小鳥

寝てる間に切り取られてた翼では
もう飛ぶことも出来なくなった
鳥籠の鳥以下に成り果てた姿で
意味もなく空ばかり見上げていた
誰もが自由に羽ばたいている頃
私は檻の柵にしがみついていた
逃げ出すには足に繋がれた
錆びた鎖が重すぎて走り出せなかった
翼を切り落とした親鳥は
飛べない我が子を見ては笑って暮らした
他の兄弟は大切にされてたのに
私だけが理由もなく体罰も受けてた
歌うことも許されなかった小鳥は
記憶喪失になりたいと願ってた
小鳥は翼を失ったけど
決して失わないものがひとつだけあった
それは【思いやり】それだけで
この世を渡り歩くしか他になかった
親鳥は利用価値の無くなった小鳥を
見捨てて飛んで行ってしまった
小鳥は大人になりやっと発見された時には
廃人になっていた
そして夜になると訳もなく泣き叫びながら
何年も過ぎていた
大人になった小鳥の心は
傷ついた子供のまま成長できなかった
そんな小鳥を温かく包み込む鳥が現れて
小鳥は初めて気づいた
深い深い愛情と変わらない優しさを持つ人も
この世の中にはいた
こんな私でも少しは生きていても
いいのかもしれないと思った
皆が信じられないと嘆く程
この酷い親鳥の話は言い伝えられた
二度とこんな悲惨な出来事が
起きないようにとの願いが込められた
翼の無い事を哀しむ小鳥の涙は
ガラス玉になり小瓶に入れられた
この小瓶を持ってると
幸せになれると噂があり小鳥は配り歩いた
無力な小鳥はいつも人の為にと
そればかり考えながら暮らしてた
それでも小鳥は何度も屋上から
飛ぼうとして失敗して落ちた
翼があったら落ちずにすむのにと
諦めきれない気持ちでいた
でももう翼は無い
親鳥は立派だった翼を高値で売りとばした
もしも神様がいるのなら
この哀しい小鳥の人生に
かすかでも途絶えない
確かな光を与えてください
もしも神様がいるのなら
この哀しい小鳥の未来に
見たことのない空の色を見せてあげてください

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