私の痛みが姉に伝わった話

その日は蒸し暑く、少しでも涼しくしようと姉が庭にホースで水を撒いていた。
私も涼しさを求めて姉が水を撒いている所へ行くと姉が突然「ひぃっ!!」奇声をあげ、何かに怯える様子を見せ始めた。
離れた位置からは判らなかったが「蜂が!」という言葉を聞き、姉が何に怯えているのか理解した。
「はらうな!こっちに来い!」
蜂を刺激しないようにそう言ったが、すでに手遅れだったようだ。
「イッタッ!!」
苦痛な叫び声を上げ、腕を押さえながら駆け足でこちらへ向かってくる。滅多なことでは泣かない姉が涙目になっている姿はある意味レアであったが、そんな冗談を言っている場合ではない。
私も過去刺された事があるので、その苦痛がどれほどのものか理解できる。
すぐに姉に腕を見せてもらうと、そこには小さな針が刺さったままになっていた。
「これ、針残っとるけぇ抜くからじっとしてて」
過去の経験が役に立ったようで、冷静にどう対処すればいいか判断できた。思ったよりすんなり針は抜けてくれたが、毒が残ってたらいけないと思い「ちょっと絞るけぇ、痛いけど我慢してよ」
そう言いながら明らかに人間の体液ではなさそうなものが出てこなくなるまで絞り出し、その後は虫刺されを塗って様子を見る事にした。
幸い、体調が悪くなる様子もなくゴルフボール程の大きさに皮膚が赤く腫れたが数日かけて徐々に治っていった。

「蜂に刺された時の痛みって半端ないね。あん時笑ってほんと悪かった。笑い事じゃないわ。」
自身が経験してようやくあの時笑った事を反省する事ができたようだ。
続けて姉は、「Ranaちゃんが針抜いてくれたり色々やってくれたけぇ、ありがとね」と言ってきた。
別にただ私は私ができる事をしたまでだ。
これは決して照れ隠しではない。

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