リーダーが”育たない組織”から”育つ組織”へ変革するための考察
今回のnoteは組織の中にリーダーがいないと感じている経営者やマネージャー、人材育成担当向けに「リーダーが育たない組織から育つ組織になるために必要な事」を書きました。
最初に結論です。
「リーダー育成パート」「環境変革パート」この2つの視点を持っていないと「リーダーが"育たない組織"から"育つ組織"」に変革はできない。
そして「環境変革パート」の方を先にやらないといけない。
また今回noteを公開する前に、大学で教員をしている方や経営者、リーダー育成を実際に考えている、ミッションとして持っている方などに、本noteを事前共有しフィードバックを頂きました。さらに2月6日にリーダー育成関連のセミナーで登壇したときにも本noteの概要を3分程度ですがプレゼンを行い、そこでの反応も加味し内容を調整しての投稿です。
それでは、よろしくおねがいします。
はじめに
「リーダーがいない!」
急激に変化する時代に対応するには、従来型のピラミッド構造に最適化されたマネジメント手法では難しい。臨機応変に社内外を自由に越境し様々なシーンに対応できるリーダーが欲しい。
だけど、現状の組織にはそんなリーダーがいない。
お手本になるリーダーがいないから、育てる方法もわからない。
「リーダーが育たない組織」。
組織を変えないと生き残れない。
「リーダーが育つ組織」に変革しないと生き残れない。
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【全体図】変革するために必要な視点とそれぞれの関係図
<図解1>
リーダーが"育たない組織"から"育つ組織"に変革するためには2つのパートが必要。
1.リーダー候補生を教育してリーダーに育てる「リーダー育成パート」
1-1.リーダー候補生を選出
1-2.リーダー候補生のスキル向上
1-3.自分中心でリーダーとは何かを考える
1-4.リーダーシップを発揮してプロジェクト推進
2.組織の環境を整備し変えていく「環境変革パート」
2-1.リーダーシップが活きるプロセスを整備
2-2.モチベーションマネジメント
2-3.活動を社内へ発信
2-4.活動を社外へ発信
「リーダー育成パート」「環境変革パート」この2つの視点を持っていないと「リーダーが"育たない組織"から"育つ組織"」に変革はできない。
例えば「リーダー育成の研修を受けて、ある程度スキルを覚えた。だけどスキルを使うシーンがなかった。」「研修受けてレポート出して終わり」「リーダー育成とは名ばかりの、背中を見て覚えろ的なOJT」、いずれも良く聞く話。
言いたいのは「人だけ育てても、受け入れる環境が無いと駄目」と言うこと。
とある企業の「リーダー育成」の話(よく聞く話)
大体「リーダー育成パート」部分だけ。
・HR部門の育成担当による研修プログラムを実施。
・外部の研修会社に育成を発注。
・組織上のマネージャーがOJT。
そもそも育成担当の職務・概念がない場合もある。採用担当のが兼務している場合も多いのではないか?
<noteで強く伝えたいメッセージ。>
もちろん「リーダー育成パート」は大事。
しかし「環境変革パート」の方がもっと大事。
つまり個人に依存するリーダーシップ育成の前に受け入れる土壌を先に整備。リーダーが活躍できる環境を作る。
「環境変革パート」は組織トップの強力な推進力が必要不可欠。そこが無いとできない。組織のプロセスも変えないといけない。そして抵抗勢力も多い。例えば、組織のトップと現場が推進したい!と思っても中間管理職の抵抗が多い。
何度も何度も繰り返します。「リーダーが"育たない組織"から"育つ組織"に変革する」ためには覚悟が必要。
では本題に。8つの視点を説明します。
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リーダーを育成するための4つの視点
【視点1-1】リーダー候補生を選出
「リーダーが育つ組織」への変革の一翼を担う「リーダー候補生」は誰にでもできるものではない。必要な資質がある。
必要な資質
・素直
・真面目
・ポジティブさ
・コミュニケーション能力
・行動力
それぞれレベルが高い方がもちろん良い。しかしそんな都合の良い人材は中々いない。そんな人材の選出は難しいから現実的にはポテンシャルを見る。
そもそも論ですが、そんなポテンシャルの高い人材はすでにリーダーやっているハズ。しかし本noteのテーマはリーダーが”育たない組織”から”育つ組織”へ変革。
なのでそういうポテンシャルが高い人材は組織の中に埋もれていると想像できるし、そういう前提でnoteを書いています。
逆の視点から捉えれば
・素直でない人は駄目、斜に構える人は駄目
・不真面目は人は駄目、例えば遅刻常習犯は絶対駄目
・ネガティブな人は駄目、ネガティブは周りに伝染する
・人が嫌いな人は駄目、リーダーにとってコミュニケーション力はとても大事
・指示待ち人間は駄目、リーダーは導く人
あと、組織でとても偉い人は駄目。なぜなら既にリーダーのポジション。別の見方をすれば「リーダーが育たない組織」を作っている戦犯の1人なので「リーダー候補生」には相応しくない。それでも「リーダー候補生」にするなら部下が1人もいない、ただの平社員に戻す。組織の権限を外す程度の荒療治は必要。
具体的にイメージするとこんな人が良い。
・部下が2から5人程度の小さな組織のマネージャーをやっている。
・プロジェクトをリーダーの立場で複数回経験している。
「リーダー候補生」は「リーダーが育つ組織」への変革の一翼を担う人なので、しっかりと選ばないといけない。
5つの要素が必要。それはポテンシャルでもよい。
・素直
・真面目
・ポジティブさ
・コミュニケーション能力
・行動力
【視点1-2】リーダー候補生のスキル向上
「リーダー候補生」に、まず基本的なスキルを知識として学んでもらう。基礎は大事。
まさに守破離の「守」
知識として押さえたいのはこちら
1)プロジェクトの特性
・プロジェクトの難しさの理解
・プロジェクトの定義
・定常業務との違い
2)プロジェクトに必要なテクニック
・WBS(Work Breakdown Structure)
・プレゼン資料の作り方
・プレゼンの発表の練習
3)チームビルディングについて知る
・タックマンモデル
・チームとグループ
・ボスとリーダー
4)会議と会議ファシリテーションについて
・会議の種類
・会議の役割(ファシリテーターや議事録係、スクライバーなど)
・上手く会議を進めるためのテクニック
100%覚えなくてもよい。だが言葉は覚えて欲しい。
実践でないと本当には身につかない。
ただしそういう世界があると知って欲しい。
知っていれば、そういう場面にあったとき「あー」と思える
後で思い出して使える。
本屋で探せる。
つまり
「無知は駄目」
「知識を知らないと成長が遅くなる」
あと我流は駄目。変な癖が付いていたらまず直す。「リーダー候補生」に必要な資質の「素直」がとても大事。その後の成長に大きな影響があります。
【視点1-3】自分中心でリーダーとは何かを考える
考える順番、問いの順番。
1)リーダーシップについて考える。
殆どの人が、リーダーシップについて考えた経験がない。
考えて!と質問すると、リーダーシップではなく組織のマネジメントについて考え始める。
いやいや組織の中のマネジメントでなくてリーダーシップ。
まずはお手本にしたい人がいるか?
その人はどんなリーダーシップ?
2)自分のリーダーシップを考える。
リーダーシップについてまず身に着けて欲しいのは
「考え方・振る舞い方」
それには自分自身がどう成りたいか?
