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文章で伝えるという技術(スキル)【書評】みんなが書き手になる時代の あたらしい文章入門 古賀史健

文章指南をする本は多いけれど、そういう本に限って文章が面白くないことが多い。読みやすい文章の書き方を教えるのに、読むのが辛いという時ほど、微妙な気持ちになるものだ。文章指南本ほど、厳しい目で読者に見られるジャンルはない。

だからこそ、次から次へと読ませる文章の力を感じた本だった。パラっと拾い読みし始めたのだが、結局、頭から読み始めてしまった。時々、こういうことがある。「読みたい」と思ったからだ。

読者には、常に「読まない」という最強のカードがあるという。とくにウェブ媒体など、途中で読まれない可能性は高い。どうやって、次の文章、次の文章を読んでもらうのか、参考になる部分が多かった。

ノウハウが具体的なので、中途半端に書評で書きたくはない。刺さった点をワンポイントだけ。

誰を対象に書くか

たった一人の人をイメージして、その人に対して手紙を書くように本を書く。ペルソナを具体的にイメージして、、と言われるけれども、そんな想像上の人物に文章を書くより、もっと良い方法がある。それは「過去の自分」を対象に文章を書くこと。

実際に、この本も著者が「駆け出しライターだったころの自分」に向けて書いた本なのだ。

「昨日までの自分を頭に思い描きながら、昨日までの自分がおもしろがるような文章を書いていけばいい。人の心を揺さぶるような文章とは、そうしたかたちでしか書けないもの」

確かに、人の心を揺さぶる文章を書くためには、必ず自分の心が揺さぶられていなければならない。書き手の感情や熱が、読み手に伝わるのだ。想像上のペルソナに語り掛けるより、過去の自分に語り掛けたほうが100倍熱くなれる。

そして、大事なこととして、過去の自分と同じ悩みを、現在進行形で持っている誰かがいるのだ。自分を深堀りして、自分に届けようとしているメッセージは、見知らぬ誰かの心に届くメッセージとなる。

このことを考えると、あの「読みたいことを書けばよい」という主張の意味も分かってくるってもんだ。

文章で伝えるという技術(スキル)

友人でメールやラインが苦手だという人がいる。できる限り文章コミュニケーションを避ける。メールをすると電話がかえってくる。メールだと、相手にどう受け取られるかが分からないからだという。

文章は誰でも書けるけれども、ちゃんと伝わる文章を書ける人は少ない。それに加えて、人の心を揺さぶるように文章を書ける人は、いっそう少ない。文章で、自分の考えを伝えるというのは、明らかに技術(スキル)である。

ただ、技術(スキル)であれば、学ぶことができるともいえる。文章を書くことを避け続けていたら、いつまでも文章で伝える力はつかないだろう。そのためには、失敗しても書いて書いて書きまくるしかないのかもしれない。

今回読んだ「あたらしい文章入門」は下記の本の要約本のようなスマート新書だ。下記の本も一度読んでみたい。

知らなかったけど、著者は、この超ベストセラー本も書いているのだ。これだけの実績があれば、伝わる文章の指南をする資格があるだろう。っていうか何よりも、次々に読ませる文章がお見事だった。



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読書感想文

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq