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愛と哀

人間みんな誰しも、心の奥底まで理解して繋がり合うなんて不可能だ。一番近くにいる人とでさえ、それは容易ではないと実感している。

いつもいつも付き纏う劣等感に身を任せて、少し納得いかないところは見ないふりをして、全部私が悪いと謝っていた。それで済むから。私なんか、私なんか、が消えない。どうせ悪いのは私だ。
それに自分が感情的な女であることはありと分かっている。一番大好きな人に鬱陶しいなんて絶対思われたくない。

これまで何度もそうやってきたのに、今日はできなかった。もうそんな気力がない。上手く取り繕うことさえできなかった。

ぶっきらぼうな返事がきみの感情を示していて、胸がぎゅっと苦しくなった。気にしてないふりをする。

お風呂に入るといつも思考が加速し、ぐるぐるぐるぐる渦を巻く。たくさん立てたシャンプーの泡に溶けて、流れてしまえばいいのに。そしたらぜーんぶおしまいだ。まあそんな訳にはいかなくて、気づいたら天井を見つめてしゃくりを上げて泣いていた。久しぶりに聴くALの音楽があまりにも優しかったせいだろうか。生まれてからずっとこうだなって自分を嘲る。なんだか笑えた。

ここに居る理由がきみだけだから、私はこんなに苦しいのだと思う。
母にはなんでも話せて、分かるよ すぐにでも帰ってきていいんだよ となにもかもを受け容れてくれる。地元の街の本屋さんや、こぢんまりして程よい風景があまりにも懐かしくって、今でも大好きな場所なんだと気付いてしまった。急がなくていいあの街に帰りたい。とりあえず何も考えずに暮らしてみたい。

自分の見えない人生を生きようとすることに疲れてしまった。誰の為に頑張っているんだよ。きみは私のこと必要なんだろうか。と、いらぬことを考え出してしまう。
けれど、いつもの楽しい時間を思い出すと、私ときみはすっごく仲良しで一緒にいられることが嬉しい。きみのことが心底好きなのだ。どうしても私からは手放せない。

きっと明日には私が謝って、どこに行っても普通のふりをするんだと思う。いつまでできるかは分からないけど。それが私の日常なんだ。