自分中心
組織・会社が変わっても、変わらない
自分のリーダーシップを考えよう。
3)組織の中のリーダーシップを考える。
自分中心のリーダーシップを考えた後で、組織の中でのリーダーシップを考える。周辺のメンバーの顔をイメージしながら、自分のリーダーシップが上手く機能できるか、どうか。
4)自分のリーダーシップを宣言する。
最後に自分のリーダーシップを宣言。
宣言といっても、まずは「リーダー育成生」の中だけでよい。
皆でフィードバックし合おう。
参考までに、私のリーダー研修を受けた人の「リーダーシップの宣言」
・メンバーが安心してプロジェクトに専念できる環境をつくるリーダー
・成果にこだわるリーダー
・メンバーの力を引き出せるリーダー
【視点1-4】リーダーシップを発揮してプロジェクト推進
ここは実技研修がよい。リーダー候補生がリーダーシップを発揮してプロジェクトを推進する。
ここで大事なのは、1-2.スキル向上で習った部分をしっかりと実演する。経験をする。
1-3.自分中心で考え、宣言したリーダー像をイメージしながら演じる。最初は難しいから演じるだけでいい。
プロジェクトは小さいもの。
・社外の人を呼んで勉強会を行う。
・小さな課題を改善する。
・社内報をつくる。
・組織の課題を出す。
大体1から3ヶ月の期間で本務と兼業でもいい。
プロジェクトは社内で完結する内容がいい。
実技研修は「手取り足取り」教えたい。
例えば
・企画書を作る。
・プレゼンや会議の練習をする。
・運用ルールを決める。
(WBS、体制図、連絡系統、スケジュール、など)
「背中を見て覚えろ」「千尋の谷に落とす」「現場のマネージャーに丸投げのOJT」ではない。
1)覚えた知識を確認して
2)宣言した自分のリーダーシップをイメージして
3)これまで何となくやっていた仕事を振り返り
「手取り足取り」丁寧にフォローをする。
しっかりと「型」を覚えてもらう。
これは守破離の「守」
リーダーシップは演じるだけでもいい。「手取り足取り」教えたい。
過保護?
いやいや"リーダーが育たない"環境だからね。
これですよ、これ。山本五十六の名言
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。
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リーダーが育つ環境を作るには環境変革が先
【視点2-1】リーダーシップが活きるプロセスを整備
個人ではなく、組織の環境そのものを変える必要がある。
リーダーシップが組織に根付くまでは、慎重にリーダー候補生を守らなければいけない。リーダーシップが活きるプロセスを整備しなければいけない。
例えば、
・既存組織からの分離、役員直属のプロジェクト。
・特別チームを作る。TF(タスクフォース)。
・定常業務と分離、少なくてもちゃんと時間を確保しなければいけない。
・評価のあり方を整備
⇒成功したら評価するでは駄目。
⇒定常業務と同じ尺度にしては駄目。
リーダーシップが活きるプロセスを整備して、リーダー候補生がリーダーシップを発揮してプロジェクト推進できるようにする。後押しする意図があります。
これはプロジェクトの「成功確率を上げる」に繋がります。
成功体験はリーダー候補生にとって最高の成長機会。
【視点2-2】モチベーションマネジメント
長期的な視点でリーダーを育てるのはよい。
ただし、短期的にも成長を実感させて欲しい。
・昨日よりも何が成長したか?
・その成長に、誰が気が付くか?
・誰が伝えるか?
例えば、会議が予定していたアジェンダ通り終わったら褒める。
メンバーをフォローしていたら褒める。
褒めることは難しい。だけどとても大事。
成長に目を向けて欲しい。
出来ない事より、出来る事に注目してほしい。
ポジティブフィードバック。
【視点2-3】活動を社内へ発信
お手本になるリーダーがいないから、育てる方法もわからない。
「リーダーが育たない組織」
この雰囲気を変える1つの方法として有効なのが、リーダーの育成を始めたメッセージを社内にしっかりと広報する。プロセスを整備し始めたと伝える。「変わり始めた」雰囲気作り。
「リーダー候補生」が贔屓、ズルい!と文句をいう人も出てくるかもしれませんが、組織として本気で「リーダー育成」を始めたと伝える。同時に、個人レベルでの「リーダー育成」だけでなく「環境変革パート」も始めていると伝える。
組織が変革を始めている伝える。
組織のトップからメッセージを出す。
【視点2-4】活動を社外へ発信
2-1.リーダーシップが活きるプロセスを整備
2-2.モチベーションマネジメント
2-3.活動を社内へ発信
これらが出来てきたら、その内容をしっかりと社外にプレゼンして欲しい。
最初は自社で、採用イベントと絡めて「〇〇会社のリーダー育成プログラムについて」とセミナーをやる。
社外向けブログを作る。noteを書く。
PR系のメディアに乗せる。
WANTEDLYなどに記事を載せる。
いろいろな方法がある。
何らかの外向けの広報活動をして欲しい。
やがて社外からポジティブな声が聞こえてくる。
例えば、メルカリは積極的に社員を社外に発信。社外活動に後押しをしているイメージがあります。費用対効果など、私にはわかりませんが、一般社員でも積極的にブログや外部での登壇を行っている。これ凄いと思います。
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リーダーが育つ組織
環境変革パートを先行し、リーダー育成パートを推進すると(おそらくは)高確率で以下の効果が得られる。
<図解1の下の部分>
リーダーが育つ組織
リーダーとして社内で認められる。
・リーダーは他人から認められるもの。まずは社内から。
・そして社内のロールモデルになる。
リーダーとして社外でも認められる。
・社外からもリーダーとして認められる。
・〇〇会社には、〇〇さんがいる。是非一緒に働きたい。
リーダーが育つ組織
・ここまでくればリーダーは育ち始める。
・そして育つ組織は勝手に自走する。
リーダーが育つ組織はエンゲージメントも高く、採用力も強い
"リーダーが育つ組織"へ変革を進めると、エンゲージメントも高くなり、採用力も強くなる。
<エンゲージメントの一番好きな定義>
社員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」を表すものと解釈されますが、より踏み込んだ考え方としては、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」のことをいいます。
日本の人事部
リーダーが育つ組織とは、多分こういう循環が生まれる事かなと。
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まとめ
従来型の「リーダー育成」の多くは個人の成長に注力している。しかし
リーダーが”育たない組織”なら、最初に手を付けるのは「環境変革」から。
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参考論文
ハーバードビジネスレビュー 2017年04月号(人材育成)に「変化を阻む6つの障壁を乗り越えろ、リーダー研修はなぜ現場で活かされないのか」の論文は参考になります。
能力開発に関する誤った前提を捨てる
一般的な論理組織の行動やパフォーマンスに関する問題の原因は、 個人の能力不足にある。社員の知識、スキル、態度を改善することで、組織の有効性やパフォーマンスが強化される。
したがって
変革と開発の対象は個人である。
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より有効な理論
組織の行動やパフォーマンスに関する問題の原因は、システムの設計や運営上の不備にある。
新たな行動を支援し要求するようなシステムに変えることで、学習が促され、有効性とパフォーマンスが改善する。
したがって
変革と開発の最初の対象は組織であり、その次が個人に対する研修である。
6つの基本ステップからなる人材開発のアプローチ
1. 上級幹部チームが、価値観と、社員を触発するような戦略的方向性を明確に定義する。
2. 上級幹部チームが、マネジャーや社員から率直な意見や知見を匿名で収集し、戦略の実行や学びを妨げる障壁を特定する。その後、それらの障壁を克服して変革の意欲を高められるように、組織の役割、責任、人間関係を再設計する。
3. 日常的なコーチングやプロセス・コンサルテーションにより、新たな組織設計の中で社員がより効果的に活躍できるよう 支援する。
4. 必要に応じて研修を行う。
5. 個人や組織のパフォーマンスに関する新たな測定指標を用いて、行動面での変化の進み具合を評価する。
6. 組織の行動の変化を反映し維持できるように、人材の選抜、評価、開発、昇進の「仕組みを調整する。