マガジンのカバー画像

どついたるねん。

100
きっと仕事のためにはならないでしょうが、暇つぶしにはなるかと思います。そんな、エッセイです。(2019/10/1〜2021/5/23)
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

冷汁の食べ方がわからない

やよい軒には、毎年夏の限定メニューがある。 「冷汁ととり天の定食」だ。 写真に映る、氷の浮かんだ味噌仕立ての汁の清涼感にいつも惹かれるのだが、いまだもって、食べ方がまったく分からないでいる。 分からないなら、注文をしなければいい。それは分かっている。 それなのに、写真の清涼感と一緒についてくる「とり天」の魅力に負けて、毎年一回は注文してその都度後悔してしまう。 たちがわるいのは、券売機で食券を買うときは、食べ方が分からないことを都合よく忘れていることだ。 そして、

ガセネタとサムズアップ

昨年、私の勤める会社ではチャットアプリを全社的に導入した。 導入当初は戸惑いや反発こそあったものの、数ヶ月経った頃にはほとんどの社員が利用するようになっていた。 営業のハウツーや最新技術動向など、種類を問わず耳寄りの情報を共有するチャンネルは、「学び」があるとして評判だった。 今年の二月頃のことだ。 私は出社してパソコンを起動し、くだんのチャットアプリを開いた。 社内全体向けの情報共有チャンネルに、新着投稿の通知があった。 それはご丁寧にもチャンネル全体にメンショ

「ディープな会」

ある日残業をしていると、別の部署の部長に話しかけられた。 「あんさあ――」と彼はチョイワル風にこう切り出した。 「今からディープな会やんだけどさ、来る?」 当時、私の部長と彼は仲良さそうに話すことが増えていた。 おそらくそれで飲みに行き、その場でアイデアが降ってきたのだろう。 そして、アイデアはすぐに実践するのが、現代のビジネスパーソンだと息巻いたのだろう。 彼らは、社内でイベントを開催することに決めた。 彼に話しかけれたとき、ああ、そういえばあのイベントって今

お前も「可愛い」って思うんだな

新入社員研修の帰りに同期の何人かで飲みに行った。 会社の最寄り駅を通る路線にあるちょっとした大きな駅の近くにあった、海鮮系の居酒屋だった。 店に入るなり、私たちは入口付近の席を案内された。 めいめいが座って最初の飲み物を決めながら談笑していると、女性の店員がお通しを持ってきた。 小鉢を置き、「オーダー決まりましたらお呼びください」と言い残して去っていった。 お通しの入った小鉢を各人に配っていると、隣に座っていた藤沼に「なあ」と話しかけられた。 「なに?」と私が応じ

特別定額給付金を受け取れる気がしない

ある日ポストを見たら、自治体から特別定額給付金の申請用紙が入った封筒が届いていた。 それを見たとき、私は「ちゃんともらえるだろうか」と不安を覚えた。 行政への不信ゆえではない。私が、お金にまつわることが極めて苦手だからである。 昔から、「お金儲け」とか「ビジネス」みたいなものは苦手だった。 小学生の頃から、自分が会社員として働ける気はしなかったし、かと言って他の職業で食べていけるほど、自信や夢を持てるものもなかった。 そうであればこそ、生き残るためのファイナンシャル

従兄の子供に人見知りしてしまう

私には歳の離れた従兄がいる。 子供の頃から、主に盆と正月に親戚が集まるときに会っていて、向こうが年上ということもあって、私はよく遊んでもらっていた。 しかし、私が思春期に突入したあたりで、従兄もちょうど就職し、もともと年に数回しか会わなかったのが、いつの間にかもっと会わなくなっていた。 私が高校生の頃だったと思う。その従兄が結婚した。 それからしばらくして、彼のもとに子供が生まれた。 その頃から、従兄は盆と正月に、家族を連れて私の実家を訪ねてくるようになった。 今