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スペーストラッカー

夕暮れの陽射しに灼かれる
乗り心地の悪いバスの車内
平野
田園風景
延々と続く鉄塔
遠くのコンビナート
風力発電の巨大なプロペラ
反対側の窓からは
山脈が見える
白くて巨大な山脈
突然の頭痛
鉄塔の下を通ると頭痛がする
飛び交うプラズマ
霞む景色
道路の凸凹
舌を噛みそうだ
陽炎が揺れる高速道路
君からの着信を見た
知らない文字の羅列
早く君のところへ帰りたい
ここはなんて広い川なんだろう
トラックと思い込んでいたが
さっきから追い越していくのは
どれもこれも
宇宙船じゃないか
こんなに明るいうちから
宇宙船が走っていくとは
とても珍しいことだ
マレーの獏が減っているとの事なので
おそらくそれが原因なのだろう
夢を見る人が足りないので
眠りを運ばなければならない
なあるほど
眠りを運ぶとなれば
宇宙船はうってつけだ
こんな乗り心地の悪いバスはやめて
宇宙船に乗ればよかった
宇宙船に乗っていれば
幽霊電波やプラズマ酔いに
悩まされずに済んだものを
そうだ
今からでも乗り換えよう
あすこを走る新幹線はどうだ
明日開通予定のはずだが
なあに乗せてもらえるだろう
宇宙船よりも早いという噂だ
そんなことを思っている間に
新幹線は遥か彼方にいなくなった
かくして私はバスにいる
座席に伝わる道路の凹凸に
舌を噛まないよう注意しながら
あゝそうそう
そういえば
例の温泉を掘っていた件だけれど
どうも温度が高すぎるというのだ
まるで金星みたいに
熱いというんだから
湧き出す先からどんどん蒸発だ
これを冷やすのは
ハレー彗星がいいらしいんだが
ほら
氷を吹き出して飛んでいるって話しだ
だけど難しいな
次にやって来るのは二千六十一年だから
もう何日か待たなくては
やれやれ
このバス
いつになったら着くのかな

Selfie : memento morix

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