没後の身体を役立ててもらえる「ブレインバンク」

脳腫瘍で亡くなった夫の病理解剖の結果について説明を受けてきた。
夫は脳腫瘍の20年選手で、最初に脳に2箇所腫瘍があった。
そして最後に小脳に腫瘍が出来て、それで亡くなった。

彼の身体は、亡くなった数時間後には「ブレインバンク」に提供した。
ブレインバンクとは、脳や神経・筋肉の病気の研究を進めるために死後に脳を寄附できるところだ。
病気でも病気でなくても、若くてもそうでなくてもOK。
色々な方の脳情報を集めている(が、生前登録が必要)。

通常、没後に身体を寄附しようと思った場合、例えば大学病院で入院中に亡くなったケース等は上手くいく。ただ、我が家のように在宅医療で自宅看取りのケースだと引き受けてくれるところの連携が必要となる。

少しでも終活や自分の没後の医療への貢献に関心がある人は見て欲しい。
骨になってしまう前に、社会に貢献できると行為と思っている。

★献脳生前登録ブレインバンク(略して「ブレインバンク」)★
https://www.brain-bank.org/project/about.html

ちなみに、登録をしておくだけではダメ。
それをしていることを、連絡先とともに家族等にも伝えておくことが大切。

そして、もし、亡くなった後に家族が身体の寄附を希望しなければいつでも辞退はできる。

なお、身体を預けるのは1日かかるが、その後、身体は返ってくる。
確かに、解剖をするために切除した痕は残っているが、見た目ではあまり分からないくらいキレイに処置をしてくれる。

これは人の倫理観にもよるので、何が正しいはないが、ちょっとでも終活の一環として考えたら、是非、サイトを覗いてみて欲しいと思う。

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ということで、彼が亡くなった夜に身体を引き渡しに行った病院(ブレインバンクがあるところ)に半年以上ぶりに行った。
実際は諸事情により社会人としてあるまじき大遅刻をして焦って到着したので余裕はなかったが(汗)、感慨深い気がした。

病理解剖の結果説明を受けることは必須ではない。
ただ、私はどうしても聞きたくて、熱望していた(笑)。
よって説明の冒頭に、「生々しい写真が出ますが大丈夫ですか?」
と聞かれたが、「むしろそれが見たいのです!」と小躍りした。

20年近く彼は脳腫瘍と一緒に過ごした。
ずっと頭蓋骨に囲まれて見えないけれど悪さをしてきた脳腫瘍。
だから、変な表現だが、やっとその正体を見られるような、ご対面できる感覚だった。

病理解剖をしてくださった先生からは、頭から身体の隅々まで、彼の状態をとても詳しく説明をしてもらった。
もちろん、専門家ではないため、全部は分からないが、どこまで腫瘍が広がっていたのか、どこを圧迫していたのか等、彼の状況を見せてもらえた気がした。そっか、こんなところまで圧迫された状態で頑張ってたんだな。

彼が亡くなった時には35キロ。
2週間程飲まず食わずで生きたので仕方がないが、まさに枯れるように亡くなったのだなとあらためて思った。
内臓に気になる所見はなく、本当に脳腫瘍だけがガンだった人なのだなと思った。

彼の最初の手術の痕、穴をあけて電極を刺して腫瘍の状態を見た2回目の手術の痕。
最初の2つの腫瘍を切除した痕の空間、そして今回の大きな小脳の腫瘍。
素人目に見ても大きいなぁと思った。

彼の頭の中はこんなだったんだな。

最後に脳腫瘍に会うことが出来て、本当にこれで私の仕事は全部終わったな、という気がした。
彼の身体は骨になってしまったし、彼が出来ることは全部やったな、という感じ。

そして、最初に手術してもらった大学病院の方から要望があり、彼の脳の一部が提供されたことを聞き、あぁ、彼はきっと将来の脳腫瘍の解明に貢献できたのだな、と思った。
それがとてもホッとした。

死後に自分の身体を役立てて欲しいと思う人は少なくないと思う。
でも、それをどうやったら良いのか。
何となく躊躇する人も多いと思う。

誕生日とか、記念日とか。
希望があるならば。
前向きな気持ちで確実に希望が成し遂げられるようにして欲しいと思う。





色んな人が関わって、解剖してくれたんだね。
みんなが興味もってくれて良かったね。
お役に立てたね!

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