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吃音障害を克服する「英国王のスピーチ」(主演:コリン・ファース, ジェフリー・ラッシュ)

名作と名高い「英国王のスピーチ」をAmazonプライムで鑑賞。吃音障害に悩んでいたイギリス国王、ジョージ6世が一風変わった言語治療士と友情を築きながらスピーチを見事に成功させていくお話。食事中に見る映画は、基本的に「吹替版」にしているが、吃音が見事に表現されていて、見ていてちょっと辛くなるくらいだった(でも、多分これは字幕版で見たほうがいい)

クライマックスのスピーチでさえ、魔法のように上手にはならず、絞り出すようにたどたどしいものだったのが、逆にリアルだった。世界史なども嫌いではないので、第二次世界大戦に巻き込まれる直前のイギリスの雰囲気なども分かり、なかなか面白かった。ただ、刺激は少なかったのでドンパチ映画が好きな人なら寝てしまうかも。

英国王のスピーチ(あらすじ)

時代は、第二次世界大戦直前のイギリス。ナチスのヒトラーの脅威を感じるイギリスにおいて、国王の役割とは力強いスピーチで民の心を一つにしていくことだった。しかし、ジョージ6世(コリン・ファース)は幼いころからの吃音障害に悩んでいた。そもそも国王になる予定ではなかったが、兄のデービットが愛人と結婚することを選び国王を退位するという異例の展開になったのだ。ジョージ6世は吃音に悩みながら、数々の公務をこなしていく。

その陰には、友人としてジョージ6世を支えた言語治療士のライオネル(ジェフリー・ラッシュ)の姿があった。そして、ついにジョージ6世にとって一世一代のスピーチの機会が訪れる。ドイツへの宣戦布告に伴い国民の心を一つにするための生配信ラジオでのスピーチだ。ジョージ6世は、この公務を立派に果たせるのだろうか・・。

逃れらない運命

ジョージ6世は国王になりたくなかった。もともと、長男のデービッドが国王を継いだので、ジョージ6世は国王になる予定はなかった。そのころのイギリス国王の主な仕事は、スピーチだった。吃音障害を持つジョージ6世にとっては、それほど辛い仕事はない。妻のエリザベス妃が、言語治療士のライオネルを尋ねて夫の吃音について相談した際に「ご主人は転職したらよい」と言われるが、その選択肢はジョージ6世にはなかったのだ。

劇中で、なかなか思うように言葉が出ないジョージ6世が自分の部屋で、妻の前だけで泣き崩れるシーンがある。本当にかわいそう。この家に生まれていなければ、こんな辛い試練に遭うことはなかっただろうに。ただ、彼だって王になる責任を担わない決断はできたかもしれない。
兄のデービットは、人妻を好きになった時に、それまでの王室のオキテを破り国王を退位した。兄とは違い、ジョージ6世は国難の折、どれほど自分に仕事が向いていないとはいえ、正面から自分の運命を受け止めたのだ。この姿こそ、愛され尊敬される王になった所以だろう。

障害を乗り越える力

前述の通り、クライマックス部分のスピーチでもジョージ6世は吃音を克服してはいなかった。汗をびっしょりかきながら、一言一言絞り出すようにして語るのが精いっぱいだった。ライオネルの治療がどれほど功を奏したのかは、最後まではっきりとはしなかった。しかし、分かっているのはジョージ6世の公務には、いつでもライオネルが付き添っていたことだ。

最後のスピーチの時でさえ、ラジオ収録の狭い部屋でライオネルは「私を見て、たったひとりに語りかけるように私に話しかけなさい」と述べ、ジョージ6世を励ます。マイクを挟んでジョージ6世の真ん前に立ち、一言ごとに元気づけエールを送り、彼がスピーチを成功させられるように助けたのだ。

ライオネルは長年の吃音治療の経験から、吃音の原因が構造的なものではなく、心因的なものであると確信していた。実際にジョージ6世は権威的な父親や、幼少期の乳母からのいじめにより深い心の傷を負っていたのだ。だからこそ、ライオネルが本当の友人となり、どんな時もジョージ6世の近くにいることがスピーチ成功の力になったのだろう。

支えてくれる友を大切にしよう

私もADHD気味で、自分の人生ではさんざん苦労してきたけど、この特性がすっかり消え去ることは期待できない。それでも、友人たちや、時に妻の支えで今まで何とかやってくることができた。発達障害も一つの個性であると考えれば、その特性がなくなることはない。そうであれば、弱みが明らかになってしまうような致命的な時でさえ、支え続けてくれる友を持つことが、一番大事なんじゃないだろうか。

もっと強くなろう!
弱みを失くそう!
無敵のメンタルになろう!

と、、、自分にないものばかりを追い求めていたけれど、もっと大事なことがある。自分を変に大きく見せようとせず、もっと愛されるキャラクターになって、苦手なことでも一生懸命に取り組むことだ。そんな人には、本当に信頼できる友人ができるかもしれない。

弱みをなくすより、弱点に向かい合う時に横で支えてくれる友人を持つほうが、よほど現実的なのかもしれない。

こういう気付きを得るにつれて、真実というものは、ほんと地味なんだよなと感じるよね。何らかの障害を抱えている人が勇気を持って前に踏み出す時に、見ておいて損はない映画だったと思う。

綿樽剛の著書一覧


大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq