大人びた少年にドキッとした話

私の働くお店は、地元では1、2を競うぐらいのまぁまぁ大きなスーパーマーケットだ。
来店されるお客様の年齢層も幅広く、週末や季節ごとのイベント、長期休暇時期などでは多くの家族連れが来店されとても賑わう。
そして、家族連れが増えれば迷子になるお子様も少なからず増えてしまう。
ある日の週末、レジ周りに設置してあるゴミ箱からゴミを収集していると後ろから声をかけられ、振り向くと小学校低学年ぐらいの男の子が立っていた。
「どうしました?」
なるべく姿勢を落とし話しかけると、少年は少し震えた声で話し始める。
「あの僕、迷子になってしまいまして...。母を呼んでもらえないでしょうか?」
年齢にそぐわないとても丁寧な口調でそう話した少年に驚き「迷子なんですか?」となぜか聞き返してしまった。それに対して少年はこちらをまっすぐ見つめながら「はい」と返事をする。その目には、涙がこぼれ落ちそうなほど溜まっていたが、決して泣くまいと堪えるように拳が握られていた。
「では、サービスカウンターで呼び出しをいたしますので一緒に来ていただけますか?」
普段なら子供に対してはもっと砕けた言い方をするのだが、あまりにも大人びた姿勢を見せる少年に対してこちらも大人同様の対応をしていた。
サービスカウンターへ向かい歩き始めると少年はこぼれ落ちそうな涙を腕でさっと拭い、まっすぐに前を向く。

かっこいい....。

そう思うほど少年は凛々しい姿勢を見せていた。
サービスカウンターに到着した時も私が話す前に自ら落ち着いた様子で名前を伝え母を呼んで欲しいという事も伝えていた。
今までにも何人か迷子の対応をした事があるが、こんな子供は初めてだ。
一体どいう教育を受ければこんなにもしっかりとした子が育つのだろうかと感心しながら私が元の業務へと戻る途中、アナウンスが流れ始めた。
迷子案内の放送後すぐにご家族が迎えにやってきた。
どうやら兄弟も一緒に来ていたらしい。
そこでようやく少年は子供らしい姿を見せた。

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