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特別定額給付金を受け取れる気がしない

ある日ポストを見たら、自治体から特別定額給付金の申請用紙が入った封筒が届いていた。

それを見たとき、私は「ちゃんともらえるだろうか」と不安を覚えた。

行政への不信ゆえではない。私が、お金にまつわることが極めて苦手だからである。


昔から、「お金儲け」とか「ビジネス」みたいなものは苦手だった。

小学生の頃から、自分が会社員として働ける気はしなかったし、かと言って他の職業で食べていけるほど、自信や夢を持てるものもなかった。

そうであればこそ、生き残るためのファイナンシャル・プランニングが大事なのだろうが、当時の私は「儲けること」とか「資産形成」みたいなものの話を避けるようになっていた。

それらは当時メディアを賑わしていた気鋭のIT社長や投資家らのイメージと結びついていて、そして私は彼らのガツガツした雰囲気が苦手だった。

この傾向は大学受験を経てより強まるのだが、これについて述べると長くなるため、今回は触れるに止める。

要するに、私はお金に関することに苦手意識がある、ということだ。


とはいえ、私ももう大人だ。

もう「お金のことは苦手で」とばかりも言っていられない。

収入はできるだけあったほうがよいのだろうし、貯金もしっかりしないといけないし、何らかの資産運用もしたほうが良いのだろう。それは重々承知している。

しかし、これを学んでおけば年収が上がる可能性が高いと分かっていてもそれを勉強を頑張る気は一切起きないし、生活用と貯金用で口座を分ける気も起きない。確定拠出年金は今いくらになっているのか見たこともない。

報酬系がちゃんとしていないのか性格なのか、お金に関するズボラさは、この歳になっても相変わらずだ。


作ったまま存在を忘れたクレジットカードが何枚かあって、それらはまったく使わないまま年会費を少しずつだが取られてしまっている。

作ったまま全く使用せず、また1円も入金されていない口座がある。先述のカードにはその口座を指定したものがあったはずだから、もしかしたら年会費が払えていないかもしれない。

クレジットカードのポイントとかマイルとか言われても、何のことかよく分からないし、どうお得なのかもピンと来ない。公共料金の支払いも、口座引き落としのままで、クレジットカード払いに変えていない。


少しはお金の管理をしようとマネーフォワードを使い始めてみたが、給与振り込み用の口座の接続情報が分からず連携に失敗し続けている。

クレジットカードの情報は連携しているため支出だけはしっかり記録されていて、だからいつも収支は大幅なマイナスだ。

しかも日常の支払いには現金を使うことが多いため、その支出すら全部を追いきれていない。レシートはいつの間にか何処かにいってしまうので、アプリで読み込むことも当然できない。


これらの課題のほとんどは、ちゃんと手続きをすれば済む話なのだ。

口座の接続情報は、まあ窓口に行けば最悪なんとかなるだろうし、現金支払いが多い件も、PayPayなどを使えば幾分かは解決するはずだ。

未使用のクレジットカードも、公共料金の支払いも――。


特別定額給付金もそうだ。

ただちゃんと申請さえすればいい。

しかし、簡単なはずの、それだけのことができない気がしてしまって仕方がない。

お金への苦手意識が強すぎて、頭がパンクしてしまう。

私は10万円をちゃんと受け取ることができるだろうか。

申請書の入った封筒は、積み重ねられた本の下敷きになっている。


【今回の一曲】

SAKANAMON/ハロ(2011年)



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