94枚のスライドの顛末
昨年11月に高次脳機能障害について、当事者家族の視点からお話する機会を頂いた。彼の人生を振り返り、色々思い起こしてズタボロになりながらスライドを作り始めたら94枚にもなってしまった、という話。
その顛末を書こうと思っていたのに、どんだけ時間がかかってるんじゃい(笑)
当日は、50名くらいの方がいらしていたと思う。
そして、夫がお世話になった病院のリハ科の先生、終末期の在宅医療の先生、ケアマネさん、訪リハさんも駆けつけてくれた。
彼のことでお世話になり始めてから、ほぼ毎日連絡を取って、毎日大騒ぎをしていた方々との再会。「うわー、お久しぶりです!お元気でしたか??」と、ちょっとした同窓会のようになっていた。
そして、講演。
「講演時間は90分」と頭に刷り込まれていて、「スライド94枚=1枚1分弱」という計算にしていたのだが、当日はもちろん主催者のご挨拶もあり、Q&Aもある。私が話すパートは正味60分程度しかないことに気が付いた(!!)
いや、確かにそんな風な時間配分は頂いていたかもしれない。
しかも、頭では分かっていても実感を伴って「これはマズいぞ」と思ったのは話し始めて後半になってからだった。
何しろ闘病生活20年以上が分かるようにスライドを準備したので、カットするところが思いつかない(笑)
結果的に、Q&Aもなく、時間目いっぱい、喋りつくしてしまった。
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参加されていた方には福祉関係者はもちろん、当事者も、ご家族もいた。
話している間に、色々なところからすすり泣きが聞こえてきた。
ハンカチやタオル片手にガン泣きしている人もいた。
「分かるわかる、そうなの!」と言わんばかりに頭をブンブン縦に振って聞いてくださる人もいた。
「ほーーー、そういうことか」と一生懸命メモを取る人もいた。
当事者さんなのか、辛そうな表情をしている人もいた。
高次脳機能障害の「お困りごと」は人によっても違うし、障害の理解度によっても受け止め方が異なる。だから、話しても空しくなることがあるのだが、この場はある程度関係者が集まっているからか、妙な一体感があった。
当事者が聞いていて辛いところもあるかもしれないが、オブラートに包むことなく、正直にちゃんと話そう、と決めていた。
夫の終末期に関わっていてくれた人には、彼はこういう人生を歩んだ人だったんだよ、と伝わることを願いながら話した。
話している途中で泣くかな、と思ったが、そんなことはなかった。
さすが、その辺はプロだった → 自画自賛(笑)
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この講演会には、私の元上司も聞きに来てくれていた。
当時の上司はとても私を可愛がってくれていて、ある意味とても良い上司部下のコンビだった。大好きな会社で、そのまま働いていたかった。
でも夫のこと、その他色々あって精神的に辛くなって退職をした。
当時、夫に対する違和感については誰にも分かってもらえず、上司にも結局伝えなかった。そして、転職を理由に退職届を受け取ってもらった。
でも、お世話になったのに嘘をつくのが心苦しくて、退職日直前に本当の退職理由を簡単に告げた。
その時、「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?今それを聞いても私には何もできないじゃない!」と半泣きで言われたことは未だに強く覚えている。
その彼女と、講演会終了後にお茶をした。
講演会に来てもらったことで、初めて私が仕事をしながらどんな日々を過ごしていたのか、なぜ退職したのかを伝えることが出来た。
こうやって、色々と蟠っていたことが解けていった時間だった。
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そしてその夜。
彼が亡くなってから、おそらく初めて
彼はどうしてるかな。会いたいなと思った。
人生に影響を与えるロスのうち、子どもと配偶者の死別というのはよく聞く話だ。配偶者の死別でボロボロになる人もいるだろう。
でも、我が家の場合は予期された死別であり、しかも本人も苦しまず、これ以上ない完璧(?)な最期だったから悔いもない。
そして、私が彼に依存していたかというとそんなことはなく、色々あった我が家であったこともあり、激しいロス、というのは正直なかった。
だから、そりゃあ泣くのは泣いたが、恋しくて泣く、とか会いたくて泣く、というのとは違っていた。
「ダンナさんを亡くして、相当心身ともに落ち込んでいることでしょう、それを敢えて元気に振舞っていて・・・」的なモードで慰められると戸惑っていた(笑) だって、元気で仕事もしてるし、飲み歩いてもいるもん。
そんな私だが、94枚分も彼のことを書いて、90分も一方的に彼のことを喋り倒して、どれだけ大変だったかを訴えて、それを高次脳機能障害について理解がある人に泣いたりしながら聞いてもらって、大変だった日々を心から理解してもらえて。
なんか、そんなことを目いっぱいやったら、何かがストンと落ちた気がした。
そして、すごーく素直に、「ね、今どうしてる?」と彼に会いたいなという感情が湧き上がってきた。
何となく、恋愛感情というよりは、懐かしい人に会いたいに近い感じかもしれないが。
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後日、講演のアンケートが送られてきた。ポイントだけ書くとこんな感じでシンプルだが、長文で感想を書いてくださった方が沢山いて、それを読むだけで泣けたし、話をして良かったと思った。
すごく分かりやすかった、勉強になった、もっと聞きたかった
脳の損傷で起こることの具体的なイメージがわいた
寄り添うことを心掛けているが、感情のレベルで「分かる」ことの難しさを感じた
共感すると共に学ぶことが多かった
同じ病気を持ったばかりの当事者家族なので、辛かった
家族にこんな思いをさせているのかと思うと辛かった(当事者)
支える側の気持ちの持ちようが分かった
「福祉関係の講演を数多く拝聴しておりますが、本講演が今年ベストでした。」と書いてくださった方がいて、とても嬉しかった(笑)
いえ~い!(*^^)v
これが何かを変えるとは思っていない。
でも、今後も機会があれば、呼んでいただけるのであれば、
せっかく準備した94枚のスライド、再利用したいなぁと思う。
調子どうですか?
お元気ですか?
年が明けて、もう「去年のこと」ではなくなったんだね。
時が過ぎるのは早いものだね。
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