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夫が自分の一周忌に寿司屋に連れて行ってくれた話

昨年脳腫瘍で亡くなった夫の命日がやってきた。

自分がどんな気持ちでこの日を迎えるのか想像がつかず。
仕事していたい気分なのか、しっぽりしていたいのか、何なのか。

取り合えず、息子もいるし、会社から休暇を取った。
イベントを控えて忙しい時期だが、「夫の一周忌」は相当なキラーワードで(笑)、「それは休め!」と言わんばかりの勢いで休ませてくれた。

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ぽっかり空いた1日。息子をドライブに誘った。

私:新車でドライブ行こうぜぇ~
子:いいねぇ~

成人した息子でも、ドライブ誘ったら前向きに返事をくれることにちょっと嬉しくなった。

高速乗りたいー。高速デビュー!
富士山見たいよね。
漁港でお寿司食べるか!
伊豆かなぁ。
いやいや、海老名SAとかも行きたいよね。
たしかにー。
いっそのこと沼津まで行った方が漁港近そうじゃん。

ということで、沼津に行くことに。

朝、ちょっと早めに出発し、彼のお墓参りをする。
若干しんみりはするが、そこはスタバでコーヒーをゲットすることで復活。80-90年代の曲を流し、他愛の無い話をしながら沼津へ。

沼津ICを降りて一般道に入った瞬間。
すごく見覚えがある道路だった。そう、干物街道(笑)
以前も来た記憶がよみがえった。

そう、一時期、よく伊豆にキャンプに来た頃。
そのキャンプ前後に、漁港でお寿司を食べ、干物を買った。
当時は車にカーナビもなく、私は呑気に助手席でお任せ状態。
それこそ、結婚前、結婚後、出産直後くらいの時期だ。
あれは沼津だったんだー。

懐かしい道を進み、沼津港へ。
そこには、新しい店はあれど、懐かしく見覚えのある飲食店街があった。
駐車場の場所等も全部昔のまま。

懐かしい!を連発しながら、記憶を辿り、以前行ったお寿司屋を探す。
商店街を突き抜けて、右側のお店だったはず。
ゾロゾロとみんなで行って、2階で食べたお寿司屋。

確か、ここだったような・・・
と、お寿司屋さんに入ってみると。

15年近く前と変わらない店内があった。
ここだ。このお店だ。



カウンターに案内され、息子と並んで座る。
目の前にズラッと並ぶ、新鮮なネタ。

15年以上前に仲間と来た。
その後、彼と2人でも来てカウンターで食べた → 思い出した!
その後、赤ちゃんだった息子を連れて、仲間たちとも来た。

そこに、成人した息子と2人で来て、カウンターに座る。
なんという奇遇。

彼が亡くなる前に行きたいところを聞いた時、
「久しぶりに伊豆に行って、旨い寿司を食べたい」
って言っての、ここだったんだ。
伊豆じゃないじゃん!

奇しくもその彼の一周忌。
成長した息子と2人でドライブし、
彼が来たかった店に来て、
彼が食べたかったお寿司を食べる。
そんな偶然ある??

ここのお寿司、食べたかったんだよね。
食べたかったよね。
食べさせて あげたかった。


それを心の中で伝えたら、耐えられず涙が出てきてしまった。
カウンターで、親子で来て、なぜか母はガン泣き(笑)

「やばい、やばいんだけど。どうしようーーー」

と涙が止まらず焦る母を見て、驚きつつ黙って放置してくれた息子。
恥ずかしいからやめろ、とも。
泣くな、とも言わなかった。

お店の人も、息子も、黙って泣かせてくれた。


そして、落ち着いてから息子とたらふくお寿司を食べた。
本当に美味しくて。
本当はランチしながら息子と彼の思い出話でもするイメージだったが、あまりにも美味しすぎて「うまいー!」のオンパレードで終わった(笑)

もちろん、何度か涙と戦いながらではあったが。

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帰宅後、キャンプ仲間にお寿司屋さんの写真と共にLINEをした。
そうしたら、なんと、このお寿司屋さんは彼が幹事だったキャンプの回に、彼が見つけて手配したお店だったらしい。


彼が呼んだらしい沼津。
お蔭さまで、息子とのんびりプチドライブができた。

ただ、期待していたのは青空に映える富士山だったのだけれど。
時折小雨降る曇り空で、その片鱗は欠片も見えなかった。
どうせなら、そこまで準備して欲しかったなー(笑)





呼んでくれてありがとう。
息子くん、寿司屋のカウンターデビューだったよ。
いつの間にか、あなたが好きだったコハダを食べられるようになってたよ。
成長したもんだね。
隣に座るのが、あなたから息子くんに変わった。
あれから、1年だね。

お寿司、美味しかったよ。ありがとう。
でもさ、呼んだなら驕ってよね。
相当高額でビックリしたよ(-_-;)

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