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従兄の子供に人見知りしてしまう

私には歳の離れた従兄がいる。

子供の頃から、主に盆と正月に親戚が集まるときに会っていて、向こうが年上ということもあって、私はよく遊んでもらっていた。

しかし、私が思春期に突入したあたりで、従兄もちょうど就職し、もともと年に数回しか会わなかったのが、いつの間にかもっと会わなくなっていた。


私が高校生の頃だったと思う。その従兄が結婚した。

それからしばらくして、彼のもとに子供が生まれた。

その頃から、従兄は盆と正月に、家族を連れて私の実家を訪ねてくるようになった。


今では、従兄の子供も難なく走り回れるぐらいに成長した。

遊びたい盛りのその子は、いつも楽しそうな声を上げてはしゃぎ回る。あるいは、もっと遊びたいのに! とごねる。

その姿に親である従兄とその奥さんは、ちょっと参った表情をする。

一緒に訪ねてくることの多い従兄の両親――私から見た叔父叔母だ――は、「静かにしなさい!」などと怒ってみせてはいるが、その姿にデレデレである。

私の両親も、元気がありすぎる様子に苦言を呈しながらも、結局は終始デレデレである。

そんなとき、決まって私だけはその輪に入れない。

子供の可愛さに騙されないぞ、と粋がっているわけではない。子供はうるさくて嫌いだ! と、その場で不機嫌になっているわけでもない。

子供に人見知りしてしまって、否応なく子供が中心になるその場の空気に混じれないのだ。


なにか話しかけたほうがいいだろうか?

そう逡巡するも、いったいどう話しかければいいか見当がつかず、オロオロしたまま黙ってしまう。

それに、どうやら子供の方も、滅多に見かけないがときどき現れる得体のしれぬ私を警戒しているようなのだ。

「お話聞かせて」もできそうにないし、並の話題では警戒心の檻から出てきてくれそうにない。

そのことが、私のオロオロを加速させる。


「幼稚園はどう? 楽しい?」とか、その小学校版がいわゆる「王道」なのだろうが、先述の通り、それに食いつてくれるとは考えづらい。

それに、そもそも接していなさすぎて、その子が幼稚園児なのか小学生なのかも私には分からないのだ。

加えて私自身は小学校が全然楽しくなかったので「楽しい?」と訊ねるのは、なんだか欺瞞的だからしたくない。

しかし、反対に「つまんない?」と訊くのもあまり良くないだろう。

ネガティブな質問だし、親のいる場で学校や幼稚園について「つまらない」とコメントするのは控えたほうが懸命だ。


いっそ、仮面ライダーとかプリキュアの話をすればよいのだろうか?

ニチアサオタクほどは語れないだろうが、過去作などについて、それなりに知識量はある気がする。

しかし――特に地方都市の――親戚の大人の前で、会社勤めをする男性がそんな話にちゃんとついていけることは、心証を極めて悪くする。

それに、大人になってもそういう番組見てるなんて……と、当の子供たちこそ冷徹にドン引きしてしまうかもしれない。そうすると、人見知りしてそ輪に溶け込めない問題を解決し、打ち解けることが更に困難になる。

だから、この話題もご法度だ。


そうして色々と考えれば考えるほど、従兄の子供にどう接すればいいかわからなくなり、オロオロしてしまい、結局打ち解けることができない。

子供が道路に飛び出しかけて、それを止めようとしたところ「は? 邪魔」という冷たい目をされる程度の距離感でしか接することができない。

私は、従兄の齢一桁の子供に人見知りしている。

次に会うときは、もっとちゃんとお話できるだろうか。

いつになるかわからないし、何を話せばいいのか、やっぱり皆目見当がつかないけれど。


【今回の一曲】

SUPER BUTTER DOG/コミュニケーション・ブレイクダンス(2000年)


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