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星新一『ボッコちゃん』 ― ショートショートと私

ショートショートがあったから、
私は救われました。

ショートショートとの関わり、
その過去と現在を
今回は書いてみます。


メンタリスト 彩 -sai-(@psychicsorcerer)です。

書評を本格的に始めてみようと
思っていたのですが、
まずは気軽に、ということで。

(と言いつつ、書き始めたら、
 結局いい分量になりました。)


今回取り上げる本は、
星新一『ボッコちゃん』です。


ショートショートとの出会い

中学生の頃、
活字がほとんど
読めなくなった。

読もうとするのだが、
2ページぐらいの分量しか
気力が持たない。
(つまり見開きの分だけだ。)

何とか読もうとしても、
最大でも5,6ページ。

それでも
「本を読まなきゃいけない」
という強迫観念めいたものが
あった。


そんな時に出会ったのが、
ショートショートだった。

ショートショートは
数ページで終わる小説だ。

これならば読める
ということで、

本屋に行くと、
『ショートショートの広場』
というシリーズの文庫本が
並んでいた。

これはコンテストに応募された
ショートショートから、
選ばれた作品を
収録しているものだが、
この選者が星新一だった。

(後に阿刀田高に交代。)


ショートショートには
大抵、意外なオチが
ついている。

私はミステリから
読書を始めたのだが、
そんな私にとって、
こういった
意外性がある物語は
相性がよかったのだろう。

学校帰りに、
本屋に立ち寄り、
『ショートショートの広場』から
適当な一編を選んでは読む。

そして
気が向いたら、
さらに一編選んで読む。

そんなことをする日々が続いた。

その後、
ゆっくりと時間はかかったが、
活字が読めないことは
克服されていった。


このように、私にとって
ショートショートとの出会いは
私の読書人生において、
比較的重要なものであった。

今でも、
ショートショートを合わせ、
短編や短めのフレーズを
ちょこちょこと読むことは、
自分にとって息がつける
瞬間になっていると思う。

(俳句なんかもいい。)

と、ここまでの関係を
述べたものの、
当の星新一自身の
ショートショートを
読んだのはごく最近だ。

私にとっての
初めての星新一は、
読書記録によると、
『ボッコちゃん』を
初めて手に取った
2016年5月のことである。


『ボッコちゃん』について

『ボッコちゃん』は、
星新一の自選短編集だ。

文庫で約350ページの中に
50編も話が入っている。

表題作の「ボッコちゃん」
そして他に、
「おーい でてこーい」
「生活維持省」
「最後の地球人」
といった星新一の中でも
人気のある作品が
収められている。

今回この短編集を
読み返して感じたことは、
皮肉な笑いの内にある
社会や人間というものへの
眼差しだ。

平和な社会を維持するために
ある過酷さを課している
世の中を描いた
「生活維持省」は、
ディストピア小説の序章とも
読めるほどで、
私たちの未来の一つの可能性を
描いているように思える。

「おーい でてこーい」に
あらわれる様々な人々の模様
(原子発電会社、外務省、防衛庁等)
は、現代の寓話と読むこともできる。
(つまり、
 「あの」時間差での出来事が
 世代間倫理を問うものとしても
 読めるという意味。)

こういった人間への眼差しとともに
今回の再読で、
ショートショートは
一つの詩でもありうることを感じた。

「月の光」という作品は、
もう、
美しい一つの音楽
とでも言えるほどで、
その完結した美しさに
ショートショートの詩情を
覚えた。

(レイ・ブラッドベリの
 美しい短編「みずうみ」に
 匹敵する詩情だ。)


こんな感じで
紹介し続けていくと
キリがない。

表題作「ボッコちゃん」
についてなら、
この作品は、
子供時代に母親が口頭で
何度も話してくれたもので、
初読時には
「やっと出会えた」
と思わされたほどだ、
とか……。

何しろこの本には、
作家本人が選んだ作品が
50編も収められている。

だから、
その中にはきっと
あなたに刺さるものが
あるはずだ。

最初は、どんどん読んで、
その意外なオチに
ひっくり返り続ける
楽しみを覚えるのもいい。

そして、
気になった作品に
立ち止まって、
深読みしても
非常に有意義だろう。

(また、一作一作
 気になったものを選んで
 深読みしたものを
 記事にするのも
 いいかもしれない。)


今回の記事で
『ボッコちゃん』が
気になった人は、是非、
手に取ってみてください!

素敵な読書ライフを!



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