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ハレもケもハレ 2 : 「あなたの幸せを思って」と母から言われたけれど

お付き合いをしている彼と同棲を検討し始めたのをきっかけに、人生とは?結婚とは?家族とは?を考え始めた今の心境を書き綴ることにしました。


経緯はこちらから : ハレもケもハレ 0 : 人生の岐路に立っている気がするので、書き記すことにしました。

家探しを始め→問い合わせをし→何気ないふうを装って離れて暮らす両親に電話したところ、母から猛反対を受けたのが前回のハイライト。
今回はその電話のやりとりから、家族とは?幸せとは?と悩んだあれこれのことを書きました。

🕊


「絶対にナシ。同棲するくらいなら結婚しなさい。婚約して両家の挨拶を済ませて入籍の日取りを決めて、それまでの数ヶ月間ならまだしも、とりあえず、なんていうのは絶対にダメ。」

1言ったら150返ってきた、というくらいの勢いで母からピシャリと猛反対を受けた。父の誕生日をお祝いすべく、珍しくビデオ通話にしたのを後悔するくらいに。画面から気持ちと体が遠ざかる。煙草を吸いに離席した父は、まだ戻らない。

「あおいの気持ちもそりゃ分かるよ。楽しい時期だろうし、仕事しながら会うの大変だろうし。一緒に暮らしたら楽しいんだろうなって思う気持ちはわかる。でもね、結婚と同棲はやっぱり違うのよ。
嫌なことがあっても、もう結婚してしまったらどうにかするしかないの。それが結婚ってものなの」

「その、母が言ってる『嫌でもどうにかしなきゃいけなくなるからまず結婚』っていうのが解せないんだけど。嫌だこの人とはやっていけない、と思ったとき結婚する前に違う道をいくために一緒に暮らしたいんだけど」

「それが甘いって言ってるの。第一パパだって反対だと思うし。ねえ?」

「いや…別にパパはあおいが幸せならそれでいいけど」

ほら〜〜〜〜!!!!!!!!!!

戻ってきた父の返答に、思わず電話しながら目をひん剥いてしまうかと思った。絶対父はそう言うと思った。それは無条件に「娘の選択を尊重する」「娘がしたいようにさせてあげる」という履き違えた優しさではない。「もう自立した大人なのだから自己責任」という突き放した優しさである。

話は変わるが、両親は出会ってから両家の挨拶が済むまで2週間しか無かったという。俗に言うスピード婚だ。猛スピードすぎると思う。


話を聞くにわりとプレイガールだった( と、娘が知っているのもどうかと思うけれど ) 母は誰とにおいても付き合いが1年以上続かなかったというし、なんなら両親揃って付き合うことになった直前までそれぞれ付き合っていた人がいたらしい。 

それでも電撃的に知り合い、恋に落ち、結婚を前提に付き合うと決めてお互いの恋人を切り、付き合い、結婚したのだと。挙式まで含めても5ヶ月だったというのだから、スピード婚にも程がある。

「あとすこし付き合いが長かったら別れてたし結婚してなかったと思う。でももう結婚してたから、うまく行かせるしかなかったのよ。紙を挟むっていうのは、そういうことなの」

そんなふうに母は言う。
たしかに昔から聞いてきたエピソードからするに、わりと父は勝手だし、母は母で問題のある人だからきっと多くの衝突を経てきたのだろう。
とはいえ、今が上手くいっているのはただの結果オーライである。出来ることならわたしは「もちろん衝突は沢山するだろうけど、この人とならうまくやっていける」と覚悟を決めた人と結婚したい。たとえもしそれが、今の恋人でなかったとしても。


そんな2人に「結婚と同棲は違う」と言われても、それはさすがに反論したくなるというもので。
人生にやり直しは効かないというけれど、結婚はやり直しが効くと思う。同棲ならもっとだ。たしかにおままごとではないのだから、そうやすやすと始めたり辞めたりできるものではないのは分かっている。

彼は商社の経理、わたしは病院のリハビリ関係という職業柄か、有事を見越した金銭感覚は2人して備わっている。だから明日もし病に倒れて休職するとなっても余裕を持って個室に入院しながらリハビリができるくらいには彼もわたしも貯金している。
とはいえ、それでも同棲する/辞めるで動くお金が簡単に手放せる額ではないことは、嫌でもわかっているのだ。


それでも結婚する前に、一緒に暮らしたい。


ずっと一緒にいられる、という甘やかな気持ちからではなく、この人と本当に日常を重ねられるのかきちんと確かめるために。
話し合ってぶつかって、折り合いをつければ暮らしていけるのか。はたまた重ならないのか。きちんと見極めておきたいし、それ相応の覚悟がほしい。
毎週末仕事終わりに会いに行ってどちらかの家で休日を一緒に過ごすだけでは、見えない部分がありすぎる。

仕事がある日の朝の過ごし方も、タスクが立て込んできたり気が滅入ったりするときの過ごし方も、わたしたちはお互いに知らない。朝なにを食べているか、どんな時に仕事が忙しくなるかは話して把握しているけれど、自身の生活に重なったときにどうなるのかは分からない。

こうして落ち着いて整理すれば言いたいことはまとまるけれど、当時は( どうしてそう真正面から反対するの ) という気持ちばかりが頭のなかを独占してしまって、なにも言えなかった。精神的物理的に傾きすぎて、いよいよ画面からフェードアウトしてしまった。

その間にも「するにしても両家で顔を合わせてからでしょう」「それは婚約と変わらないじゃん…」「でもいずれは結婚するんでしょう?」「だから、そうするか決めるためにまず同棲したいんだって…」とどこまでも言葉の強い母と語気がどんどん弱まるわたしのやりとりは続く。
話を聞いて父までもが「でも男として考えすぎていたかも…たしかに親としては心配」と言い出す次第である。最後まで押し通してくれよ。

だんだん視界がぼやけてきて、フェードアウトしているのをいいことに、目尻をグッと拭う。


あなたの幸せを思って、と言うけれど。
今わたしが今後幸せになるために考えた結論の障壁になっているのは、申し訳ないけど母だ。


でも、大事な存在である両親の意思を振り切ってまで、これまた大事な存在である彼と結婚前に一緒に住みたいという訳ではないのである。


「とりあえず彼とまた話してみなさい」

「ひとまず電話切る前に画面に戻ってきなさい」

と言われて、なんとか顔を引き戻して、泣いたのがバレないようにしながら電話を切った。

今月末でわたし24歳、彼26歳。
結婚するという選択肢が無い訳ではないけれど、あるとは正直言い難い年齢だ。実家の福岡と今住んでいる東京でも、結婚観はすこしズレているように感じる。となるとなおさら結論はまだ出ない。
まだまだ迷走は続きそうである。


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