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発達障害(ADHD)は管理職になれるか。発達障害にとって出世は諸刃の剣。

自らもADHDの精神科医星野氏によれば「発達障害は管理職になるかどうかを慎重に考えたほうが良い」とのことだ。それまで、曲がりなりにも何とか仕事を頑張ってきた人が、発達障害を自覚するのは、管理職になったり、出世したりして「適応障害」を抱えるタイミングが少なくないようだ。

それまでは、自分一人を何とかコントロールする(もしくはアラが見えないように何とか工夫する)ことでやりくりしていたものが、まるでスポットライトをあてたように誰の目にも見えるようになってしまう。今までは、平社員としてのミスは上司が覆ってくれていたが、今度は自分のミスが会社に損害を与えるようになる。

発達障害にとって出世は諸刃の剣だ。

この記事では、ADHDが管理職になれるかどうか、自分の経験も含めて考えてみたい。

抜擢されたなら可能性はあるかも

まず、それなりの規模の職場で、管理職に抜擢されたとしたら、その時点で「できる」と判断されている可能性がある。これまで、自分のADHD傾向は、何とかだましだましやってきたので、自信がないのもうなずける。でも、普通に考えると、何年も同じ会社で働いた同僚や上司なら、ADHDがADHDであることなんか、すぐにわかる。隠せてないのだ。

以前、一緒に働いていた同僚が、テレビかなんかで発達障害を知ったらしく、深刻な顔で「私、ADHDっていう病気かもしれない」と言い出したことがある。そこにいた皆、「今さらですか」って思ったもんね。

まあ、周りも、そういう傾向が分かっていながらも、あなたが管理職に抜擢されたのであれば、それは、それなりに自律スキルもソーシャルスキルも備えているADHDである可能性が高い。きっと自分でもかなり努力してきたのではないか。できないところはたくさんあるだろう。でも、できるところが、会社の利益になると判断されたので、抜擢されたのだろう。ここは、その評価を信頼するのも一考だ。

注意*ちなみに、名ばかり店長・名ばかり管理職のように、入社早々に、管理職につけるような会社であればやめたほうがいい。確実につぶされて終わる。上記の論は、数年、なんだかんだと一緒に働いてきた同僚や上司がいる会社で管理職に抜擢された場合だ。

私の場合は、上司や管理職に恵まれて、目をかけてもらえて、できないところをたくさんフォローしてもらい育ててもらった。管理職になった時も、過大な期待をかけられてはいないことを、ちゃんと納得させられたので、ありがたかった。「私にできるでしょうか」と相談した時に、ある上司は「まあ、15年くらいやっていれば適性があるかわかるんじゃないの」と言った。そんなに気負わずにという意味だと理解して前に進めたのを思い出す。

管理することをできるだけ減らす

さて、具体的な点だけど、ADHDは自己管理能力が低い。自分を管理できない人が他人を管理できるかというと、これは、かなりきわどい問題だ。それで、一番おすすめなのは、できるだけ管理をしない管理職になることだ。たくさんのことを、しっかり管理するのは難しい。でも、2個か3個のことなら管理できるはず。管理する案件を極限まで少なくする。

劣後順位という考え方。
参考:第二領域が肥大化。目的地の不在と劣後順位の話。

やることより、やらないことを決める。つまりは、MIT(Most Important Things)を見定めることだ。一番大事なタスクを見極めてそれを力いっぱいこなすという方法だ。この記事で、書いたことだけど。

ADHDには、障害として、管理ができない弱みがあるのだから、できないことをしようとしないことだ。ADHDは、なぜか、理想像だけは高いので、細かく管理する管理職にあこがれるはず。でも、絶対無理だから。皆を混乱に巻き込むだけだから。

とにかく、大事なことだけを全力で管理すること。それに絞ることだ。そして、その観点で見ると、大事なことというのはそれほど多くないことが分かる。ギチギチに管理されるより、大事なところだけ、しめてくれる管理職のもとで働くほうが気持ちいいに決まっている。この作戦がうまくいくと、自分も部下も楽になれる。

とにかく褒める

ADHDの管理職、究極のコツは、とにかく褒める上司になることだ。なんでもかんでも、ほめること。小さなことでも、うまくいったこと、よくやっていることをほめる上司になる。(おだてるのはダメ・お世辞もダメなのは言うまでもなく)。褒められて嫌な気持ちになる人はいない。褒められると協力しようという気持ちになるものだ。つまり、これは対人コミュニケーションの原則だ。

おすすめの本は、この本。アクノレッジメントの技術を学べる。

どんな小さなことでもいいのだ。その人の存在価値を認めるような一言を、惜しみなく放てるようになると、人間関係は驚くほど変わる。あらさがしをして、絶えず批判をするような人は敵も多い。必ずや自分も足を引っ張られるだろう。そしてADHDは、アラが多いのだ。そんな目で見られたら、間違いなくすぐに失脚する。

肝心なのはミスをしても助けてもらえるような環境を作ることだ。そのためには、とにかく人をほめることだ。ほめればほめるだけ、自分もほめられるようになる。とにかく好循環が生まれるのだ。そして、そんな環境を作れるリーダーなら、どこでもやっていけるだろう。

管理職ってのは、つまるところ自分で成果を出す人ではなく、チームの良い雰囲気を作れる人なのだ。

ADHDは管理職に向いている

自分の経験から言うと、適正に訓練されたADHDは管理職向きだ。そもそも、雑務ができない。指示を出されて正確にこなすことができない。だから、ADHDは、平社員でいる間は才能を発揮できないことが多い。自分の裁量で物事を動かせるようになると、急に才能を発揮することがあるのがADHDなのだ。

コツコツ出世するためには、きっと改善しなければならないことが多いはずだ。人並外れて大変なことも多いだろう。でも、少しずつでも人は必ず進歩・向上するものだ。ADHDだとしても。

ADHDには、ADHDならではの仕事術がある。負けずにコツコツやっていこう。その才能を発揮できる、その時まで。

綿樽剛の著書一覧

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq