嵐の中をトランプに熱中した日
仕事に忙しい友が、「夏休みも秋の連休も、遠くに旅行する時間が取れなくて、娘に申し訳なく思っている」と嘆くのを聞き、自分の幼い日を思い出した。
親しい家族と共に一泊旅行をするのが毎夏恒例だったが、ある年、台風で急遽足止めになった。親たちが東京駅近くの旅行会社で宿泊先の変更を相談している中、窓の外の嵐も気にせず、小学生5人で熱中したトランプの「大富豪」。結局、近場で宿泊して大して観光もせずに帰ったこの年の旅行が、一番印象深くて楽しかった。
大人になってからの一人旅は、解放感を味わえる格別な時間だが、慣れない土地でパスポートや財布を無くさないよう、少しの緊張感も共存している。一方で、親たちの庇護の下、嵐の中でも何も心配することなく心から楽しめた幼い日の旅行も、かけがえのない思い出だ。
「遠くに出かけなくても大丈夫。きっと楽しい思い出ができるよ。」私の遠い記憶は、友へのエールになるだろうか。