鍋などに適量の油を使って、強火で一気に仕上げる料理に使う。

短時間で仕上がるから、この時季にもってこいの調理方法だ。
和食、洋食、中華など幅広い料理に、使う油の特徴や食材の持ち味を生かして手早くできる。
 
料理の作り方を伝える時に、一言で「炒める」と言っても、伝える側と受け取る側に違いがあると、全く別物の料理になってしまうことがある。
適切に調理用語を使い分けて、わかりやすく説明するようにしたいと私は思っている。

「炒める」「炒め煮」「炒る(煎る)」「炒り煮」などいろいろ言うけれど、加熱温度や時間、油を使うか使わないか、焦がすかどうかで異なるため、私流に整理した。
地域や専門分野、習慣で言い方が異なるので、お互いに確認し合いながら使いたい。

■炒める


「炒める」は、食材を油で揚げたり焼いたりする中間的な調理方法だ。

熱したフライパンや中華鍋などに油をひいて、強火で一気にかき混ぜながら短時間で調理することをいう。

油の分量は食材の種類によって異なるが、おおよそ食材重量の5~10%の範囲が脂っこくない炒め物だ。
揚げ物のように残油の処理が不必要で、油のとりすぎにもならない。
また、動物性(バターやラード)や植物性(サラダ油やオリーブオイル)などの油の種類によっては、同じ食材でもコクの異なる炒め物ができて、とても便利だ。

材料別に見てみると

①   野菜

アクの強い野菜を炒める場合は、あらかじめ茹でてアク抜きをしておくとよい。アクのいやなえぐみが減るとともに料理の変色も抑えられる。
ただし、きゃべつや青梗菜などのようにアクの少ない野菜は、そのまま炒めたほうが歯ごたえがあって食べ応えもある。
 
野菜の炒め物は、高温かつ短時間で炒めないと野菜の組織から水分が出てきて、煮物の状況になってしまうので注意したいものだ。

玉ねぎを炒める場合を例にすると、みじん切りでも大切りでも、少々色がつくように炒める。水分が出て濃縮された甘みとよい香りが料理に深みを増す。
高温・短時間が加熱の最大ポイント。

また、 野菜類は根菜類か葉物かで火の通りが異なるので、火の通りができるだけ均一になるように食材の切り方に変化をつける。
火が通りにくいものは、炒める前に、湯通しか下茹でするなどの処理がおすすめだ。

②   卵
大きく二種類の「炒り卵」がある。
卵は固まる温度(凝固温度)が低い食材なので、作る料理によっては、卵の炒め方の加熱温度や混ぜ方を変えるとよい。

・細かい卵(ミモザの花のように黄色く細かい)のような仕上がりは、低温で、数本の菜箸かホイッパーで手早くかき混ぜながらゆっくり加熱する。
油を使わなければ、さらに細かくパラパラに色よく仕上がる。
 
・炒飯に使う炒り卵は、多めの油を使って高温で短時間で炒める。ふんわりとした大きめの炒り卵が黄色の彩りもよく仕上がる。

 ・サンドイッチ用の炒り卵は、加熱温度を高すぎないようにして炒めることで、しっとり感の残った炒り卵に仕上がる。
 
③   米
米を炒めるピラフか、ご飯を炒める炒飯かでは使う油の分量が異なる。
ピラフの油は米の状態で炒めるため、米の分量の約5%、炒飯はご飯の分量の10~15%くらいの油を使う。油が多すぎても、米のねっとり感が出て炒めにくいので注意が必要だ。

④   魚と肉
魚はそのまま炒めると崩れるので、卵白や粉類などを表に付けて下揚げをしてから他の食材と炒めるとよい。

肉類も味を逃がさないように、かたくり粉を付けて肉の表面をコーティングして使う方法がある。

肉や魚などのたんぱく質系の材料は、食材に油がコーティングされると味がしみ込みにくいので、炒める前に調味料で味をしみこませておくと美味しくなる。

⑤ 調理用炒め油
炒め油はラードやバターなどの個体油(硬い油)、サラダ油やオリーブオイルなど液体油(軟らかい油)では、料理の風味と仕上がりが異なる。
個体油は冷めると再び固まり口触りはあまりよくない。熱いうちに食べたいものだ。
 

■炒め煮


炒め物は食材によっては、全体に同じ温度で加熱することが難しい。
そのため最初に油を使って炒めてから煮ることがあり、これを「炒め煮」といっている。

煮物の調理工程の前に油で炒め、スープや出汁を加えてから煮るため、煮くづれしにくく、煮物だけでは得られない高温でまろやかな風味が味わえる。

金平ごぼうや、意外にもシチュウー、カレーも炒め煮の分類に入れてよい。
和風煮物の肉じゃがや洋風煮物のポトフも、一度炒めてから煮含めると艶と仕上がりがきれいな場合がある。
 
 

■炒る(煎る)


「炒める」調理方法に比べて、食材の水分を飛ばす調理を「炒る」といっている。
油を使わずに水分を飛ばして、からからに近くした状態、つまり水分を飛ばすことにこだわっているところが違う。
ナッツ類や銀杏、ごまなどの水分を飛ばす時に使う用語。

さらに「煎る」は、材料を火であぶり焦がして風味を出す場合で、豆類やごまでも、あぶり焦がして強く香りを出す場合は「煎る」といって説明している。
 
コーヒー豆は生豆を煎るが、高温であぶるように加熱し、さらにコーヒー色に焦がして強い香りを出すので「焙煎」といって分けている。
 

■炒り煮


文字通り炒って煮物にすることを「炒り煮」という。
その目的は、食材をから炒りして水分を飛ばした後に、出汁や調味料で煮含めることで、味がしみ込みにく食材にもしっかりとしみ込ませることができる調理方法だ。
 
わかりやすい例は、こんにゃくを食べやすい大きさに切って、油無しでフライパンで「から炒り」する。こんにゃくは焦がさないから、煎るではなく「炒る」。
さらに、適量の煮汁でしっかり煮て火を止めて冷ますとこんにゃくに煮汁の味がたっぷりと含み、味も色もしっかりついて美味しくいただける。
これが、こんにゃくの美味しい含め煮の仕方としておすすめだ。

 

■私の思い


フライパン料理は手軽で色々な料理に使える。
私自身、忙しい時の一番の出番がこのフライパンである。ただし、フライパン料理はどうしても油の使用料が多くなる。

テフロン加工を購入しても、炒め物以外に煮魚や簡単な煮物に、便利に使い回してしているうちに、老朽化して油が必要になってしまうのだ。

健康管理上では、1日の使用調理油は成人一人大さじ1~2杯程が適量なので、使い過ぎないようにすることが大事だ。
 
炒める・炒め煮・炒る(煎る)・炒り煮、は、一般にはあまり意識していない調理用語だが、今回もよく考えると奥が深く人に伝えるのは難しいと感じた。

専門の料理人さんは、腕で覚えて技術を発揮しているのだから、やはりすごい!
 
本日も最後までありがとうございました。


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