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グレーゾーンの生きづらさにも対応(書評)ハーバード式 大人のADHDパーフェクトガイド

ADHD本はかなりの数読み込んでいるが「ADHDあるある」に終始し、具体的な対処法に踏み込んでいる本は少ない。特に大人のADHDが自分で改善を試みるためのガイドブックは多くはない印象がある。

投薬治療以外で、大人のADHDにしっかりと向き合ったワークブックとして、おすすめできる一冊がある。

確かに翻訳はいまいちで読みづらいのだが、一般論以上に、ADHDの特性と生活を理解した著者が書いていることが分かる。付録として、いくつものワークブックが用意されており、それぞれ使い勝手がよかったので、この本を紹介してみたい。

ADHDグレーゾーンにも役立つ

最近のADHD本を見ていると、ADHDという診断が正しいのか間違っているのか?という精神医学界の批判本も多くなっている。ほんと、そうだなと思う反面、診断が出ていようが、そうでなかろうが、ADHDの生きづらさは変わらないという気持ちがある。この本の興味深いところは、ADHDの診断にこだわっていないところだ。

ADHDを、次のように定義している。頭文字をとってFASTMINDS。

Forgetful・・・忘れっぽい
Achieving below potential・・・力を発揮できない
Stuck in a rut・・・行き詰まりがち
Time challenged・・・時間に追われる
Motivationally challenged・・・意欲がない
Impulsive・・・衝動的
Novelty seeking・・・新し物好き
Distractible・・・注意散漫
Scattered・・・散らかしがち

診断を受けていようと、診断を受けていまいと、このような特性を持つ人が、どのように社会で生きやすくなるかがテーマにある。この視点はとても大切だ。診断されたADHDと同様に、診断されてなくても、このような特性を持つ人は生きづらいのだから。

この本の中でも触れられているように、ADHDは投薬治療だけでは治らない(改善しない)。以下の方法が必要であると言われている。これもまた、頭文字だ、ADHD(笑)

A(AWARE)・・自覚する
D(DECIDE)・・決める
H(HELP)・・支援を得る
D(DESIGN)・・組み込む

まず、ADHDである(もしくはFASTMINDSであるという特性)を受け入れること。そのうえで、優先的に取り組む課題、自分の人生にとって障害になっていたり、生きづらさを及ぼしている問題を見極める。一人で問題を解決しようとせず、助けを得ること、これにはツールを使うことも含まれる。そして、生活全般をコントロールできる「仕組み」を作り出すこと。

たとえ、診断を受けてADHDの投薬治療が始まるとしても、上記のような「ADHD」を実践しないと、生活には思いのほか変化は表れないだろう。(ADHDの投薬治療は集中力改善には効果があると言われているが、その他の問題にはあまり変化をもたらさないことが多いようだ。)

まずは「自分を責めない」ことを覚える

ADHD特性を持つ人にとって、一番重要なのは「自分を責めない」ことを覚えることだろう。ADHDの人生には「できないこと」があまりにも多いので、他の人から叱責されたり、バカにされたりする事件だらけだ。そして、誰よりも自分が自分のことを責めている。

「私はなんて愚かなんだろう」「どうしていつもこうなの?」。否定的なセルフトークを脳内でぐるぐる再生し続けてきた人が多いのではないか。しかし、自分を責めることは、より人生を生きづらくすることにつながってしまう。

「自分を責めると、自らを改善しようとする取り組みに行き詰まりを感じ、前向きな行動が阻まれます。一方、自分以外のものに責めの対象を見出すことができると、自らが変化しようという力は高まります。」(P68)

引用:ハーバード式 大人のADHDパーフェクトガイド クレイグ サーマン (著), カレン ウェイントラーブ (著), ティム ビルキー (著),法研 (2015/2/23)

自分(本質)ではなく、ADHD(障害・もしくは特性)を責めるようにするということだ。何かの失敗をしてしまった時に「なぜ、自分はダメなのか」と思わずに「これは、ADHDあるある、だな」と考えること。それだけの発想の転換で、変化する力は確実に養われる。

この本の中では認知行動療法(CBT)の一環として「考え事日記」を書くように勧められている。このような方法で、何でも自分のせいにしてしまう、自分を責めてしまう考え方を修正することができる。

例えば、こんな感じだ。ざっくりと要素を書き出してみた。

1:思い通りにならずに悔しい思いをした出来事を3つ書き出す
2:頭の中でどんなセルフトークをしたのか書き出す(自分を責めていることを再確認する。)
3:その時に自分がコントロールできなかったことを書き出す
4:その状況を回避するために、次にできることを書き出す
5:同じような状況にいる誰かにアドバイスするとしたらなんと声をかけるかを書き出してみる

通常、1、2の悪い状況を経験した時に、自分を責めてしまって終わる展開を変えることができる。自分の失敗というより、ADHD特性ゆえの失敗であると分かれば、自分にはコントロールできないことがあることを認められる。それを認めたうえで、自分がコントロールできることを探していけるのだ。

「私はなんてダメなんだろう。もう二度と失敗しないようにしよう!」という決意を頭の中で繰り返すだけでは何も解決しない。反省するより、自分の特性をよく理解し、その特性に合った改善策を作り上げることだ。受け止めることからすべて始まる。(反省のデメリットは、以下の本に詳しい)

ADHD(FASTMINDS)の生きづらさを越えて

言われなくても分かっているように、ADHDとして日常生活を営むこと、仕事をすることは、普通の人の何倍もの努力が必要なことだ。

しかし、多少、クセのある車も慣れてくると愛おしい愛車になるように、ADHDも自分のコントロールの仕方を知った人にとっては、決して「障害」ではなくなる。「特性」として理解できるようになれば、こっちのものだ。

私たちの目的は、ADHDという「病気」を治すことではなく、自分がどこに行きたいか、どんな人生を歩みたいかということだ。この本の中では、自分の役割・ビジョン・目標(短期・中期・長期)を何度も書き出すワークが出てくる。この点で、ADHDも普通の人も、みんな同じだ。

自分の特性を理解して受け止めたところから、自分の行きたいところに行くための旅が始まる。

「あなたの旅の目的は何ですか?大切なことは、目的地がどこかというよりは、あなたがどのように旅路を進むかであると思います。私たちがあなたにその旅路から得てほしいと思うものは、自己実現です。あなたがあなた自身であるために、あなたの持てる力を使ってください。あなた自身であることを楽しみ、あなたが意味を見出したことに貢献してください。FASTMINDSを理解し、受け入れ、それに適応していくことが、この旅路で成功するための秘訣です。」

引用:ハーバード式 大人のADHDパーフェクトガイド クレイグ サーマン (著), カレン ウェイントラーブ (著), ティム ビルキー (著),法研 (2015/2/23)

海外のADHD研究は進んでいる(というよりも、日本が遅れているのか)。特に大人のADHDの行動療法的な処方はとても役に立つ。ADHDに関して論じる本は多くても、いざ、対処する方法をしっかりと論じ切っている本は、非常に少ないので、こういう本は重宝する。

このような本をベースに自分なりの「自分取扱説明書」を作っていければと思っている。

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読書感想文

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq