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2021年4月の記事一覧

眠っているすずらんを起こさないように。

眠っているすずらんを起こさないように。

世界の果ての町では
すずらんが眠り続けていた。
町のひとたちは
眠っているすずらんを
見ると心が安らいだ。
町のひとたちは
眠っているすずらんを
起こさないように
静かに仕事に出かけ
静かに手紙を出し
静かに料理をつくった。
町のひとたちは
自分のこころの痛みより
眠るすずらんを大切にした。

ポケットの中で庭に触る。

ポケットの中で庭に触る。

クマは
ポケットの中で
庭に触った。
ポケットの中で
海を触った。

悔しいときに。
孤独なときに。

いつでもそっと
手を入れると
温かい雛のように
それはそこにあった。

野うさぎ詩集 発売。

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「野うさぎ詩集」
本日発売。

闇の切れ間の光の森へ。

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romantique 発売。

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「romantique」
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好きな服を着て生きる。
服に救われて生きる。

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生きるために。

生きるために。

こうゆう時でなくても
ずっとやわらかい地獄だと
思っている。

だから自分のこころを守るだけの
呪術を使う。

まったく異なる強い呪術を
二重でかける。

ふたりの頼もしい魔女は
極私的な自由を謳歌している。

常識なんて知ったことか。

不幸なんて知ったことか。

生きるために。

咲くまでもずっと花。

咲くまでもずっと花。

咲く時だけが花ではない。
咲くまでもずっと花。
半年くらい一緒にいた。
球根はおもいのほか深く埋めて。
からっ風の冬を過ごし。
わずかに芽吹いてきた。
こんにちは。がんばれ。がんばれ。
そして満開のときに
いつもおもうのは
もう、お別れだね。
お別れはきれいで
嫌だな。

野原屋さん。

野原屋さん。

世界の果てのある町に
野原屋さんがあった。

土からつくった手づくりの野原を
ちいさな箱に入れて
ひもで結んで売っていた。

町のひとは仕事で疲れた
いちにちの終わりに
おうちで小箱の野原を
そっとひらいた。

町のひとはそれぞれの
野原を大事にしながら
生きた。

この憂鬱な毎日も、幸せにふくまれている。

この憂鬱な毎日も、幸せにふくまれている。

クマが子ぐまに言った。
花は花開いているときだけ
咲いているのではないよ。

寒い冬の夜に球根として眠り
芽を出し、
雨風の中、
葉でつぼみを守りながら
伸びてゆくあいだも
咲くことにふくまれる。

だから、ぼくたちのこの
憂鬱な毎日も
ときどきやってくる
幸せにふくまれている。
きっと。

新作「野うさぎ詩集」予告

新作「野うさぎ詩集」予告

新作「野うさぎ詩集」の予告です。
出演は、ふじやしおりさん。
きれいな鳥の声がします。
144ページ、真四角の写真詩集です。

新作「Romantique」と
4月25日に同時発売します。