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大人になって発達障害(ADHD)に気づく時。気づいた時からすべてが始まる。

子どものうちに発達障害に気づいてもらえるのはありがたいことだろう。特に受容的な教師や親・家族のもとに育っていれば。

NHKの朝ドラ「エール」を見ているとそう感じる。古山裕一は明らかにASD(アスペルガー)の特徴を有しているだろう。それでも、藤堂先生(森山直太朗)や父(唐沢寿明)などの応援者のおかげで、自信を失うことなく才能を開花させる。

しかし、多くの発達障害者は、これほど受容的な教師・家族に恵まれることはマレなことだろう。私はADHDの特性を持っているが、比較的家族に恵まれていたものの、日々のできないことや、独特な自分の傾向には何年も何年も悩まされた。

発達障害を持つ人の多くは、大人になってから自分に、その傾向があることを知ることになるだろう。ちょっとした衝撃と共に。

第一期:友人の彼女

自分が発達障害の傾向を持つとはっきり自覚した時のことを思い出せる。

友人と居酒屋で会話していた時のことだった。彼女がADDだという話を聞いたのだ。そのころ「片付けられない女性たち」の本が大ブームとなっており、ADHD/ADDというキーワードが知られ始めた時期だった。最初は、まったく知らない言葉だったので、さっそく本を読んでみたところ「まるで、こりゃぁ、自分のプロフィールだ!」と驚いた。

学生時代から怒られてきたすべての出来事がつながった瞬間だった。

ただ、その後、私は、特に発達障害にそれ以上の関心を持たずに生きてきた。というのも、知ったところで、何も変わらなかったからだ。特段の治療法があるわけでもなく、リタリンの副作用が問題になり始めた時期でもあった。薬もないのであれば、今まで通りやるしかないと思ったのだ。

ADHDという言葉が、巷で聞かれ「私もADHD」「あなたもADHD」というブームに嫌悪感がわいてきて、しばらくは、そっち系の番組も書籍もすべてを見なかったくらいだ。発達障害を知ってホッとしたというより「否認」するような気持ちが大きかった(それでもやっていかなきゃならないんだよ!言い訳にするんじゃねぇ、みたいな。)

しかし、第二期の発達障害を自覚させられる時が来たのだった。それは結婚のタイミングだった。

第二期:結婚

発達障害の傾向を持ちつつも、自分は人並みに生きていけているという自覚があった。20代の頃は特に根拠のない自信があったのだ。もちろん、仕事では失敗を繰り返し、何度も転職したが、それなりに可能性に目をとめてくれる人たちのおかげで、徐々に適正に合う仕事が与えられるようになってきていたのだ。そして職場結婚をすることになる。

妻は、超がつくしっかりものである。整理整頓や管理が得意だ。まあ、そういうところに惹かれたという本能的な理由がある。結婚すると共同生活をするようになるのだが、そこで、初めてと言ってよいほど、健常な人との違いを見ることになった。物を失くさないこと、時間通りにちゃんと動けること、食べるものへのセルフコントロールがきくこと。

妻を見ていて、私は、まるで「超人」を見ているような驚きを毎日感じていた。そして、それと共に、これほどまでに自分が「できない」ということを思い知らされた。ちなみに、振り返ると親も発達障害の傾向を帯びているので、家族の中では、他の人を見て常人が超人であることに気づかなかったのだ。学校での不具合は、共同生活する時に日々生じる不具合とは、そのレベルが異なっている。

白茶トラさんの場合は、結婚した後に、ご主人からモラハラを受けたそうだが。発達障害を診断されたのち「詐欺だ。わかっていたら結婚しなかった」と言われたそうだ。結婚は、かなり発達障害が発達障害を自覚するきっかけになると思う。

私の場合は、妻が、NHK朝ドラ「エール」における裕一に対しての音のように絶対的な支えになっているので、ありがたかった。パートナーといる時は、時折、自分の特性を忘れることもあるほどだ。

まあ、それはともかく、人は人を通してしか自分が見えないということを実感している。ほんとに、ここまで自分がひどいとは、結婚するまで分からなかったのだから。

受け入れた時から始まる

第一期の目ざめでは「否認」の気持ちが強く、ADHDの特性を真に理解して、自分を変えようとは思えなかった。みんな凸凹があるんだから、大きな意味では私も他の人も同じだと思っていたのだ。しかし、実際にはそうではなかった。

そして、障害はまともに受け入れないと、どう改善してよいのかもわからないのだ。ADHDという言葉を知ってから、15年ほど経つ。今は、ようやくスタートラインに立ったような気分だ。ADHDという言葉を聞いても、嫌な気持ちはしなくなったし、そのラベルに依存することもない。

ただ、可能な限りの方法を用いて、生まれ持った感性を無駄にしないように生きてみたいと思っている。

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq