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"リズム"と"呼吸"という観点から見る心理的安全性の高いコミュ二ティ運営 - デンマークの森のようちえんから学んだこと-

"心理的安全性の高いコミュニティをつくる"

昨今のコミュニティ時代において、おそらくコミュニティに関わる方なら誰しも意識しているであろうこのテーマ。

私も現在3つのコミュニティの運営に携わっている中で、

「いかにこのコミュニティが関わる全ての方にとって居心地が良く、安心してそこにいることができ、さらに自分らしく一緒に成長をしていける場をつくれるだろうか?」

と日々悶々と【心理的安全性】というキーワードとご対面している毎日なのですが、まさか、その実現への新しいヒントをあの場所から学ぶことができるとは思ってもみなかった!

そう、私がかつて訪ね、あまりの居心地の良さと活き活きした子供たちの姿に心を奪われた、"デンマークの森のようちえん" 。
そこに、私の中に今までにはなかった新しいヒントがあったんです。今回はその気づきについて、つらつらと書き留めておこうと思います。


デンマークの森のようちえんとの出会い

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<デンマークの森のようちえんに見学にいく息子2歳(2015)>

"森のようちえん" とは、デンマークやドイツが発祥と言われている一般に3歳から6歳までの幼児に殆どの時間、園舎の外の屋外でまたは森の中の自然の中での幼児教育を行う運動や団体を指す言葉。雨が降っても雪が降っても自然の中で季節を感じながら五感を研ぎ澄ましながら外で遊ぶことを通して、身体的な成長や子どもの創造性を育めるとして日本でも注目されるようになってきている保育方法です。

ちなみに2015年から2017年まで私はデンマークに住んでいましたが、もともと特に保育などに興味・関心が最初から高かったわけではなかったので、森のようちえんの発祥の地がデンマークであるということは、実は行ってから知った事実でした。ですが

「発祥がデンマークであるならば、それはちょっとぜひ本場の森のようちえんをぜひこの目で見て体験してみたい!」

そう思いたって、知人の視察ツアーに同行させてもらったのが私と森のようちえんとの出会いです。(上写真)その後も知人の紹介でシュタイナー式の自然保育をしている幼稚園に視察にいったり、公立の幼稚園の先生にインタビューしてみるなど、デンマークにおける自然保育の概念には当時からとても興味・関心を持っていました。

息子は結局いろいろと迷った末に、家の近くにあったデンマークの公立幼稚園へ通わせましたが、それでも必ず幼稚園につなぎ型の上下の雨具と長靴を幼稚園に常備。雨の日に迎えにいくと、どろだらけで園庭で遊んでいるし、庭にある木になったりんごやすぐ隣に生えているブルーベリーを摘んで食べたり、晴れた日には園庭で焚き火をしながらスープをあたため、木の枝にまきつけたパン生地を焼いて食べたりと、日本の幼稚園と比較してさらに自然と調和した保育をしていたのは本当に印象的でした。

子供たちはみんなのびのびとしていて、またそこにいる先生たちもとても穏やかで、保護者の人たちもとても温かい。何かのルールをただただ強制されるのではなく、自然と周囲(人や自然)との調和をもって行動できるようになる。ひとりひとりの個性を押さえつけてみんなで同じものを一斉にやるのではなく、それぞれがのびのびと自分の時間をすごし、自分らしさを磨き、同時にさまざまな個性を持つこどもたちがまあるく輪をなす。

"子どもが子どもらしく、その子がその子らしくあること"
"互いを尊重し合い、対話を通して社会性を身につけていくこと"

デンマークのあちこちで感じるこの二つの共存と、それによる居心地の良さ。その原点が保育現場にある気がして当時から大変興味を持ちいろいろと先生に話を聞いたり、見学へ言ってみたりしてはいたものの、実際にでは自分がその保育ができるかと言ったら、お恥ずかしながら別問題でして

「実際のところ、彼らはどういう理論のもとで子どもたちにとって安心で安全な居場所をデザインしているんだろうか?」

あまりにも心地よく美しい、あたたかな人たちが創り出す空間を目の当たりにした2年半の間、そしてその後デンマークを離れた今もずっとこの疑問が私の中に残り続けたのですが、ついにそのヒントを得ることができる機会がやってきました。



シュタイナー幼児教育施設・森のようちえん「Børneøen Bonsai(こども島ボンサイ)」

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その機会というのがこちら。なんとデンマークのシュタイナー幼児教育施設・森のようちえん「Børneøen Bonsai(こども島ボンサイ)」のリッケ園長先生から直接その理論と実践方法を学べるワークショップが、北欧の教育・学びへのインスピレーションを届けるLilla Turen(リラ・トゥーレン)主催で開催され、デンマーク時代からのご縁でこの運営のお手伝いをさせていただけることになったのです!本当にご縁に感謝!!

大体、北欧の教育や保育を学ぶとき、あまりにその環境が理想的すぎて

「そりゃそちらではそうできるかもしれないけど、こちらでは環境も土壌も違うんだから実践は無理…」

そうなってしまうことが残念ながら多く、なかなか実践者が増えていかない北欧流の教育・保育。でもそんな中今回のワークショップは、「理念を知ること」から一歩進んで「土壌の違う日本での実践につながること」がテーマ。まさに私が知りたかったあの場・あの空間を生み出すヒントがあるに違いないし、どんな小さなヒントでも言い訳せずに自分たちの暮らしや仕事に取り入れようと決心して参加しました。

たくさんの学びに首がもげそうになるほど頷きつつ聞いていたら、

「あれ?この森のようちえんからの保育へのヒントは、もしかしてそのまま現代のさまざまなコミュニティにも当てはまるんじゃないだろうか?」

そんなふうに感じたことを、ちょっとまとめていきます。



子どもたちが安心して「今」に集中し、自分らしさを育める環境をつくる:「呼吸」と「リズム」

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"子どもたちが心から安心して暮らせる環境をつくるためには、
「リズム」を意識し整えることがとても大切"
byリッケ園長

デンマークの保育現場では、自然に存在する「リズム」ある暮らしが大切にされているのは知っていましたが、あらためて彼らがどれだけそこに注力しているかを知ることができました。

1日のリズム。
1週間のリズム。
1ヶ月のリズム。
季節のリズム。

たとえば朝登園して、上着と靴を脱ぎ、手を洗い、朝の会を行い、決まった歌を歌う。みんなで時間を過ごしたそのあとは、自由なアクティビティをして、昼食を一緒に準備し、みんなで昼食をとる。お片付けのあとは外へあそびにゆき、その日の遊日を行い、おやつを食べ、園へもどり、帰りの会をして、決まった歌を歌い、おうちへの帰路につく。

この1日のリズムを変えない。同じリズムを繰り返すことで、子どもたちはそのリズムを徐々に覚え、自然と次の行動を起こすことができるようになる。1日1日のこのリズムの繰り返しから、子どもたちは自信をつけていくことができる。

このような心地よく定まったリズムが曜日ごとにも存在する。月曜日はおえかき。火曜日は外遊び。水曜日は畑仕事…などの1週間のリズム。そして月ごとに変化する歌やお祭り。季節に合わせた遊び。

小さなリズムから大きなリズムまで子どもたちが安心して彼らの創造性を育むためには暮らしの「リズム」がとても大切。

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"もうひとつ大切なことは、アクティビティの「呼吸」を意識して
大人がしっかりとリズムを作り上げてあげること"
byリッケ園長

そしてもうひとつ印象に残っていること、それは1日のリズムの中で大切なことのひとつに「呼吸」のリズムがあるということ。私たち人間が自然と息を吸って、吐く、を繰り返すように、日々のアクティビティでも「吸う呼吸のアクティビティ」「吐く呼吸のアクティビティ」を交互にリズム良く取り入れる必要があるというのです。

簡単に "インプット" と "アウトプット" とも少し違う絶妙なこの表現に、なんだかときめいてしまった私。ちなみにこの二つのアクティビティは、例えば以下のようなものです。

・「吸う呼吸のアクティビティ」とは、よりしっかりと構成されたアクティビティ。朝の会や、昼食の時間だったり、みんなで円をなして歌う時間だったりする。

・「吐く呼吸のアクティビティ」とは、より自由に彼らの中にあるものを表現したり創造的なあそびに没頭できる時間。

この「吸う」と「吐く」を交互にリズム良く行うことで子どもたちはどこかでつかえることなく、自然と次のアクティビティを楽しむことができる。1日のうちのどこかでうまくアクティビティが切り替えられないその時には、この「呼吸」のリズムがうまく機能していないのかもしれない。

たとえばみんなで集まってずーーーーっと手遊びや歌を繰り返し続けることは、息を吸い続けていることと同じようなもの。どこかで子どもたちに息を吐くという時間が必要になる。この時交互に「吸う」と「吐く」がくるだけでなく、そのリズムがより自然なリズムであることが重要だということは「呼吸」だと思えばごく当たり前なことかもしれません。



心理的安全性の高い場では、自然と人は目の前の課題に集中し、成長することができる

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"子どもたちはこの暮らしのリズムの中で安心し、
未来への不安を感じることなく「いま」に集中することができる。
「いま」に集中できるということは、「遊び」に集中できるということ。
子どもたちは安心できる環境の中で、すくすくと成長していく"
byリッケ園長

ここちよいリズムのある暮らしの中で安心することができるのは、子供に限ったことではなく、大人も実は同じ。たとえばメンタリストのDaigoさんの著書「自分を操る超集中力」で、【日常のタスクをルーティーン化することで、脳の前頭葉で思考や感情をコントロールするときに必要なウィルパワーの浪費を防ぎ、本当に必要なところにそのウィルパワーを発揮することができる】ということが書かれていました。

人は何か選択したり判断するときにエネルギーを消費してしまう。だから選択や判断を減らすために、日常をできる限りルーティーン化する(暮らしのリズムをつくる)。朝起きてまず洗面所で顔をあらい、服を着替えて朝ごはんを作り食べる。朝ごはんはコーヒーとパンとサラダとヨーグルト。着る服もルーティーンで決めておく。すると何も考えなくてもするするするっと同じリズムで日常が過ぎていき、本当に必要な場面でいかんなくその集中力を発揮することができる。

大人であっても子どもであっても、本能的に心地よいリズムある暮らしの中ではエネルギーを浪費することなく、それだけで安心感を持つことができる。「これでよい」と思うことができる。

逆に例えば毎日新しいチャレンジをして朝食のメニューを毎日変えてみたら?起きる時間もバラバラ、日によっては遅刻スレスレ。そんな日常の中ではきっと何が起こるかわからない不安から、きっと心から安心して私たちは「いま」に集中することができない。

今思い返してもデンマークの幼稚園で共に過ごす大人たちも、子供たちと同じくとても穏やかで、その空間にいることを



現代のコミュニティに「呼吸」と「リズム」という観点をインストールしてみる

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では「呼吸」「リズム」を意識して現代のコミュニティデザインを考えてみるとどうなるか?どんな視点でコミュニティデザインを考えられるか思いつくことを自分なりにまとめてみました。

・コミュニティの"リズム"
コミュニティの目的に沿って、決まったリズムの予定が組まれているかどうか?例えばミーティング中の進め方の流れ、定例ミーティングの開催予定や、一年を通してのイベント予定など。
「このコミュニティに関わりたい!」
と一歩を踏み出してくれた人が、いつでも不安になることなくその場を楽しんでもらえるための、そのコミュニティにおける居心地の良い"リズム"を決めていくことで、参加へのハードルを下げ、心理的安全なコミュニティになってい区ことができる。

・コミュニティの"呼吸"
また、アクティビティにしっかりと「吸う呼吸のアクティビティ」と「吐く呼吸のアクティビティ」がリズム良く交互に行われているかどうか?
例えば学びのセミナーなどと、コミュニティメンバーでの対話会が交互に行われていくなど。セミナーでも受講パートと対話パート(Zoomでのブレイクアウトセッションなど)を適切なリズムではさむことで心地よく自然な学びやコミュニケーションが生まれる。

この「リズム」や「呼吸」の見極めは、森のようちえんでそうであるように、コミュニティに所属するメンバーをよく観察することで自ずとその心地よい配分や組み立方がわかってくるのだろうなと思います。ここは修行が必要ですが、でもこれからぜひ意識してみたいところ。


普遍性による安心と、変化による成長とのバランスを

この、大きな円を描くような自然のリズムや呼吸をもってつくられる心理的安全なコミュニティにおいて、人はそこで過ごす「いま」に集中しながら、子供も、そしてきっと大人であっても成長していけるのだろうと今回の講座を通じて感じました。

普遍性により与えられる人々への安心感。そして同時にそこにほんの少し現れる変化によって成長が促され、一年を通しての円は同じ場所へ戻るのではなく、螺旋状に前へと前進することができる。

今後、コミュニティ運営を考える時、この普遍性と変化との最も心地よい「リズム」やその「呼吸」のバランスも考えて行ってみたいと思った、とても学び多き時間でした。

リッケ園長先生、そして今回の講座を企画くださったLilla Turenの皆様に感謝を。ご興味ある方はぜひこちらのリンクもご覧ください!




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