見出し画像

雨が印象的な映画5選

今年も冷たい雨が降りしきる「梅雨」の時期に突入した。
天気が良くないと、気分まで落ち込んでしまうもの。しかし、そんな時期だからこそ、あえて「雨が印象的な映画」を観て、滅入った気分を洗い流そうではないか!
毎年、紫陽花が咲き誇るこの時期になると、少し落ち込んだ気持ちになってしまう。
太陽がまぶしい晴れ渡った夏に片足を突っ込んだ状態のジメジメとした毎日。
「梅雨」は、最高の夏を迎えるための準備期間であり、我慢の時であると思っている。
しかしながら、映画の中の「雨」というのは、物語をドラマチックに魅せる最高の演出でもあるのだ。
ここでは、そんな「雨が印象的な映画」を紹介しよう!


『雨に唄えば』(1952)

「雨が印象的な映画」として真っ先に思い浮かぶ作品が『雨に唄えば』(1952)だ。
もはやタイトルに「雨」の一文字が入っている時点で外せない作品であることは間違いない。

サイレント映画全盛の時代を舞台に、映画スターのドン(ジーン・ケリー)とリナ・ラモント(ジーン・ヘイゲン)は、誰もが羨むカップル同士であった。しかし、実際はリナのドンに対する一方的な恋心であり、ドンは舞台女優を自称する新人キャシー(デビー・レイノルズ)と恋に落ちてしまう。やがて、時代はサイレント映画からトーキー映画へと移行するようになっていき、ハリウッドに新たな波が押し寄せてくるのだった……。、

数多くのハリウッドスターたちにも大きな影響を与えた作品であり、まさにミュージカル映画の傑作と呼ぶに相応しい一本。
いまから約70年前に製作された映画であるが、全くもって古臭く感じる部分はなく、むしろコメディ要素が強いミュージカル映画として新鮮味すら覚える次第。
名優ジーン・ケリーが圧倒的パフォーマンスを披露する‘‘Singin'in the Rain''は圧巻で、今なお語り継がれる伝説の名場面だ。
大雨の中、外に出て、傘を片手に真似をしたというファンも少なくない。

『シェルブールの雨傘』(1964)

「雨が印象的な映画」の中には、意外にもミュージカルが多い。『雨に唄えば』と並んで、名作ミュージカルの一つとして数えられているフランス映画『シェルブールの雨傘』(1964)もその一つである。

港町シェルブールで暮らす20歳の青年ギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)と17歳のジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は深く愛し合っていた。結婚を約束し合った関係であったが、アルジェリア戦争真っ只中のフランスでは20歳の青年には兵役の義務が課されており、2人は離れ離れにならなくてはならず……。

三部構成で繰り広げられる一組の恋人たちの一大叙事詩と言っても過言ではない。
恋の始まり、終わり、そして再会と、それぞれ一つのテーマに重きを置き、戦火の渦に翻弄される切なき悲恋を感情表現豊かに映しだしている作品である。
その中で上手く作用しているのが、やはり「雨」の場面だ。
「雨」という自然現象が、物語をより情感たっぷりに魅せる役割を果たしており、タイトルにもある「雨傘」が非常に活きる。
映画全体を彩る色彩豊かな映像美によって、主演のカトリーヌ・ドヌーヴの美しさも映えている。

『ショーシャンクの空に』(1994)

映画における「雨」で最も有名なワンシーンと言っても過言ではないのが、1994年公開のフランク・ダラボン監督作『ショーシャンクの空に』だ。

ショーシャンク刑務所を舞台に、人間関係を通して、冤罪によって投獄された有能な銀行員アンディ(ティム・ロビンス)が、腐敗した刑務所の中でも希望を捨てず生き抜いていく姿を描く。

‘‘モダン・ホラーの帝王’’スティーブン・キングの中編小説を原作としている作品なのだが、実はキング作品は「雨」が物語のキーポイントとなることが多い。
日本でも大ヒットを記録した『IT イット ‘‘それ''が見えたら、終わり。』(2017)などもその代表例だが、この『ショーシャンクの空に』でも「雨」が最も重要な役割を果たしている。もはや「雨」が主役なのではないかとさえ思わせる。
主人公のアンディが降りしきる雨の中、天に顔を向け、全身で雨を感じる場面は、映画史に残る感動の名場面である。

『ジュラシック・パーク』(1993)

ここまではラブストーリーを中心としたミュージカル映画や人間ドラマの「雨」に注目してきたが、ここで少し寄り道をしてみよう。
実はスティーヴン・スピルバーグ監督の恐竜映画『ジュラシック・パーク』(1993)にも「雨」が印象的な場面がある。

絶滅したはずの恐竜たちが現代の技術によって蘇った。ハモンド財団創始者のジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)は、テーマパーク「ジュラシック・パーク」を作り出す。しかし、これが悪夢の始まりであり、パーク内の恐竜たちが檻から飛び出し、人間に襲い掛かるのだった……。

愚かな人間の所業を嘲笑うかのように、恐竜たちが暴走するSFパニックとして、今なおシリーズが続いている本作だが、実は映画の中盤で「雨」が恐怖を増大させている場面がある。
それは嵐の中で、黄色いレインコートを身に纏ったエンジニアのデニスがディロフォサウルスに襲われる場面から、ティラノサウルスが主人公のアラン・グラントを襲う一連のシークエンスだ。
「雨」が大量に降っている中だからこそ、足場がぬかるみ、思うように逃げ切ることができない。これが、より観客をハラハラドキドキさせるのである。
本作最大の目玉であるティラノサウルスの恐怖というのは、「雨」によって活かされている部分も大きい。

『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)

さてさて、一度、大迫力の「雨」をご堪能いただいたところで、またドラマ作品へと進路を切り替えよう。
ここまで4作品を紹介してきたが、どれも20年以上前の作品ばかりだった。しかしながら、最近の映画にも「雨」が印象を残す作品は数多くある。中でも、全世界で社会現象を巻き起こした『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)は強烈だった。

1970年、ロンドン。のちに伝説のバンド‘‘QUEEN’’のボーカリストとして世界にその名を轟かすフレディ・マーキュリーことファルーク・バルサラ(ラミ・マレック)は、ある日訪れたクラブで聴き惚れたバンドに自らを売り込み、ボーカルとして加入。これが、‘‘QUEEN’’の始まりだった。この日からフレディ・マーキュリーの伝説が幕を開ける……。

伝説のロックバンド‘‘QUEEN’’のボーカリストであるフレディ・マーキュリーを主人公に繰り広げられる本作で、「雨」は重要な役割を果たす。
物語がクライマックスへと差し掛かる一歩前。マネージャーのポールと関係を持つフレディは、独り善がりな行動でメンバーとの絆を絶たれ、退廃的な生活を送っていた。そんな時に訪れたかつての恋人メアリーに説得され、ライブエイドへの参加を決める場面。
ここで「雨」が降りしきる中、フレディは大きな決断を下す。まるで「雨」がフレディに取りついた悪いものを洗い流しているようにさえ見えるのだ。そういった点でも、この一連の場面は『ボヘミアン・ラプソディ』を象徴するシーンの一つかもしれない。

梅雨だからこそ、あえて「雨が印象的な映画」を鑑賞して、滅入った気分を洗い流そう。
これらの作品を観れば、もしかしたら「雨」が少し好きになるかもしれない。
なかなか外出できないこともあり、季節感が鈍っている人にも、映画の中の「雨」で梅雨を体感していただけたら幸いだ。

(文・構成:zash)

この記事が参加している募集

#雨の日をたのしく

17,049件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?